第43話 「王都アデルリーゼ」
アイシス視点です
「ジュン…様。もうすぐ王都に着きます」
「ん、わかった」
戦争が終わって七日。
ガイン・グラウバーン様の活躍とジュンが魔帝になった事でグラウバーン辺境伯家を公爵への陞爵が決まった。故に王城にて叙爵の儀を執り行うので二週間後に来るようにと連絡を受けた。
つまりまだ一週間以上先の話なんだけど、白天騎士団も王都に帰って来るらしい。
ガイン様も叙爵の日までには王都に帰って来るらしいし、ガイン様に会うよりも前にジュンに会って元に戻ろう、と考えたわけだ。
「ようやくです…ようやく…」
「ノルンは何故そんなに真剣な顔をしてるのです?」
「ジュン様の功績が陛下に認められるのがそんなに嬉しいの?」
王都に向かう共として付いて来たのは世話役としてノルン、セバスチャン、メリーアン。
そして護衛にミゲル達五人だ。ミゲル達はアデルフォン王国の王都は初めてなので若干観光気分だ。
「おお、見えて来た見えて来た」
「アレが王都アデルリーゼ…流石にでかい街だな」
「そうね…流石大国アデルフォン王国の王都だけあるわ」
王都に入ると街は戦勝祝いのお祭りムードだ。
もう戦争が終わって一週間以上経っているのに、まだ騒いでいるのか。
「ジュン様。門番の兵士に聞いたのですが、もう間もなく白天騎士団が凱旋するそうです」
「白天騎士団が?」
白天騎士団が帝国から帰って来る時期を見計らって王都に来たわけだけど、ドンピシャだったみたいだ。
で、この集まってる人達は白天騎士団の出迎えか。
「どうされますか?ジュン様も白天騎士団を出迎えられますか?」
「いや…こう人が多いとね。白天騎士団が帰って来たら先ず王城に行くだろうから、そこで待つよ」
「畏まりました」
白天騎士団だけじゃなく、騎士団が王命で遠征に出て帰陣したら先ず陛下に報告に行くのが規則。報告に行くのは団長と部隊長になるだろうし…その間にジュンと二人切になる時間がある筈。
それに白天騎士団の本部は王城内にあるしね。
「で、此処が王城…」
「すげえ…何万人収容出来るんだ?」
「緊急時には王都の住民の半数を収容出来ます。流石に各家庭の部屋迄は用意出来ませんが」
「へぇ、詳しいね、ノルンちゃん」
「ノルンも王都で六年暮らしましたから。学院に通った者なら誰でも知ってます」
…そっか、ノルンも王都で暮らした時期があるんだ。
当然、ジュンも。…ジュンの知人に会う事があるかもしれないな。
ノルンと共通の知り合いなら、ノルンがフォローしてくれると思うけど…そうじゃない時はどうするか。
「ジュン様、入城の許可が下りました」
「うん」
王城…久しぶりだな。グラウバーン辺境伯領に遠征出て以来だから約三年振りになるのか。
何も変わってない…ん?
「お前…ジュンか?久しぶりだなぁ」
げげっ…早速ジュンの知り合いに会ってしまった。
誰だ、こいつ…鎧からして宮廷騎士
みたいだけど。知らない顔だな。
「何で王城に来た?…ああ、そうか。お前、『魔帝』になったんだったな。フン!いいよなぁ恵まれた称号を持ってる奴は。大した努力もせずに強くなれてさ!」
…うん、誰だか知らないけど嫌な奴なのはよく解った。
「(この方は南方の大領主カークランド辺境伯の次男ナッシュ・カークランド様です。ジュン様の同級生で同じクラスでした)」
ノルンはこいつの事を知っているらしい。小声で教えてくれた。
カークランド辺境伯?王国南方の貴族を纏める大貴族じゃないか。
それに…ジュンの同級生?ジュンより年上に見えるけど?
