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第113話 「しゃべれーい!」

ジュン視点です。

「戻りました、アイシスさん。レティさん」


「一回戦はもう終わったかしら?」


「おかえりー」


「終わったよ。勿論圧勝」


 事情聴取が終わって試合会場に戻ると、魔法部門と格闘部門の一回戦は全て終了していた。


 アイシスさんの二回戦目には間に合ったようだ。


「それより、ジュン。アレ見てよ、アレ」


「アレ?」


 アイシスさんが指差すのは、格闘部門の試合。

女の子が大男と試合中…あ、いや、終わった。


 大男の連続攻撃を躱し続けてた女の子が、大男の攻撃が止まった一瞬。

三発だけ放った攻撃が適確に命中。

三つの魔法道具を点灯させていた。


「勝者!ユフィール・ロックハート!」


 …ロックハート?

もしかして、あのロックハート?


「ユフィール・ロックハート…ロックハート公爵家縁の人物ね」


「あ、やっぱり」


 アデルフォン王国には公爵家が四つ存在する。

一つはグラウバーン家。父上が当主の、公爵家としては新人の東部の貴族の纏め役。


 二つ目はマクスウェル公爵家。

セーラさんの実家。王位継承問題で第三王子派筆頭。

中央貴族、特に軍務系貴族に強い影響力を持つ。


 三つ目はニューゲイト公爵家。

ヒューゴ団長の実家。北部貴族の纏め役。

王位継承問題では第二王子派だ。


 最後に、ロックハート公爵家。

マクスウェル公爵とは同じく中央貴族に強い影響力を持ち、ロックハート公爵家は財務系貴族が主。


 そしてロックハート公爵家は第一王女派の筆頭。

つまり、四つある公爵家の内、三つが王位継承問題において対立しているのだ。


 そしてあの子…ユフィール・ロックハートをボクは知っている。


「ユフィール・ロックハート…彼女の噂は聞いた事があるわ。何でも体術…格闘技に高い才能を持つ少女で、称号『闘姫』を生まれながらに持つとか。初等学院卒業時で『体術LV8』を持っていたらしいわよ」


「へぇー、剣術と体術の違いはあるけど、まるでアイシスみたいだね」


「ふ、ふん!私の方が凄いぞ!」


「はいはい。確か、今年成人だったかしら。…あら?もしかしてジュンさんと同い年ですか?」


「はい。初等学院時代は同じクラスでしたよ。ボクが飛び級するまでは、ですけど」


 だけど、それだけだ。

同じクラスだったけど、会話をした事がない。


 初めのうちは仲良くしようと話しかけていたクラスメイトも、挨拶すらしない彼女をすぐに見限り。

クラスメイトの殆どが彼女を相手にしなくなっていた。


 ボクとノルン達グラウバーン家の人間だけは、挨拶だけは続けていた。


 ボクが飛び級してクラスが変わった後も続けていた筈だ。


「それで、彼女が何か?」


「あ、そうそう。この闘技場でさ、偶に妙な視線を感じてたんだけど、その視線の主が彼女らしくて」


「アイシスさんも感じてたんですか」


「あ、ジュンもなんだ」


 視線の主が同じとは限らないけど、多分同じだろう。

でも、どうして?彼女がボクとアイシスさんに視線を送る理由がわからない。


 ボクとは知り合いなんだから、隠れて視線を送らず、話しかければいいだけだし。


「って、うわぁ!」


「ジュンちゃん、後ろ!」


「…え?おおう!?」


「い、いつの間に…」


「………」


 いつの間にか件のユフィールさんが背後に…初等学院でもそうだったけど、極端に気配が薄いな。


「えっと…お、お久しぶりです、ユフィールさん」


「……」


 変わってないな。

こちらの挨拶に、彼女はコックリと頷くだけ。


 容姿もほぼ変わってない。

上級貴族の令嬢としては珍しくショートカット。

灰色に近い銀髪。

十四才の女の子にしては高い身長。

スラリとした長い手足。

鍛えてるだけあって全身は引き締まってる。


 だが無口。

もう少し愛想が良ければ、周りの男子が放っておかないような美少女だと思う。


「ええっと…な、何か御用ですか?」


「……」コックリ


「はぁ…前から闘技場に来る度に感じてた視線はユフィールさんですか?」


「……」コックリ


「そうですか。それで、用とは?」


「……」


「……あの?」


「……」


「しゃべれーい!」


 ボクより先にアイシスさんがキレた。

いや、何も怒鳴らなくても。


「アイシス、どうどう」


「だってさ!用があるから来たんだろうに!なーんで何も話さない!?」


「そうだけど、怒鳴るものじゃないわ。それに相手は公爵令嬢よ。もう少し言葉を選びなさい」


 うん…学院でもアイシスさんみたいに怒鳴った人は居た。

先生とか。翌日にはその先生は姿を消した、とかは無かったから大丈夫だとは思う。


「………ぅ」


「え?もしかして喋りましたか?すみません、もう一度お願いします」


「………とう」


「すみません、もう一度」


「…ま、魔帝、おめでとう…」


 やっとまともに聞こえたセリフは『魔帝、おめでとう』。

魔帝に至った事を祝福してくれているのか。


「ありがとうございます、ユフィールさん」


「…数年ぶりに大声だした」


 いや、ようやくまともに聞こえた声も小声でしたけど?

なんならその呟きの方が滑らかで大声な気がします。


 というか、出会って数年経ちますけど、今初めて声を聞きましたよ。


「えっと…用事は終わりですか?」


「……」ブンブン


 まだ何かあるらしい。何だろう?

学院卒業以来会ってないから、用件が推測出来ない。


「……」キッ


「ん?私?」


 ボクじゃなくてアイシスさんに用件が?

だとして、何故アイシスさんを睨む?


「……」キッ


「え?あたしも?」


「……」キッ


「私もですか」


 アイシスさんだけじゃなく、レティさんとティータさんにも何かあるのか?


 そして何故睨む?


「ん?な、何です?」


「……」


 ユフィールさんが突然、ボクと腕を組んだと思ったらアイシスさん達から距離を取り出した。


 これは…ボクとアイシスさん達を引き離そうとしてる?


「おい、こら。それはなんの真似だ、小娘」


「………しの」


「は?聞こえん!もっとデカい声出せ!」


「ジュンはわたしの。だから、近づかないで」


「「「は?」」」


 …え?何でそうなるの?

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