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第71話 「…半殺しならどうだ?」

「どうでしたか、エメラルダ様」


「うん…どうやら皇帝陛下が亡くなられたのは確かのようだ。我々はこのまま此処で待機していて欲しいそうだ。その間、魔導書は好きに読んで構わないからと言われたよ」


 ゲオルギウス・サム・ファーブルネス皇帝が死んだ。

突然の事で皆、驚きが隠せないでいる。


「死因は何です?他殺ですか」


「いや、病死らしい。遺体は見せて貰えなかったがな」


「そんな…昨日は健康な人に見えましたのに」


 確かに、昨日は明日にも死にそうな人には見えなかった。

そういう人がある日突然病死する事はあるにはあるけれど…イヤなタイミングだな。


「…それで、何で私達は此処で待機なんだ?」


「ほんと。あたし達はもう王国に帰っても良い筈だよねぇ」


「そうも行かないわよ。帰るにしても葬儀の日程やら何やら、確認してからじゃないと」


「葬儀の日程?え、何?私達が出るのか?」


「仕方ないでしょう?丁度帝国に居るんだもの。エメラルダ様や剣帝に魔帝。七天騎士団の団長が二人。王家の代理と、王国の代表としては十分な面子だもの」


 …そうなるのかぁ、やっぱり。


「そうなる可能性は高いだろうな。後で陛下に確認を取りに行くが、流石に先日まで戦争をしてた敵対国に王家が葬儀に参列するわけには行かないし、かといって代理も出さないわけにもな。やれやれ…正直面倒なのだがな」


「仕方ないですわね」


「そういう事よ。諦めなさいアイシス」


「うへえ…」


 葬儀に参列か…喪服…は流石に無いから街で買うしかないか?

