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第46話 「次期国王選定の、だよ」

「よく来てくれた。さ、掛けたまえ」


「はい、失礼します」


 陛下との謁見の後、宮廷筆頭魔導士のエメラルダ様に呼ばれて彼女の私室に来ている。ノルン達も一緒だ。


 エメラルダ・シエイラ・グリーンハート…アデルフォン王国から遠く離れたエルフの国グリーンフォレスト。その王族の血を引くと噂される彼女は二百年以上もの間王国で筆頭宮廷魔導士として君臨している。


 出自に関してはボクも噂程度しか知らない。

だけど彼女が純血のエルフなのは間違いない。

エルフらしい細い体躯。長いエメラルドグリーンの髪。長い耳。美しい容姿。

どれ一つとっても並じゃない。


 戦場で帝国の宮廷筆頭魔導士と相まみえたけど…ただ座っているだけの彼女の方が威圧感が凄い。圧倒的に濃密で膨大な魔力の塊。それがエメラルダ様。


 そのエメラルダ様の通称は『雷帝』。『雷魔法LV10』を持つ。

圧倒的な力を持つ雷魔法のスペシャリスト。


 しかもそれだけじゃない。

彼女は他にも『水帝』と『風帝』の称号を持つ。

更に他の属性魔法のアビリティも高いLVで保持している。


 世界中の魔導士の頂点に立つ存在。

それがアデルフォン王国筆頭宮廷魔導士エメラルダ・シエイラ・グリーンハート。

『雷帝』は彼女が最初に至った『帝』の一つに過ぎず『魔帝』の称号こそ持っていないものの、彼女こそが最高の魔導士。誰もがそう言うだろう。


 勿論、ボクも。


「早速ですが、私に何の御用でしょうか」


「フッ、そう堅くならなくても良い。少し話…幾つか質問と忠告がしたいだけだ」


「質問…忠告?」


「うむ。では先ずは質問からだ。君は何故、魔封じの腕輪を着けている?」


「あ、これは…」


 ボクも気になってた。

理由は…大体想像出来るけど、正確な内容はまだ聞いてない。

どう答えたものか…


「ジュン様に代わってお答えします。戦時中、ジュン様は何度か旦那様の下へ向かおうとされました。それを防ぐ為の、やむを得ない処置なので御座います」


「ほう。ガインが心配で?親想いな事だ。だがもう外して良いだろう?」


「ですね。後で外して貰います」


 考えてたらセバスチャンが答えてくれた。

内容は…まぁ予想通りだ。正し、父上に会いに行こうとしたのではないけど。


「では次に…君はどういう訓練をして『帝』に至った?」


「…どう、とは?」


「陛下も仰っていたが君は十二歳で『魔帝』になったんだったな。戦時中でガインは前線に居るから陞爵は後回しになったが…いくらなんでも早すぎる」


「称号の御蔭です。特別な事は何も」


「君の称号の事は知っている。だがそれでも早すぎる。称号の御蔭で『帝』に至った者は過去にも居た。だが、その者達は例外無く『帝』に至ったのは二十代半ば以後。十二で『帝』に至るなど…聞いた事もなかった。あまりに早すぎる」


 それはその通りらしく。

世界的に見てもボクが史上最年少で『帝』に至ったのは間違いない。

だけどしらを切るしかないのだけど。


「…本当に、特別な事は何も」


「…君も知っているだろうが、アビリティLV8以後は称号があろうがなかろうが簡単には上がらない。十年、二十年掛かるのが普通。9以上にはならない者の方が多い。そんな現実の前に特別な事はしていないと?」


