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第53話 「御断りします」

「アーハハハ!アイシス、飲んでるかー!」


「はいはい、飲んでる飲んでる」


「テンション低ーい!もっとあげてこー!」


「レティが高すぎるんだよ」


 私は今、戦勝記念のパーティーに参加してる。

パパとママは子爵になったので上級貴族用のパーティー会場に居るけど、私は騎士用のパーティー会場の一つに居る。騎士は人数が多いので王都内に五つのパーティー会場がある。

それでも足りないくらいなので、それぞれの騎士団の本部を使用してる騎士団もあるくらいだ。


「しっかし!一体どーゆーことなんだー!なぁアイシス!」


「何がさ」


「こーんないい女が飲んでるのに!なーんで男共は放っておく!」


「それはね、ダイナ君。この会場にいる他の騎士団が蒼天騎士団だからだよ」


 このセッティングをした奴はどこのどいつなんだろう。

ある意味解ってる組み合わせだけど、解ってない組み合わせとも言える。


 白天騎士団に出会いの場を与えてあげてよ。

私にはもうジュンが居るからいいけど。


「ま、確実に蒼天騎士団の犠牲者が出ないように白天騎士団が組まされたんでしょ」


「くっ…おのれ蒼天騎士団…」


 戦場でもそうだったみたいだし。

もう一つ、一緒に居た橙天騎士団も変人の集りだし。


「ま、いいけどね!あたしらにはジュンちゃんが居るし!」


「そーだね!ジュン君の愛人でも妾でも側室でも何でもいいからなっちゃおう!ね、ティータ!」


「ウフフ…そーね、いいかもねー、ウフフ」


 それは私が認め……ない事もない。

ジュンがあの称号を持ってる限り、奥さんが私一人じゃ色々無理があるだろうしなぁ。

その点、ティータ達がお嫁さん仲間になるなら、上手くやれそう。

仕方ないからノルンも入れてやろう。


 正妻の座は譲らないがな!


「ねぇ~そう言えば団長は~?」


「副団長も居ないねぇ」


「あの二人は上級貴族用のパーティー会場に行ってるわよ~ウフフ」


「おー流石はティータたん。酔ってても情報通~」


「ウフフ、酔ってないわよ、まだ~」


 いいや、酔っている。

そろそろティータがキス魔に変身する…ん?


「失礼。アイシス・ニルヴァーナ殿ですな?」


「あ、はぁ…そうですが」


 誰だろう、このおじさん。

見た所、上級貴族、その中でもそこそこの大物…あ?

後ろの奴には見覚えが。


「私はカルロ・カークランド辺境伯だ。覚えておいてくれたまえ」


 カークランド?つい最近も聞いたような………ああ、思い出した。

ジュンに喧嘩売って来たバカの親か。


「それから、これは私の倅、次男のナッシュだ」


「ナッシュ・カークランドです。偉大なる剣帝にお会い出来、光栄です」


「…アイシス・ニルヴァーナです」


 よろしく、とは言わない。

こいつらとは仲良くする気は無いからだ。

ジュンと敵対関係にある限り、は。


「これでもナッシュは優秀でな。この歳で宮廷騎士にまでなっておる。勿論、剣帝殿には敵うまいがね」


「ヘーソレハスゴイデスネ」


「剣帝殿に褒めて頂けるとは、恐縮です」


 こいつ、本気で言ってるのかな。

かなり露骨に棒読みしたんだけど。


「うむ。剣帝殿にそう言って貰えると、親としても鼻が高い」


 …親子だな。都合の悪い部分には目を向けないか。


「それで本題だが、剣帝殿」


「はい」


「我が屋敷で、剣帝殿を慰労する宴を開きたいと思う。そこで是非、剣帝殿の武勇伝を聞かせて欲しいのだが――」


「御断りします」


「日時は決まり次第……何だと?」


「け、剣帝殿?」


「御断りします」


 どうせ、その席でそこのバカとの婚約話を持ちだすんでしょ?

