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第40話 「大当たりだな!」

 試練のダンジョンに入ってもう五時間。

漸く最深部のボス部屋と思しき扉の前に到着。幸いここは地下20階までのダンジョンだったらしい。


 アトライア曰く、普通の冒険者ならもっと時間を掛けて攻略する物らしい。

ダンジョン内で寝泊まりし、数日掛けて攻略するのが基本だそうだ。


 確かに浅い階層では先に入った冒険者達と出会う事もあったが後半になってからは全く出会わなかった。どうやら全て追い越してしまったらしい。


「他の冒険者は何してるんだろ」


「何って…道に迷ってるんだろ。なんせここは迷宮…ダンジョンだぞ?」


「普通こんなに進めないから。魔獣と戦ってトラップ解除して道に迷って。全てを慎重に進めたらどうしても時間かかるから」


「殆ど迷わずここまでこれたのは奇跡よ?」


「ジュンが道を決めてたけど…何を基準に決めてたんだ?」


「勘」


「…あ、そう」


「…まぁ、結果正解だったからいいんだけどね」


 何故微妙な顔をする?

地図があるわけでなし、どうせ勘で行くしかないだろうに。


「じゃ…入るか。いよいよボス戦だぞ、準備はいいか?」


「いえ、その前に。初級ダンジョンのボスはどんなものなのか、情報はありませんか?」


「ああ…えっと、アトライア?」


「そうね…単体で出る場合と複数で出る場合があって。単体の場合はグレートミノタウロスとか、スケルトン・ナイトとか。複数の場合はハイオークが十体とかアーマースコルピオンが三体とか。どちらの場合もベテラン冒険者数人掛かりなら倒せる強さよ」


 スケルトン・ナイトとかハイオーク十体とか?

なんだ…超余裕じゃん。その程度なら瞬殺出来る自信がある。


「私達の場合は…複数のパターンが理想的ね」


「それは何故です?」


「試練のダンジョンではボス戦で何もしないともらえる報酬がワンランク低くなる場合があるのよ。単体で強いボスだと私達じゃ足手纏いになるかもだし、ジュン君が瞬殺しちゃいそうでしょ?」