いや、一旦王国に帰る時間くらいは取れるか。


 一旦帰れるなら、ボク達が無理に参列する必要も無いんじゃ、とも思うけど。


「是非参列して頂きたいね、剣帝殿。皇族の一人として、ね」


「魔帝殿にも同じく参列して欲しいわね。私の婚約者として、ね」


「…来たか」


 入って来るなり、挨拶も無しにおかしな事を言って来たのは、取り巻きと一緒にやって来た第一皇子と第一皇女だ。


 第一皇子、イワン・イグナチウス・ファーブルネス。

銀髪をセンター分けにした中肉中背の男性。

武術に精通してそうな印象は受けない。

確か二十四歳だったか。


 第一皇女、ヴァネッサ・ヴィルヘルミナ・ファーブルネス・

長い銀髪を編み、派手なアクセサリーで飾っている。

アヴェリー殿下よりも少し小柄。

アヴェリー殿下より二つ年上の二十二歳。


 どうやらファーブルネスの皇族は皆、銀髪らしい。

ゲオルギウス皇帝もそうだった。


「やぁ剣帝殿。昨日は禄に話も出来なかったが、これから少しいいかな?」


「魔帝殿も、いいかしら?私の部屋で御話ししましょう?」


「「御断りします」」


 全く、何言ってるんだ、この二人…今は他にやる事がいくらでもあるだろうに。

というか、つい最近似たような事があったな。


「ふむ。よく聞こえなかったな。もう一度言ってくれないかな」


「まさか私達が直々に誘いを掛けたのに、断るなんて言わないわよね。さぁ、行きましょうか」


「「御断りします」」


 あー…一回目はまだ余裕があったけど、二回目はもう余裕が無いな。

はっきりと顔に出てる。「ふざけるな」って顔だ。


「私達を無視しないで欲しいものだな、両殿下」


「アイシスもジュン君も。帝国の臣ではありませんよ?」


「従って、両殿下の御言葉に従う必要はありませんわ。断ったとしても何も問題は無い筈ですわ」


「ふん。小物は黙っていてくれないかな」


「私は女には用は無いの。ましてや年増にはね」


「なっ…」


「だ、だれが年増ですの!?」


 ああ~…ラティスさんとクリムゾン団長が一気に沸点に。

エメラルダ様は冷静だな。


「…チェザーレ、この場で皇族を殺したら問題になるか?」


「大問題です。絶対に止めてください」


「…半殺しならどうだ?」


「同じです。絶対にダメです」


 そうでも無かった。

ワザと二人に聞こえるように言ってるあたり、本気でも冗談でも怖い。


「…ふん。何故、断るというのかな。ただ話をしようと言うだけだよ」


「私の部下には貴方と年齢の近い子が多いの。その子達とも仲良くなれると思うのだけど」


「話なら此処で聞きますよ。聞かなくても内容はわかりますけど」


「アイシスさんをイワン殿下の妻に、ボクをヴァネッサ殿下の婚約者にという話でしょう?」


「――ほう?話の内容はその通りだ。ただ一ヵ所、重大な間違いがあるね。私は――」


「イワン殿下!ヴァネッサ殿下!此方においででしたか!」


「騒がしいわよ。静かになさいな」


「それとあの男が死んだ今、私はファーブルネス帝国皇帝だよ。陛下と呼ぶんだ」


 …間違いって、それか。

父親が亡くなったばかりだと言うのに、もう新皇帝気分か。


「…まだ即位式は済んでおりません。それ以前に、やる事は山積みなのです。至急お戻りください。このままでは国葬の日取りも決められません」


「お前達に全て任せるよ」


「…は?」


「新皇帝の初仕事が国葬などと、華が無いよ。それにあの男は敗者で、帝国をこんなに弱らせた責任も取らずに死んだ。そんな男の葬儀に時間を取られるなんて、我慢ならないね。…だが、一応は父親だった男だ。葬儀に顔は出してやる。だけど準備は全てお前達に任せるよ」


「…ヴァネッサ殿下も同じお考えで?」


「当たり前でしょ?私、そんな事よりもやりたい事があるの」


 ううん…ダメだな、この二人。

アヴェリー殿下も大概だけど、この二人に比べたら凄く良い人。

第二皇子と第二皇女はどうなんだろう?

いや、第二皇女は既に他国に嫁いでいたんだったか。


「しかし、それでは…」


「やれやれ、仕方ないね。ならばハリーにやらせれば良い。ハリーはあの男のお気に入りだったし、ハリーも得意のおべっかで取り入っていたんだ。葬儀の準備も、喜んでやるだろうさ」


「…承知しました。ですが、それで本当によろしいので?」


「くどいわよ、ストラウド」


「私に二度言わせないで欲しいね」


「…わかりました。ですがイワン殿下、王国からの御客人を困らせる真似は控えて頂きたいのです。彼らが帝国の荒地化問題を解決してくれたのは殿下も御存知のはず。その彼らから不興を買うような真似は……」


「陛下だ。………不興?何を言うんだい?新皇帝の妻の一人に迎えてやろうと言うんだよ?喜びこそすれ、不満に思う必要が何処にある?」


「そうよ。この私の婚約者…夫になれるのよ?帝国で一番美しい、この私の。泣いて喜ぶべきじゃないかしら」


 何処から来るんだろう、その自信。

普通に考えて帝国は落ち目だ。このまま滅びるなんて事は無いにしても、これから長く、苦しいファーブルネス帝国復興の日々が始まるというのに。

そこへ敵対国だった王国側の人間がどうして加わるというのか。


 それに…少なくとも貴女は、ボクの周りに居る女性より魅力的じゃありませんよ、ヴァネッサ殿下。


「…兎に角、一度お戻りください。ジーナ様もお探しでしたし」


「…母上もか。やれやれ、仕方ない。一度戻るとしよう」


「…つまんないわね」


「それでは剣帝殿。式の日取りなどはまた後ほど相談しよう」


「魔帝殿も。楽しみに待っていてね」


「…御断りしますと、申したはずですが?」


「何だったらもう一度言いますけど?」


「私、諦めの悪い女なの」


「私も諦めが悪くてね。それに、欲しいと思った物は必ず手に入れる主義なんだよ」


「私も同じ主義ね。それじゃ」


「失礼するよ」


 …はぁ。

面倒くさい人達。

自分に自信があって権力もあるって厄介だな。

しかも、その権力が他国の人間にまで及ぶと思っているのだから。


「…皆さん、大変失礼しました」


「おじさんが悪いわけじゃないよ」


「ちょっと、アイシス…おじさん呼びは…」


「構いません。それより、今日の所はもう王国へお戻りください。ゲオルギウス陛下の葬儀は五日後です。五日後の朝にお越しください」


「ん?日取りは決まってないんじゃなかったのか?」


「アレは両殿下を追い払う為の方便です。国葬に関しては大体の事はジーナ様がお決めになりました」


「中々やるな、ストラウド殿」


 ジーナ…皇妃ジーナ・ジャネット・ファーブルネス。

アヴェリー殿下に暗示を掛けて鎧越しの二重人格にした張本人。


 …この人も、まともな人じゃ無さそう。


「兎に角、帝国としてはこれ以上王国と揉める気は無いのです。もう一度戦争となれば敗北は必至。降伏も認められないでしょうし。そうなれば帝国は滅亡です。ですので、お早くお戻りください」


「それは御互いに避けたい所だな、ストラウド殿よ。では、失礼するよ」


 取り合えず、この場は何とかなったけど…五日後にも接触して来るんだろうな。


 …あ。結局、禁書は閲覧してないや。ま、いいか。

読んで頂きありがとうございます。

短編作品「ドリームドリーム!」を投稿しました。

よければそちらも読んでください。

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