私にそんなつもりは無いし、行くだけ無駄だ。


 それにこの人、私とは何か合わない。

ジュンのグラウバーン家と仲が悪いからってのは関係無く。

だってこの人、私の事道具として見てそうだし。


「…んんっ!聞き間違えだろうか?断ると言ったのかね?」


「はい。御断りします」


「け、剣帝殿!いや、ニルヴァーナ子爵殿!」


「爵位を持っているのはパパ…じゃなくて、父ですよ、ナッシュ殿」


「あ、失礼…アイシス殿。で、ですが辺境伯である父の誘いを断るなど…」


「辺境伯様に誘われたら断る事は許されないんですか?」


「そ、それはそうでしょう。如何に剣帝といえど、子爵令嬢が辺境伯の誘いを断るなど。断るにしても、もっと段階を踏むなり、言葉を選ぶなり…」


 めんどくさいなーこいつ。

段階を踏んだところで、どーせ断るっつーの。


 言葉は…選んでるよね?

何か足らなかったかなぁ。

ん~…


「…そうですか。それは失礼しました。ですが、やはり御断りします。変に誤解されたくないので」


「ご、誤解?」


 ここで誘いに乗ったら、私とこのバカはいい仲だとか思われちゃうかもしんないし。

そしたらこいつ、調子に乗りそうだしなー。


「…ああ、そうか。そういう事か」


「ち、父上?」


「いや、失礼した、剣帝殿。確かに今、この微妙な時期にお誘いするのは配慮が足りなかったな。今日の所は出直すとしよう。それでは、失礼。行くぞ、ナッシュ」


「し、失礼します」


 何かよくわからんが、納得したらしい。

微妙な時期?何の事だろう。


「というわけで。ティータ君、解説を」


「ウフフ…今、微妙な時期と言えば思いつくのは一つだけね~。次期国王の選定の件よ~ウフフ」


 …ああ、そっか。

七天騎士団は王家直属。

故に、只の団員には次期国王の選定について発言権は無い。

例え爵位持ちであろうと剣帝であろうと。

例外は伯爵扱いである団長のみ。


「それでも剣帝は欲しいだろうしね~色々、箔が付くし」


「子爵家の一人娘だから、婿入りさせれば自分の陣営に新たな子爵家が仲間入りだしね」


 そういう事だろうな。つまり、あの父子は私というより剣帝が欲しいのだ。


「ま、この私のびぼーに目が眩んだだけの可能性もあるけど」


「美貌ねぇ…ま、外面しか知らない男からしたら、アイシスは美人にしか見えないだろうけど」


「内面を知ってるあたしらからしたら、アイシスは絶対おすすめしないけどね~アハハ」


「アハハ。あとで覚えてなよ~レティ」


 全く、自分達の事は棚上げにしてからに。

君らだって私とあんまし変わらないでしょ。


「それでもさっきのはびっくりした~辺境伯の誘いを、即断するなんてさ」


「そりゃ正しい判断だったとは思うけどね。普通はもう少し悩むフリとかするもんだよ」


「そんな遠回りは性に合わない」


 どーせ断るのは決まってるんだし。

カークランド辺境伯家と仲良くする気は無いしね。


「それでも普通はもう少し相手に気を使った言葉を選ぶべきなんだよ?」


「向こうから来てくれたんだしね。それとも何かカークランド辺境伯家に思う所でもあるの?」


「まーねー」


 私は別に何にもされてないけど、ジュンの敵ってだけで理由としては十二分に過ぎる。

それ以外の理由なんていらない。


 それにしても、さっきから何か周りが騒がしい…お?


「ほうほう。では声を掛ける価値がありそうだね、剣帝にも」


「是非、女同士仲良くしたいわね。兄様やジョゼとではなく」


「ど、どうも」


 ジュンと一緒に来た二人は…もしかしなくても?


「(ティータ、解説)」


「(ウフフ~私は解説者じゃないのよ~?というか聞く迄も無く知ってなさい~自分の国の王子と王女の事くらい~)」


 ああ、やっぱり。

見た事のある顔だと思った。


 第二王子と第一王女だ。

どうしてジュンと一緒なのかわからないけど。


 めんどくさい用事があるんだろうなぁ…

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