「それは困るな。ジュン、俺達の出番は残しておいてくれよ?」


「…りょーかい。でも命を最優先にするけどね」


「それでいい。じゃ、開けるぞ」


 重厚な両開きの扉を開く。

そこは高い天井、広い空間。

中央には魔獣が複数。どうやら複数型のボスらしい。


「アレは…スケルトン・ソルジャーですね」


「普通のスケルトンは新人冒険者でも勝てるザコだけど、スケルトン・ソルジャーだと一対一じゃ、ちょっと厳しいって程度のモンスターだ」


「それが…二十体。ちょっと多いけど何とかなるわね」


「今回はラッキーだったな」


「今回は?」


「ああ。ボスは毎回違うんだそうだ。次に来た奴らが、同じボスと戦うとは限らないって事だ」


 ふうん…ま、楽に倒せるならそれに越した事は無い、か。

どうせ単体のボスが出ても私には物足りない魔獣だろうし。


「じゃ、わた…ボクが適当に数を減らすから。あとは皆でやっちゃって」


「お?おお、わかった」


 さて…スキル「飛燕」の連射でもいいけど、此処まで魔法を使ってないし…せっかく練習した事だし、新しく覚えた魔法でやってみようか。


「アースショット!」


 土魔法の下位魔法アースショット。

マジックショットに土属性を乗せた魔法だ。


 ジュンとして生活してる以上、あまり大っぴらに魔法の訓練は出来ないが基礎訓練の合間にノルンが使える魔法を教えてもらっていたのだ。

他にも幾つかの魔法は習得してある。


 魔法を撃ったのが戦闘開始の合図になったらしい。

生き残ったスケルトン・ソルジャーがこちらに向かって来た。


「おー…前も見たけど、下位の魔法でよくこんな威力出せるな」


「たった三発で半数くらいバラバラにしてんぞ」


「これなら楽勝だな。行くぞ!」


「ノルンちゃんも行くぞ」


「ええ。右端の二体はノルンがやります」


 ミゲル達にとってスケルトン・ソルジャーは確かにザコで、ノルンにとっても超ザコ。

数は多くても問題は無さそうだ。


 …ノルンはドジが発生しないかって心配はあるが。


「行きます!スキル、桜花乱舞!」


 おー…忍者?だっけか。

目立たない事が必要な忍者が使うスキルにしては中々派手だな。


 ピンク色の花弁が舞う中、それに隠れるようにして対象に接近する技みたいだ。

スケルトン・ソルジャーが出鱈目に剣を振り回して花弁を斬っているがノルンの姿は見えない。


 そしていつの間にかスケルトン・ソルジャーの背後に現れたノルンは二体のスケルトン・ソルジャーを二本の小太刀でバラバラにした。


「おー!ノルンちゃん、かっけー!」


「ふふん。これくらいノルンは余裕です。残りもノルンがやってしまいましょうか?」


「心配無用!」


「私達だってそれなりに戦えるんだから!」


 残りのスケルトン・ソルジャーは八体。

ミゲル達より数は多いが、問題は無さそうだ。


 ミゲル達は片手剣と盾という騎士の基本装備。

全員が同じ武装で、一人一人は一般騎士と同程度でしかないが…上手く連携がとれてる。


 一人がスケルトン・ソルジャーの攻撃を防いでる間に二人が左右から斬り付け仕留める。

逆に二人で三体のスケルトン・ソルジャーを抑えてる間に一人が仕留める等、思ったよりミゲル達は戦えるらしい。


「よっしゃー!勝ったどー!」


「ふっふーん!どーだ!」


「私達だって戦えるんだから!」


「少しは見直したか!」


「あ、うん。そだな」


 うん…まぁ確かにね。

思ってたよりは強かったよ。


「ところで報酬は?称号かアビリティが貰えるんだよね?」


「ええ。このまま此処で待機してれば…あっ!」


「お、おお!ステータスが勝手に開いた!」


 私のステータスも勝手に開いた。

…称号とアビリティが一つずつ増えてる。


「おお?称号とアビリティが貰えたぞ?」


「俺もだ」


「私もよ」


「ノルンもです。『迷宮踏破者(初級)』…この称号は全員貰えたのではありませんか?」


 どうやらそうらしい。

私が貰った称号も同じだ。


 効果は以下の通り。


【迷宮踏破者(初級):試練のダンジョン(初級)をクリアした者に贈られる称号。力・体力上昇プラス補正】


「うーん…初級のダンジョンクリアで貰える称号だけあって、そんなに効果の高くはないな」


「ま、それはわかってた事だし、アビリティも貰えたんだ。悪くはねぇ」


「そうね。で、アビリティは何貰った?私は『聴覚強化』だった」


 『聴覚強化』?耳が少し良くなるアビリティだったかな。

同系統に『飛耳』ってアビリティがあるけど、それの下位かな?


「オレは『視覚強化』だな」


「俺は『味覚強化』だ」


 ミゲルは『視覚強化』でコナーは『味覚強化』。

テオドリックは『嗅覚強化』でセルジュは『触覚強化』らしい。


 ミゲル達は五人で五感全てを強化した形になるのか。


「味覚を強化って微妙って思ったけど、コナーには結構いいアビリティかもな」


「おう。料理に磨きがかかるぜ」


「セルジュの触覚強化って…どうなんだ?」


「ん~…手触りだけで材質がよく解るって感じか。眼ではわかり辛い傷とか凹みとかがわかったり。貴金属とかの偽物の判別とかも出来るかもな」


「武具のメンテナンスとか道具の目利きには便利かもな」


 なるほど。得意分野がバラけて丁度いい形でアビリティを貰えたわけだ。


「それで、ジュン君とノルンちゃんは?」


「ノルンは『危険察知LV1』ですね」


「おお?良さそうじゃん」


 『危険察知』は自身に迫ってる危険を察知しやすくなるというアビリティ。

勿論、LVが高い方が精度が良いし迫ってる危険をより具体的に察知できる。


「ボクは『鑑定 LV1』だね」


「おお!大当たりだな!」


「そうなのか?」


「LV1だと大した情報は得られないけど、LVが上がれば色んな情報…他人のステータスも見れるっていう優れものだぞ!」


「その分LVは上がりにくいが…初級ダンジョンで手に入るアビリティとしては一番の辺りだな!」


 へえ。一番の大当たりね。

試しにミゲルを鑑定っと。


【ミゲル:人間】


いや、それだけ?

人間なんて見たらわかるわい。


 まぁ…LV1だし、仕方ないか。


「……」


「ん?なあにジュン君」


「…ジュン様?何処を見て…」


 うん。物は試しだ。


【アトライアの胸:95cm】 【ノルンの胸:88cm】


「いぃよしっ!アトライアは95でノルンは88かっ!」


「へ!?」


「88?…あ」


「ジュン…もしかしてお前…」


「二人の胸を鑑定したのか?」


「イィエス!」


 まさか上手く行くとは…素晴らしきかな鑑定!


「ジュン君のバカ!セクハラ上司!」


「…控え目に言って最低です」


「ま…ジュンぐらいの年頃ならな…仕方ないんじゃないか?」


「仕方ないで赦されないわよ!もう!」


 アトライアとノルンには怒られたけど、いい収穫だった、うん。

鑑定は戦争には役立ちそうには無いけど。これがいつかジュンの助けになるといいな。


 ジュン…無事でいるかな。

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