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第39話 「ズルはダメだよ」

「ほいっ、と。これで終わりかな?」


「ですね。今ので最後です」


 ダンジョンに入って約三時間。

今は地下12階くらい。出て来る魔獣は相変わらずザコばかりなのでLVは上がらないけど、魔石はそこそこ溜まって来た。


「いやザコって…地下10階を越えた辺りから結構強くなってんぞ」


「そう?」


 どれもこれも全て一撃で仕留めてるけど。


「俺らからしたら油断できないヤツばっかりだよ…」


「ダンジョンスパイダーやダンジョンバットは私達にとってもザコだけど…フライリザードとか堅い鱗を持ってて結構な強敵よ?」


「まぁジュンとノルンが規格外なのは知っていたけどな…」


「ノルンはまだまだです。セバスチャン様には遠く及びません」


「あのおっさんも規格外だから…」


 まぁ…うん。

今の私から見てもセバスチャンは謎だ。

戦って負ける気はしないけど、楽勝で勝てる気もしない。


「ところでさ。ここ何階まであるんだ?もう結構下りたけど」


「初級ダンジョンの多くは20~25階層で出来てる事が多いんだ。だから後8~13階降りる事になりそうだな」


「うへぇ…めんどくさ」


「まぁまぁ。二人の御蔭で普通よりかなりハイペースで進んでるからさ。夕方には着くよ、きっと」


 夕方…うう~ん、やっぱりめんどくさい。

何か、こう…抜け道とかないかな。いつぞやの隠し通路みたいに一気にボスのとこまでいけるような。


 ふむ…


「それに中級のダンジョンからもっと沢山トラップもあるし、魔獣も強くなる。もっと時間が掛かるようになるんだからさ。初級でそんな事言ってたら続かないよ?」


「ジュン、お前さん家訓で十五歳になったら冒険者になるんだろ?今から慣れとくと…何やってんだ?」


 床は…そこそこ堅いけど、斬れそうだ。

下に人のは気配は無し。よし。


「おい?おいおいおいおいおい!何する気だ!?」


「ちょっと!?ジュン君?!」


「ちょっ、あなた…ジュン様!?」


「スキル!天剣!」


 剣術LV4のスキル「天剣」。

剣をスキルの力で強化、通常より強力な斬撃を繰り出せる。

マジックウェポンのスキル版のような物。

この状態で他のスキルを使う事も可能!


「スキル!千刃!」


「「「「「ちょっとおおおおおお!!!!」」」」」


 剣術LV8のスキル「千刃」。

瞬き程の一瞬で千の斬撃を繰り出すスキル。

一撃一撃は剣術LV1のスキル「斬撃」にも及ばない威力でしかないが…おお、斬れる斬れる。


 うん…とりあえず床一枚だけ斬るつもりだったけど、つい勢いあまって五階分くらいくりぬいてしまった。まぁ、人はいないようだし、結果オーライだ。


「ん?どったの君達」


「「「「「ば…」」」」」


「ば?」


「「「「「「ばかー!!!」」」」」


「おおう?」


 え?何?何が?


「お前何考えてんだ!?」


「ダンジョンの床斬り抜くなんて…普通出来てもやらねーぞ!?」


「それにもし下に人が居たらどうするのよ!」


「罪の無い冒険者を殺したらいくら大貴族の息子でも犯罪奴隷行きは確実だぞ!?」


「ああ、だいじょーぶ。人の気配が無いのは確認してたから。…一階下だけは」


「それ以上に斬ってるじゃん!意味ねーじゃん!」


「つうか!お前、ここは試練のダンジョンだっつったろ!こんなズルが認められるはずねーだろ!」


 ズル?認められる?ここが試練のダンジョンだから…なに?


「試練のダンジョンてのはな!ちゃんと一階ずつ階層を踏破して行かないとダメなの!」


「昔もこういうズルをやって楽しようとした奴がいた!でもそういうのはダンジョンの管理者が許さない!」


「その穴に入っちゃダメよ!ダンジョンの管理者に制裁されるわよ!」


「制裁?」


「と・に・か・く!ズルは禁止!いいな!」


「えー…でも…」


「…ジュン様。彼らの言う事は確かに守った方が良さそうです。見て下さい」


「ん?」


 穴が…塞がっていく?

まるで生きているみたいだ。触った感じじゃ堅い岩に過ぎないのに。


「わかったろ?ダンジョンにはそれぞれ管理者が居る。誰もその姿を見た事は無いがな」


「試練のダンジョンはこういう類のズルを許さない。欲望のダンジョンは…ズルしてもいいがやりすぎると難易度が高くなっていくそうだ」


「つまりダンジョンは管理者が常に見張ってる。その証拠に…ほら」


「『ズルはダメだよ!』…か。ホントみたいだね」


  壁にユラユラと揺れる文字が浮かんでる。

どうやらホントに管理者が居て見張ってるっぽい。


「ちなみに制裁ってどんな?」


「初級ダンジョンでは考えられないような、ちょーーーー強い魔獣が現れて…」


「現れて…ズルをした奴を惨殺するらしい」


「誰も見た事が無い、どの国の記録にも無い魔獣が出て来る…そうよ」


「…そういう記録が残ってるなら、それ以後は見た事のある魔獣になるんじゃないの?大体惨殺されるなら、その記録は誰が残した?」


「もちろん、生き延びた奴がいるのさ」


「ズルしたらこうなるって事を広めるように、一人はわざと見逃したって説が濃厚だけどな」


「そしていくつかの記録を見ると毎回出て来る魔獣の姿形が違うんだそうだ」


 毎回新種の魔獣が出て来るって事か。

つまり対策の立てようが無い、と。


「はぁ…正直ノルンは床を斬ってショートカットは悪くない手段だと思ってましたが、そういう事なら仕方ないですね。行きましょう」


「お、おう…悪くないと思ったんだ…」


「ノルンちゃんも結構アレだね…」


「アレってなんですか」


「アレはコレだよ」


「何故ボクを指さす?」


「……」


「何だ、その何とも言えない微妙な顔」


 失礼だなー君達。

別にそこまで突飛な行動じゃなかったと思うんだけど。

実際過去にもズルしたやつは居るんでしょ?


「ほら、行くぞ。正攻法でな」


「は~い…」


 あと最低8階層か…めんどくさ…

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