いや、ジュンは二年飛び級してるんだったか。じゃあ二歳年上か。
嫌らしい眼つきの痩せた身体…騎士として最低限の腕前もあるか怪しい。
少なくとも私から見たらザコもいいとこ。
ミゲル達にも及ばないな。
「何黙ってる?挨拶くらいしろよ。俺はお前の同級生かもしれんが俺の方が年上だぞ?」
「…ああ、悪いね。久しぶり、ナッシュ」
「ああ!?テメェ、何偉そうな口利いてる!いつからそんなに偉くな――」
「ナッシュ!何をしている!もう集合時間だぞ!」
「―チッ!覚えてろよ!」
「嫌だ。すぐに忘れる」
「なっ…チッ!」
舌打ちの多い奴だ。
あんな奴が宮廷騎士?どうやって入ったんだか。
「何、あいつ?すげー嫌な奴だな」
「あの方はカークランド辺境伯家の御子息、ナッシュ・カークランド様です。ジュン様とは確かクラスメイトでしたか。それより、セルジュ。城内では言葉使いに気を使いなさい」
「あ…すみません、セバスチャンさん」
「いえ…まぁ今回は私も同じ気持ちです。学院でもジュン様によくちょっかいを出してたそうで。そうでしたね?ノルン」
「…はい。ナッシュ様は取り巻きを使い、よくジュン様に嫌がらせを…勿論、味方になってくれる方も居ましたが」
「カークランド辺境伯家は先代…ガイン様の御父上の代からグラウバーン家を敵視してますから。ジュン様が魔帝に至ったのが面白くないのでしょう」
私が剣の腕を認められて白天騎士団に入った時にも居たなぁ。
難癖付けて絡んで来るヤツ…何処にでもいるんだな。
「えっと…それで王城には入ったけど、此処から何処へ?ジュン…様」
「白天騎士団の本部へ。本部の前で待ってればいずれ来るから。ああ、そうだ。此処からは護衛は必要無いから、ミゲル達は王都の観光に行ってきていいよ。いいよね、セバスチャン」
「ええ、構わないでしょう」
「え!マジ?」
「やったぁ!流石ジュン君!」
「ただし。グラウバーン家に仕える騎士として、自覚を持った行動を御願いしますね」
「わかってます!それじゃ!」
「先ずどこ行くよ?」
「取り合えず飯だな!俺、王都のガイドブック持ってる!」
…許可しといてなんだけど大丈夫かな。
ジュンと二人切になる為に出来るだけこの場に残る人は少ない方が良いんだけど。
「セバスチャン達も行っていいよ?王城には何度か入った事はあるし」
「いえ、そういう訳には参りません」
「グラウバーン家の御曹司の御供が一人も居ないなんて、周りに侮られてしまいますし。それに一人で居るとナンパされてしまいますよ?気付いてます?城内に入ってからジュン様は注目の的ですよ?」
うん、気付いてた。
入城するまでは馬車に乗ってたから視線は集まらなかったけど、今は徒歩。
すれ違う人や遠くから感じる視線が多い。
今の私の魅力値は1512。この数値は多分王国で最高。
確か、三年前の王都で行われたミスコンの優勝者の数値が600程度だったはず。
そこから考えるに…今の私は絶世の美少年。
元々、ジュンは超美少年だったわけだし。今年十五歳、成人という事もあってさらに磨きが掛かった。
ま、私ももうすぐ十八歳。
魅力の数値は同じなんだし、超美少女になってるはず…ん?
「あそこが白天騎士団の本部ですか」
「あれ?誰かいますよ?」
「げ…」
アレは…何で此処に居る?
「ジュン様の御知り合いで?」
「あ、いや、知らない人」
うん、知らない。私は知らない。
あんな変な中年太りのおじさん、知らない。
隣の人はともかく。
「初めまして」
「…はじめまして」
だというのに。
向こうから挨拶して来た。
話し掛けなくていいのに…
「私はノア・ニルヴァーナと申します。ニルヴァーナ騎士爵家の当主です」
「妻のエマ・ニルヴァーナです」
「え…ニルヴァーナって…」
「剣帝の…?」
そう、私の父と母だ。一応…騎士になってからは禄に会って無いけど。
「(ジュン様?御挨拶をしなければ)」
「(ああ、うん…)」
自分の両親に初対面の挨拶とか変な感じがするけど…仕方ない。
「…ボクはジュン・グラウバーン。グラウバーン辺境伯家の者です」
「グラウバーン?もしや魔帝の?」
「…ええ、まぁ」
「おお!これはこれは!御目にかかれて光栄です!」
う~ん…騎士爵だから仕方ないんだけど。
辺境伯家の子供相手とはいえ自分の父親がすり寄って来る姿を見るのは、ちょっとアレだなー…まぁ元々、お父さんには何にも期待してないんだけど。
「えっと…お、いえ、ニルヴァーナ殿は何故此処に?」
「御存知でしょうが、娘のアイシスは白天騎士団に所属しておりまして。もうすぐ帰って来るそうなので此処で出迎えてやろうと思いまして」
…王都に家があるんだから大人しく家で待ってればいいのに。
「それでそちらは?グラウバーン家縁の方が白天騎士団に在籍されてるのですか?」
「あ、いえ…ボク達も白天騎士団を出迎えに来たのは同じですが縁者が居るわけでは」
「では何故?」
ん~…どうするか。
此処で「アイシスさんに会いに来たんです」なんて言ったらめんどくさい事に……ならないんじゃない?
むしろ此処でジュンとアイシスは仲が良いと…恋仲だと思わせておけば後々スムーズに…うん、いいね!
「実はボクとアイシスさんは非情に仲良くさせていただいていて」
「おお!娘と?」
「まぁ」
「え、ちょ…あな、ジュン様?」
「それで、久しぶりにアイシスさんに会えると思うといてもたっても…いててて!」
ノルンに急に耳を引っ張られた…なにすんだ、こいつ。
「(何を考えてるんですか!ジュン様の許し無く勝手な事を!)」
「(いいじゃん!どうせ遅かれ早かれそういう関係になるんだし!今こう言っておけば後々スムーズに話が進むでしょ!でしょ!)」
「(だから勝手な事言わないでください!ジュン様はあなたにはあげませんから!)」
「ノルン、やきもちを妬くのはわかりますが、他家の方の前ですよ。控えなさい」
「ぐっ…」
全くだ。仮にも主に対してなんという事を…お?
「ん?あー!ジュンちゃんだー!」
「え?ほんとだ!ジュンちゃんだ!」
「やだ、背が伸びて更に美形に!」
「ていうか美しすぎない!?なんか眩しいんだけど!?」
白天騎士団の皆が帰って来た。
噂程度には聞いていたけど、白天騎士団には死者が居なかったらしい。
皆、無事っぽい…良かった…あ。
「あ…えっと…もしかして…」
「うん…そうだよ…」
感動の再会のはずなのに、自分の顔だから変な感じだけど。
ジュン…やっと会えたね。




