第65話 「読むぞ」
一階を調べ終えた探査隊は、いよいよ本命の地下へ。
地下へ続く階段は石造りで、地下全体が石造りのようだ。
「空気は…あるな。当然、淀んでいるが」
「灯りを点けますわよ」
クリムゾン団長が魔法で灯りを点ける。
松明を使わないのは、ガスが溜まってるのを警戒してだろう。
「足元に気を付けろ。古い建物だから、いきなり崩れるかもしれんからな」
…それって、気を付けようがあるんだろうか?
階段を降りた先には通路が一つ。
左右にそれぞれ部屋があるようだ。
「どうしますか、エメラルダ様」
「無論、調べる。一部屋ずつな。だが全員で一部屋ずつ調べるのは非効率だろう」
そこで四つの班に別れる事に。
エメラルダ様と宮廷魔道士の一班。
クリムゾン団長の紅天騎士団の二班。
ボクとノルン、白天騎士団の三班。
ストラウド殿の帝国一行の四班。
「…大丈夫ですの?三班は。遺跡の探査は初めての人ばかりでしょう?」
「大丈夫だろう。地下への入口を見つけたのはジュンだし、アイシスの勘の良さは本物だ。私は期待しているぞ?」
「むしろネーナが心配ね。怖い物見つけても泣いたりお漏らししないようにね」
「な!何を言うんですの!貴女こそ、暗闇に紛れてジュン様におかしな真似しませんように!」
「そこまでだ。ほら、行動開始!一応、罠が無いか警戒するんだぞ!」
エメラルダ様の号令で各班、行動を開始。
ボク達は先ず、右側の一番目の部屋からだ。
「じゃ、一応…ノルン」
「はい。……罠の類はありません」
「部屋の中に気配も無し」
「よっし。開けるよぉ」
盾を構えつつ、ダイナさんが扉を開ける。
部屋の中にあったのは…木箱?
木箱が山積みになった部屋だ。
それ以外には…特に何も無さそうだ。
「倉庫…なのかな?」
「かしらね…取り敢えず、箱の中を見て見ましょ」
「慎重にね、ティータ」
木箱は全て同じ大きさ。
正方形の四角い箱で、上面は蓋がしてある。
この木箱もボロボロなので、少しばかり隙間が見える。
だが中に何があるのかまではわからない。
「これは…空き瓶?」
「何らかの薬品用の瓶のようですね。全て空ですが」
他の木箱も開けた所、全て空き瓶が入っているだけの箱だった。使用済みの瓶なのか、これから何かを入れる為にの瓶なのかはわからなかった。
「これだけじゃ、何の手掛かりにもならないわね」
「何の研究をしてのかはわかりませんね。現状では違法性もありません」
古代文明の法律なんて知らないけれど。
「それにしても。此処って、本当に一人で使ってたのかな」
「アイシスさん、何か疑問でも?」
「いやさ、此処地下五階もあるんでしょ?一人で使うには大き過ぎるなぁって」
「確かにね。移動するだけで結構な時間がかかりそう」
「こうやって空き瓶をちゃんと木箱に詰めて一箇所に纏めてる所を見ると、几帳面な性格の人が使ってたんだろうし。という事は、研究の資料を集めた部屋とか、研究器具を集めた部屋とか。それぞれ役割のある部屋なんだろうし」
そうなると、本当に一人で研究していたなら、それぞれの部屋に移動して、必要な物を取りに来たりするのも、その研究者一人で全てやる必要がある。
それは普通に考えて手間だ。だから他にも人が居たのではないか、というのがアイシスさんの考えらしい。
「それでも一人でやる必要があったのかもしれませんね」
「その必要とは何でしょう、ジュン様?」
「それは勿論、秘密を守る為に、だね」
秘密を守るには、秘密を知る者が少ないほど良い。
ならば最初から誰にも言わなければ良いのだ。
「だから一人で研究、ね。んー…当たってる気がする」
「アイシス、勘?」
「勘」
「アイシスの勘は当たるからねぇ」
そうなると、やはり気になるのは研究内容だ。
一体、どんな秘密の研究をしていたのやら。
「でも、この地下室は秘密にするのは難しくないかしら?こんなの、一人じゃ作れないでしょう?」
「魔法を使えば、そうでもないかと」
「あ、あら?そうなの?」
魔法を使えば、一人でも地下室を作る事は可能だ。
時間さえ掛ければ、地下五階分作る事も可能だろう。
とはいえ、やはり恐ろしく手間だが。
もし本当に全て一人でやったなら、余程の執念と秘密を守るという意思の堅さが感じられる。
「…とにかく、この部屋をもう少し詳しく調べましょう。何も無さそうですけどね」
結局、この部屋で新しい発見は無し。
他の班も、地下一階の部屋は全て調べたが特に新しい発見は無し。
地下二階に降りる階段は、上に上がる階段のすぐ横にあった。
「では次は地下二階に進む。皆、疲れてないか?」
「大丈夫ですわ」
「問題ありません」
「この遺跡に、帝国を救う鍵があるかもしれんのです。休んでる時間も惜しい。早く行きましょう」
「よし。では一気に行くとしよう」
地下二階も同じ手順で調べる。
だが地下一階と同じく、地下二階は倉庫として使われていた部屋ばかりのようだ。
そして、それは地下三階も同様で。
様子が変わったのは地下四階からだ。
「これは…檻だよね」
「だね。動物の檻なのか、魔獣の檻なのかはわからないけど」
魔獣用の檻なら、普通に考えて動物の檻より頑丈に造られている筈だが、何せ古くなっていてボロボロだ。
今一つ判断がつかない。
更に地下四階では。
「何…これ」
「魔獣の…死骸だよね」
地下四階の部屋では大きなガラスの容器の中に、魔獣の死骸が入っている。それが各部屋に一つ。
だけど二つ、様子が違う部屋があった。
一つは、ガラスの容器があるのは他と同じだが中には死骸は無く、容器は割れ、壁には地中を掘り進んだと思われる穴。
「これはつまり…何かの切欠で中に居た魔獣が自由になり、壁に穴を開けて外に出た?」
「そういう事…でしょうね。それがいつの事なのかわからないけど…仮に最近だとしたら、凄い生命力ね」
もし、そうだとしたなら…荒地化の原因はその魔獣?
「その可能性はあるかもしれんな。だが、先ずはこの遺跡の調査だ。此処に居た魔獣の詳細がわかればいいのだが」
そして、様子が違うもう一つの部屋。
そこには人の死体…完全な白骨死体がベッドの上に横たわっていた。
その横の机には日記らしき物が。
「察するに…この研究所の主ね」
「ですわね。エメラルダ様、日記は読めそうですの?」
「何とかな。読むぞ」
エメラルダ様によって語られた日記の内容。
それは驚愕に値する物だった。




