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第47話 「ソンナバカナ!」

「ううう~む…どうしてくれよう…」


「まだ怒ってるの?}


 王城でジュンと再会し、元に戻った日の翌日。

私はまだジュンがやってくれた事に怒り…は治まってるけど、不満はまだ感じていた。


 まぁ…どれもこれも私がしでかした事に比べたら可愛いモノに見えなくもないけども。

今は私の家でティータとジュンの日記から得た情報の補填をしてる所だ。


「どう考えても貴女がやった事の方が重罪でしょう?意図せずとはいえ、ジュンさんを戦場に行かせたのは貴女の行動が切っ掛けなのは間違いないんだし」


 う…それもあった。

ま、まぁ…トータルで私の方が悪いのは認める。

ティータにもまだ話してないけど、ジュンがステータスを見たら直ぐに発覚する事態だ。


 それにジュンが仕出かしてくれた事の遠因は私にある。

だから私がジュンに怒るのは筋違い。それもわかってる。


 だが…それはそれとして、だ。

やはり不満を覚えずにはいられないこの状況。


「姐さーん!姿を見せてくださいよー!」


「俺達、こうして王国の兵士になりやした!これから真っ当に生きて行きやす!」


「だけど姐さんへの恩義は忘れちゃいねぇ!何でも言ってくだせぇ!」


 休暇を貰った私は実家の方にいるのだけど。

実家の前には厳つくてむさいおっさん共が私のファンクラブを結成したむろしていた。


「何なのさ…あの汗くさい連中…」


「あの人達は帝国の城塞都市ストークのスラムの住人達よ」


「ストークの住人~?何でそんな連中が私を追っかけてくるわけ?」


「ちゃんと日記に書いてあったでしょう?」


「そうだっけ」


 ええと、ストーク、ストーク……ああ、あった。

ジュンがスラムの住民と打ち解けた時にスラム側のまとめ役だった連中か。


「なんでもスラムのボスも貴女のファンになったとかで。ストークを代表して貴女を支えて来るようにと、許しをもらって此処に来たそうよ」


「私のファンじゃなくてジュンのファンでしょ…」


「事情を知らない彼らには貴女のファンで間違いないわよ。ま、あの場に居たのが貴女だったらファンクラブなんて出来なかったでしょうけど」


「うるさいな!おっさん連中のファンクラブなんて欲しくないよ!」


 これが十代の少年達だったならどんなに良かったか!

というか、あのおっさん達、帝国から王国へ移民したって事?

そこまでして追って来る行動力があってなーぜスラムの住民になる?


「それにしてもアイシス…貴女、物覚え悪くないかしら?」


「悪かったな!どーせ私はバカですよ!」


「そうじゃなくて。貴女、ステータスはどうなってるの?入れ替わる前の貴女のLVは99+。元に戻ってもLVは維持されてるなら知力の数値もそれなりに高い筈でしょう?」


「あ。そう言えば確認してないな」


 ジュンにはステータスを見るなって言ったし、すっかり。


 どれどれ…



----------------------------------------


アイシス・ニルヴァーナ LV99+ 状態:普通


性別:女


職(身分):騎士(白天騎士団所属 アデルフォン王国騎士爵令嬢) 賞罰:無


年齢:十七歳


称号:剣帝 魔帝 殲滅者 戦場の女神 癒しの聖女 超越者


アビリティ:剣術LV10 体術LV5 全魔法LV10 アビリティリンク 


能力値:HP9999+ MP9999+ 


    物理攻撃力9999+(0) 


    魔法攻撃力9999+(0)


    物理防御力9999+(10)


    魔法防御力9999+(10)


    力9999+  魔力9999+


    体力9999+ 器用さ9999+


    知力99 精神力9999+


    速さ9999+ 魅力1352


----------------------------------------


「ん!?」


「どうしたの?何かおかしな事になってるの?」


 何だ…この知力の低さは?魅力がジュンより若干低いのは…良くないけど、良いとして。

知力が99?LV99+なのに?この低さは幾ら何でもおかしくない?