「…はい」


 エメラルダ様は天才と呼ばれるのを嫌うらしい。

彼女はエルフの、人より長い生を魔法の修練に充て努力の末に『帝』に至った。


 そんな努力の人からすればボクが史上最年少で『帝』に至ったのは嫉妬の対象なのかもしれない。


 気に入らない。そう眼で言っている気がしている。


「…誤解のないように言っておくが、私は嫉妬して追求しているわけじゃない。何か私の知らない、効率の良い修練法があるなら知りたい、ただそれだけだ」


「そう言われましても…本当に特別な事は」


 まさか実戦で魔法をバンバン使ってたから、なんて言えるはずもないし。


「ジュン様、アレの事では?奥様から教えて頂いた…」


「あぁ…座禅の事?」


「ざぜん?何だ、それは」


「亡くなった母上から学んだ精神修練法で…」


 ヤマト王国出身だった母上から学んだ座禅。

これと魔法の基礎訓練を合わせてやるのが最も効率の良い訓練法だった。


 ただ座禅は苦手な人も多く、王国では広まってないやり方なので白天騎士団には教えてない。


「これは…確かに…辛いな。これで精神集中は中々に…アタタ」


「エメラルダ様…身体、硬いですね」


「こ、ここ数年はデスクワークが多くて…痛い痛い!」


 身体が…足首や股関節が堅くて座禅が出来ない人は他にも居た。

エメラルダ様だけが出来ないわけじゃないが…彼女は特に堅いみたいだ。


「だ、ダメだ…この訓練方法は私にはむいてないようだ…しかし、なるほど。このように辛い訓練をしたから魔帝に至ったのだな」


「…慣れればそれほどでもないんですけどね」


 納得してくれたみたいだし、いいか。

良しとしよう…うん。


「つ、次の質問だ。君は白天騎士団全員に魔法を教えたらしいな。だが白天騎士団は全員魔法を使えない…自分の魔力を認識する事が出来なかった筈だ。どうやって認識させた?この問題は私だけじゃなく過去の偉人達も解決出来なかった難問だ。もし、誰でも魔法を使えるように出来るのなら歴史に名前が残る大発見だし、王国の戦力は大幅に増強される。そうなれば君は王国内で国王に次ぐ権力を手にする事も夢ではない。ああ、私はそんな権力に興味はない。ただ知りたいだけだ。だから安心して教えてくれ。さぁ!」


 ……どうやらこの質問が最重要だったらしい。

段々早口になって一気にまくし立てられた。


「えっと…口で説明するより実際にやってみた方が早いですね」


「おお!今、この場で出来ると?素晴らしいな。是非やってくれ」


 魔封じの腕輪を外してもらい、エメラルダ様の背後へ。

背後に立たれたエメラルダ様は少し驚いているみたいだ。


「では…エメラルダ様。素肌…首に触れます。宜しいですか?」


「ん?構わないが…私にやるのか?」


「はい。魔導士にやっても問題は無いので。それじゃ、いきます」


「うむ……んっ、これは…魔力を流し込んで?……ああっ…あ、熱いモノが、ああっ!」


「「「……」」」


「うん…何を言いたいのか解るけど。君達はそんな眼しなくていいじゃないか」


 何度か見た光景だろうに。ボクがそれを意図してるわけじゃないのもわかってるでしょ?


