第41話 「もうわけわかんないよ…」
ジュン視点です
「残存兵は!?」
「居ません!完全に制圧しました!」
「よし!旗を掲げろ!」
ヴィクトル殿下の死から三ヶ月。
戦争が始まって約ニ年半。今日、ファーブルネス帝国の帝都を護る最後の砦がアデルフォン王国の手に墜ちた。
ヴィクトル殿下を護れなかったボク達は処罰…最悪極刑もあるかと思われたが、陛下は誰にもその責を問わなかった。
迂闊にも一騎打ちを受けた息子にも非はあるとのお考えで、あの時、あの場に居た全ての者に責任は問わないと宣言してくださったのだ。
但し、ファーブルネス帝国には一切の容赦が無くなった。
陛下は更に追加の援軍を送り、全面攻勢に出た。
結果、アデルフォン王国軍はファーブルネス帝国から更に国土を奪い、今日砦を落とした事で約五割…帝国の国土の半分近くを奪う事に成功した。
捕虜となった帝国の第三皇女のアヴェリーは王都に送られ、王城にて監禁された。
通常なら捕虜収容所送りだが皇族である彼女は丁重に扱われ、取り調べの後に王城に送られた。
アヴェリーには当然、ヴィクトル殿下暗殺の首謀者の嫌疑が掛けられているが、恐らくは彼女では無いだろう。彼女以外にも囚われた帝国兵は居るが誰も知っている者は居なかった。
多分だけど…アレは本当に帝国とは別の勢力だろう。
殿下の暗殺方法は超遠距離からの弓での狙撃だった。
矢が飛んで来た方向にあったのは帝国の砦。
だが砦からは1km以上は離れていた。
そんな距離からの狙撃を成功させる弓使いなんてそうは居ない。
もし居たとして、そいつは「弓術LV10」の「弓帝」なのは間違い無い。
だがアデルフォン王国は勿論、ファーブルネス帝国にも「弓帝」は存在しない。もし存在するならこうなる前に実戦に出てる。
秘密兵器なのだとしても折角の「弓帝」を暗殺に使う理由も帝国には無い。
だから帝国とは別の…第三国の介入があったのだろう、というのが白天騎士団内での共通認識になってる。
何処の国…国では無く何らかの組織だったとしても、その目的は恐らく戦争の継続だろう。
帝国を勝たせたいわけでは無く、ただ戦争を継続させたい。
だから殿下を暗殺した。
結果、陛下はその何者かの思惑通りに動いてしまったが、そうせざるを得なかった。
次期国王であるヴィクトル殿下が殺されたのに、そのまま戦争終結とは行かなかったのだ。
そうで無ければ内外に示しがつかない。
全く…してやられたと言える。
しかし、それも翌日までだったが。
「え…マジ?」
「戦争終わったの?」
「ええ。ファーブルネス帝国皇帝ゲオルギウス・サム・ファーブルネスは国民に対し敗北を宣言。王国に使者を送って来たわ」
もしかしたら、という予想はあった。
だけど前回は殿下の暗殺という最悪の形で終わった。
だからあまり期待して無かったのだけど…
「や…やったぁぁぁ!」
「やっとだぁ!やっと帰れる!」
「休暇が貰える…家族に会える!」
戦争が始まって以来、まともな休暇なんて無かった。
生きて戦争の終わりを迎えた事に、皆大喜びだ。
勿論、ボクも。
明日にでもアイシスさんに会いに…行くのは無理だろう。
もう少し後になるだろうけど、もう焦る事も無い。
落ち着いて王都に帰って、休暇を貰ってグラウハウトに帰ろう。
そう思っていたのに二日後。
戦後処理はタッカー侯爵、それに蒼天騎士団に紅天騎士団が残ってやる事になり、一番長く前線に居た白天騎士団は一足先に王都に帰る事に。
そして…
「アイシス。貴女の陞爵、二週間後に執り行う事になったわ。ジュン君も一緒にね」
「え?」
「まあ正確には貴女の家とジュン君の家、になるわね。二人の功績なのに貴女達の御父様が陞爵する事になるんだけど」
という事はつまり…二週間後には王都でアイシスさんと合流出来るのか。
慌てて帰る必要も無くなったな。
「因みにアイシスのニルヴァーナ家は騎士爵から子爵に。ジュン君のグラウバーン家は公爵になるそうよ」
「えーいいなぁ…一気に子爵かぁ」
「殿下を無事にお守り出来ていれば伯爵にだってなれたかもね」
それでも準男爵、男爵を通り越しての子爵だ。
功績は正当に評価されてると思っていい。
「ジュン君のグラウバーン家は公爵かぁ…」
「王家の次に偉いって事だよねぇ…やはり狙うしか無いね、玉の輿」
「あそこはガイン様も十分な功績を残してるから、まぁ当然ね」
この戦争で一番大きな功績を挙げたのは間違い無く父上だ。
ボクが魔帝になってなかったとしても、父上の功績だけで侯爵にはなれた筈だ。
と、そう言えば…この所アイシスさんのステータス…正確に言えばボクのステータスを見てなかった。
久しぶりに見て見よう。
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ジュン・グラウバーン
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「え」
「アイシス?どったの?」
何これ。
ステータス表示が名前以外全部?になってる…え?
一体何が…ア、アイシスさんのステータスは?
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アイシス・ニルヴァーナ
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「こっちもか…」
「何が?」
「またアイシスの独り言が始まったよ」
「そう言えば前にもあったわね」
これは一体どういう…ステータス表示が?だけになるなんて聞いた事も無い……ん?
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アイシス・ニルヴァーナ
「いっぺん、死んでみる?」
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「どゆこと!?」
「わぉ?どしたどした」
「何に驚いてんの?」
ス、ステータス表示にメッセージが…しかも物騒な。
なに、え?ボク殺されるの?いや、誰に?…ん?また変わった?
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アイシス・ニルヴァーナ
「お前はもう死んでいる」
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「嘘でしょ!?」
「だから何が?」
「アイシス、本当にどうしたの?」
あ、あまりにも衝撃的過ぎて、ずっと独り言を言ってたらしい。
いや、だってステータスに死亡宣告されるなんて思わないし。
と、取り敢えず一人になれる場所に…あ、また変わった。
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アイシス・ニルヴァーナ
「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ!」
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「何から!?」
「アイシス?と、取り敢えず落ち着きなよ!」
「戦争中におかしくなるならまだしも!戦争が終わってからおかしくならないでよ!」
何なのさ一体…何から逃げるなって…あ。
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アイシス・ニルヴァーナ
「そんな装備で大丈夫か?」
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「大丈夫ですけどぉ!?」
「いや大丈夫じゃないよ!」
「今のアイシスは絶対に変!」
まさかステータスに装備の心配されるとは思わなかった……次は何?
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アイシス・ニルヴァーナ
「月が綺麗ですね」
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「そうですね…」
「認めちゃった!?」
「認められたら…それはそれで反応に困るね」
今は昼間だけどね!月は出てないけどね!
…はぁ。次は何さ。
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アイシス・ニルヴァーナ
「君は刻の涙を見る」
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「もうわけわかんないよ…」
「そりゃ私達のセリフだよ…」
何なのさ、刻の涙って。
刻が泣くの?むしろ見たいよ……あ、変わった。
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アイシス・ニルヴァーナ
「準備中。暫くお待ちください」
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もう何が何だか。
準備中って、何を。暫くってどのくらいさ…どうしようか。
ティータさんに相談するにしても…ステータス表示がおかしくなったって言って理解して貰えるだろうか?
無理だろうなぁ…はぁ…