 一体何故…と、考えていたらティータがその答えを持っていた。


「もしかして…貴女は知力99でカンストって事じゃないかしら?」


「は?カンスト?」


「稀に居るのよ。どんなにLVを上げても一部のステータスが一定値以上増加しない人が。貴女の場合、知力が99以上にはならないって事じゃない?」


「ソンナバカナ!」


 私の知力はジュンの百分の一以下という事?

で、でも、実際に物覚えが悪くなってるし……


「知力99…初等学院の高学年程度の知力ね。以前は低学年と同程度だったから……一応は成長してるじゃない。よかったわね」


「ちっとも良くない!なんだその哀れみに満ちた眼は!」


 くっそう…どうにかして知力を上げる手段は…


「無くはないわね。試練のダンジョンをクリアすれば、知力が上がるアビリティか称号を貰えるかもしれないわ。運の要素が強いけど」


「それだ!」


 そうだその手があった。よし、今度はジュンを誘って行くとして。


 次の問題だ。


「どういう事?奴隷を引き取ったって…」


「…正確には引き取らせて欲しいと、申請したって話よ。多分、通ると思うわ」


 ティータによると。

あの戦争で最前線に投入された犯罪奴隷達、奴隷兵の生き残り。

その中の最年少の少女を、ジュンは引き取りたいと言い出したそうだ。


「でもそれって私が引き取るって形だよね!?」


「…仕方ないでしょう?私も彼女を見捨てるのは後味が悪いもの。最前線で奴隷兵達が死んでいくのを見てたジュンさんが、自分より年下の女の子が戦場に居たら、気に掛けるのは当然でしょう?」


 更にティータから聞いた話では。

生き残った奴隷兵は二割程度。一部は約束通りに奴隷から解放、一般兵に取り立てられた。

だけどジュンが引き取ると言った少女は生き残りはしたが奴隷のまま。

他の奴隷兵と同じように奴隷商に売られる事になる。


「戦場の次は奴隷商人に売られるなんて、十歳の少女には酷でしょう?アイシスのニルヴァーナ家は子爵になるんだし、奴隷一人くらい引き取っても問題は無いでしょう?もし、どうしても無理だと言うなら後でグラウバーン家で引き取るとも言っていたわ」


「ぐぬ…」


 そこまで言うのなら…まぁ。

でも犬や猫の子を引き取るって話じゃないんだから…事後承諾なのはどうかと思うぞ?


「それに関してはごめんなさい。私もジュンさんの意見に賛成した身だから、素直に謝るわ。だからお願い、あの子に関しては御願いするわ」


「…むぅ。わかったよ。パパとママに話してみる。でも、それならティータのとこで引き取ってもよかったんじゃ?」


「私じゃダメよ。奴隷が欲しいなんて言って簡単に通るほどの功績は無いし、私の家は奴隷を養う余裕は無いわよ。私の家は陞爵しないし」


 今回、白天騎士団全体で見れば功績は大。ヴィクトル殿下を護れなかったという失点はあるものの、それは陛下の言によりお咎め無。しかし、白天騎士団全員が陞爵出来るほどではなく。

七天騎士団全体を通して陞爵するのは極一部に留まった。


「全員を陞爵したり正式な騎士に叙爵したら王国は貴族だらけになってしまうもの。あまり一気に貴族家を増やす訳にはいかないのよ」


 その代わり。

戦争に参加した七天騎士団には全員、報奨金は出るそうだ。

お金で誤魔化そう、という風に見えなくもないけど、無いよりはマシだろう。


「それで?その奴隷の少女ってどんな子?名前は?」


「名前はサラ。十歳の女の子。運悪く盗賊に育てられただけの。普通の女の子よ」


 普通、ね。

普通の女の子って、案外探しても居ないもんだけどね。


 奴隷の女の子、か…認めて貰えるといいけど。

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