「ハァハァ…な、なるほど…こんな方法があったとはな…新発見だ」


「理解して頂けたようですね」


「うむ…しかし、これは誰にでも出来る方法では無いな。他人の身体に魔力を流し込む…支援魔法を掛けるのと一見似ているかもしれないが、まるで別だな」


「はい。ボクが知る限り、同じ事が出来る人は居ません」


「私にも居ない。だが、これは研究する価値がありそうだ。フフ…久しぶりに心躍る研究題材だよ…先ずは研究チームを立ち上げるか。それから…」


 何やらブツブツと考え出した。エメラルダ様は聞いてた通りの魔法バカらしい。


 曰く、魔法の上達と研究に日々没頭している、と。


「はっ…すまない。悪いクセが出たようだ」


「いえ…それで、お話は終わりでしょうか?」


「質問は以上だが話はまだある。君がこれから巻き込まれる面倒事について。従者達もよく聞いておけ」


 ボクだけじゃなくセバスチャン達の眼を見てエメラルダ様は言った。

これから先、派閥争いに巻き込まれる事になる、と。


「派閥…何の派閥ですか?」


「次期国王選定の、だよ」


 ああ…そうか。

次期国王と言われていたヴィクトル殿下は戦死された。

ならば当然、新たな次期国王を決める必要がある。


「でも、それで何故ボクが?ボクはまだ爵位を持たない未成年の子供に過ぎませんが…」


「魔帝に至った者が何を言うか。魔帝というだけで十分に派閥に引き込む価値はある」


「…ですが、ボクは東側の貴族の代表グラウバーン家の者です。ならば普通に考えて父上と同じ派閥になると考えるのでは?」


「無論、そう考えるのが普通だ。だがそう考えない者も居る。例えば…」


「ジュン様はまだ子供。ならば言葉で御しやすい。そう考える輩はいるでしょう。あとはジュン様にはまだ公に公表してる婚約者が居ません。その点も都合がいいのでしょうね」


「その通りだ。よくわかってるじゃないか」


「恐縮です」


 セバスチャンの言う通り、か。

確かに、まだ子供のボクは複雑な政治的駆け引きなんかはまだ未熟。

簡単に操れるって思われそうだ。


「それにボクを取り込めば自動的に父上も一緒に…ですか?」


「その通り。ガインの親バカは有名だからな。ガイン本人に直接交渉するよりは簡単だと誰もが思うだろうな」


「でしょうね…」


 それは間違い無い。

ああ見えて父上はそういう駆け引きも上手い。

もう何年も領主として数多の貴族と駆け引きをやって来てるんだ。

政治的にも父上な歴戦の勇士と言っていい。


「でも、それならアイシスさんも…」


「剣帝も無論狙われるだろうな。だが剣帝は白天騎士団の所属だ。七天騎士団は王家直轄。故に一団員に王位継承に関して口出しする権利は無い。あるのは各騎士団長のみ。だが婚約者に自分の子を押し込み自分の派閥に剣帝が居る、という扱いにしようとするだろう。ま、それは王位継承問題があってもなくても同じだがな」


 婚約者をこぞって勧めてくるのは同じだけど、ボクの場合はより深刻という事か。


「あの、派閥争いという事は複数の派閥があるんですよね?詳しく教えていただけますか」


「うむ。一番大きな派閥は第二王子派だな。母親が第ニ王妃だし次男だから順当だな。次が第三王子派。母親が第三王妃だが公爵家の出で第二王子より血筋が良いから一番相応しいとする派閥だ。最後に第一王女派。女性だから相応しくないと言う声もあるが彼女の母親は正妃だ。ヴィクトル殿下の直系の妹であるし、三人の中で一番やる気に溢れてる。国民に人気もあるしな」


「…ちなみにエメラルダ様は何方を支持されてるのですか?」


「私は王位継承に関してはノータッチさ。昔、散々な眼にあったのでね。もう懲りたよ。今回の忠告は老婆心から来るモノと、質問に答えてくれた礼だと思ってくれ。陛下も気にされていたしな」


「…ありがとうございます」


 派閥争い、か…何かやだなぁ。

ヴィクトル殿下が亡くなったばかりなのに、もうそんな話か。

陛下も気の毒に…


「ま、気を付けろと言っても、だ。今年成人するとはいえ、大人から見れば君はまだ子供だ。いくら賢くても、海千山千の貴族達に良いようにされかねない。だから味方を増やし、アドバイスを求め、上手く立ち回れ。ま、ガインが居れば安心だろうが今は居ないしな」


 つまり…父上が帰って来る前に、何か仕掛けて来る、と。

そう考える輩が多いだろうという事か…


「これで話は終わり……あぁ、すまない。忘れる所だった。今度こそ最後の質問だ。殿下を殺害した魔法はどんな魔法だと思う?」


「…は?」


「殿下の殺害方法だよ。君も噂で少しくらい聞いているだろう?」


 …それどころか目の前で殺されたので。よく知ってますけども。

だけど逆に噂の内容は知らない。噂では魔法で殺されたってなってるのか?

でも殿下は弓矢で殺された。何故、魔法で殺された事に?


「…ボクも噂以上の事は何も。実際に眼にしていれば何かわかったかもしれませんが」


「…そうか。いや、長々とすまなかった。話は終わりだ。もう少し話していたいが…すまないがこの後予定があってね」


「…はい。それでは失礼します」


「うむ。また今度、ゆっくり話そう。ではな」


 何だろうな…最後の質問は。

どうしてあんな質問を?意味が測りかねるな。


 それに派閥争い、か。いやだなぁ…

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