第33話 「全軍!突撃だ!」
「よし、アイシス。やれ!」
「…はい」
やれ、ね。
簡単に言ってくれますけど。
この距離から撃てる最大威力の魔法…で、可能なら砦を破壊、ね。
やってやろうじゃないか。
「な、なんだ?急に薄暗く…」
「く、雲が集まって来てる?」
「集まった雲が…落ちる!?」
天候を操り、上空から暴風を叩きつける最大最強の風魔法。
「神の息吹!」
全力でこの魔法を放った事はないけど…対策無で受ければ如何に頑強な砦でも破壊出来る。
さて…どうだ?
「お、おお!?」
「雲が砦にぶつか…る?」
「なんかすげーデカい盾が出たぞ!?」
さっきから周りの兵士の実況がうるさいが…彼らの言う通りだ。
何やら砦より面積の広い輪郭のみが見える巨大な盾がボクの魔法を防いだ。
間違いなく『護帝』のスキルだろう。
「よし、御苦労だったアイシス」
「はい。しかし、やはり防がれましたね」
「うむ。だがお前の魔法もかなりのものだった。防がれはしたが帝国軍にはさぞかし脅威に見えただろう。これで迂闊に護帝は出る事が出来なくなったな」
そういう狙いもあったか。
確かに、そうなるだろう。ついでに言えば他の帝国軍も。
「兎に角、お前の出番は一先ず終わりだ。持ち場に戻ってよいぞ」
「はい」
白天騎士団の持ち場は中央。
殿下がいる本陣の前だ。殿下の護衛には蒼天騎士団が付いている。
その二つに橙天騎士団が二つに分かれて配置されている。
「お疲れ様、アイシス」
「すっごい魔法だったねぇ。防がれちゃったけど」
「あれは『盾術LV8』のスキル『守護の領域』。流石護帝、守護神の名は伊達じゃないね」
「ふーん…ダイナもいずれはアレが出来るようになるんだねー」
「出来るようになれればいいけどね」
「ダイナならきっとなれるよ!」
「…それで、その『守護の領域』ってどんなスキル?」
「えっとね、護る対象と攻撃に合わせた盾を出すスキル。護る対象と攻撃の強さによって消耗する力も大きくなる。普通ならあの大きさの盾は何度も出せるもんじゃないけど…護帝ならどうだろうね」
…という事は何度が同じくらいの魔法を撃ち続ければ護帝は力尽きるか?
ボクならまだまだ撃てるが…ん?
「何か…砦から飛んで来る?」
「アレは…大岩!?」
「皆、避けてー!」
帝国の砦から飛んで来る大岩の数は二個。
まだ距離が充分にあったため、回避には成功する。
誰も岩の下敷きにはならなかったようだ。
「あっぶなー…どうやってこんな大岩を飛ばして来たの?」
「まさかこれも護帝?」
「どう…かしら。いくら護帝でもこれだけの大きさの岩を飛ばすなんて出来ないと思うけど。軽くトンはあるわよ、これ」
「じゃあ…どうやってさ」
「それは…解らないけど。また何か来るわよ!」
「今度は何!?」
アレは…飛竜騎士団か!
数がいつかの奇襲攻撃の時よりかなり多い…百、いや二百?
「今度は飛竜騎士団かぁ」
「帝国の切札の二つがこの砦に揃ってたとはねぇ」
「ヤツら何か荷物を運んでる…?」
四騎一組でワイバーンの足に何か網状の物をぶら下げてる?アレは…
「投石か!」
「また岩が降って来るわよ!」
今度はこちらが攻撃不可の上空からの投石か。
以前の奇襲攻撃よりも高高度からの攻撃…厄介な。
しかし、だ。
「飛竜騎士団か!お前達の備えはしてある!大弓隊!上空の敵に対し攻撃開始だ!」
「橙天騎士団!魔法で攻撃開始しなさ~い!」
大の大人数人掛かりでなければ弦を引けない程に巨大な大弓で、先の尖った鉄柱のような矢を射る。
そして紅天騎士団程ではないが橙天騎士団にも魔法攻撃に長けた騎士は居る。
飛竜騎士団に対する備えは万全だ。
「じゃ、ボクも上で迎撃…あれ?」
「あー!逃げてく!」
「こらぁ!逃げるな!」
こちらの反撃開始と同時に撤退?
まともにやり合う気はないのか?
「あいつら、どういうつもり?」
「外でまともにぶつかる気は無いって事でしょうね。砦と上空からの投石。左右の王国軍を見て」
「ん?」
左右に広がるように展開されてた王国軍の足が止まってる。
さきほどの攻撃で止まってしまったのだ。
「それ以上進むな、って言いたいのかしらね」
「舐めてるなー…アレくらいの攻撃で諦めると思ってんのかな」
「でも実際止まってるもの。飛竜騎士団の投石は兎も角、あの大岩は厄介よ。下敷きになれば即死は間違い無いし、近づけば近づく程、危険度は増す…一般兵や奴隷兵には避けるしかないし」
「ティータやアイシスなら砕けそうだよね。私も盾で防ぐ事は何とか」
「あたしは避けるしかないかも。護ってね、ダイナ」
「でも、帝国軍が積極的に攻めるつもりが無いなら好都合よ。この距離を保ちつつ包囲網を完成させればいい」
「そうだな…」
果たして、そう上手く行くだろうか?
というボクの懸念はあっさりと実現してしまった。
帝国軍の手では無く、殿下によって。
「おのれ!愚弄しおって!」
「ちょっと。落ち着きなさいな、殿下」
「黙れ!お前達も何故止まる!あの程度の攻撃で怯みよって!」
「仕方ないでしょ?実際に一般兵や奴隷兵には防ぎようが無いし、騎士の多くはあの大岩は避けるしかないんだから」
「ええい!不甲斐ない!全軍!突撃だ!」
「「「は?」」」
突撃て。
まだこんなに距離があるのに?
「ちょっと殿下。落ち着きなさいな」
「そうです、殿下。総指揮官である殿下がそのように簡単に激昂し短絡的な指揮を執っては…」
「黙れ!大した被害が無かったとは言え一方的にやられて引き下がっては士気に関わるわ!何としても一撃加えるぞ!」
やられてって…あーた自身は何もされてないじゃないですか。
突撃…?ほんとにやるの?




