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289 洞窟にて 1

「行ったぞ、トル!」


「おうさ!」


 唸りを上げて迫り来る岩の()を前に、足を止めたトルステンは構えた大盾を地面に叩きつける。大盾の下に生えたスパイクが、硬いはずの岩の地面に難なく突き刺さった。


物理障壁(フィジカルバリア)!」


 さらに衝撃を防ぐ魔法を上掛けしたトルステンが盾の裏に左肩を当てて踏ん張ったところで、岩の拳が大盾に衝突した。ガガンと岩同士がふつかるような轟音が響き、一撃で許容値を振り切られた物理障壁(フィジカルバリア)が光の粒となって霧散する。


「むうっ!」


 トルステンの全身の筋肉がバヅンと膨らみ、気合いと共に岩の拳を弾き返した。恐らく発声器官を持たないゴーレム――バルトたちが付けた仮称である――は、代わりに軋みを上げて仰け反り、ほんのわずかの間硬直する。


氷棺(アイスコフィン)


 そこへ向けてサンドラの魔法が飛ぶ。しかし、本来なら全身を氷漬けにするはずのその魔法は、ゴーレムの巨体故にその全てを覆うには至らなかった。それでも下半身を固められたゴーレムはその場に縫い止められる。


「畳み掛けるぞ!」


「「「「おう!」」」」


 氷弾(アイスバレット)岩弾(ロックバレット)といった、物をぶつける系統の魔法が、カリーネ、ミカエラ、サンドラから次々と撃ち出される。全身が岩というこの相手には刃物が効きづらい。こうして削ってやる方が効果的なのだ。トルステンは盾を構え直して()を警戒し、バルトは大剣(グレートソード)を振るう機会を窺った。


 ◇


 バルトたち(パーティー)は、もう小一時間このゴーレムと戦っていた。ここは東一号洞窟の奥、途中いくつかあった分岐の内の一つの、恐らくは終点である。


 巨大な鍾乳石が氷柱のように多数垂れ下がる高い天井と、対照的になだらかな床が広がる、大広間のような空間。人が二人並べるかどうかという、そこまでの通路――というか横穴――からこの大広間に出た時、一行は警戒しつつも開放感を味わった。入口に立って見渡した限り、折れて落ちてきた鍾乳石の破片と思われる岩がゴロゴロしている以外には何も無いように見えたのだ。


 しかし、奥を調べようと一同がある程度入り込んだところで、転がっていた多数の岩が動き出したのである。当然、五人は距離を取って何事かと観察する。隣り合っている岩同士はどういう理屈か分からないが繋がっているようで、ズルズルゴトゴトと動く連なりは全部で五列あり、それらはさらに中央の大きな岩で一つに結ばれていた。見た目的に違和感のある表現になるが、岩の触手が五本生えているとも言える。


「岩でできたヒトデみたいだな」


「ああ、オニヒトデってやつか?」


「ひっ!」


 バルトとトルステンの例えにサンドラが短い悲鳴を上げた。サンドラはヒトデやウニやナマコの類が苦手なのである。皆はその様子に笑ったが、のん気にしていられたのはそれが立ち上がる(・・・・・)までだった。岩でできた五本の触手の内の二本で立ったそれは、辛うじて人型に見えなくもない。それがバルトたちの方へ向かってきたのである。


 ゴーレムという仮称――岩ヒトデという名前はサンドラに却下された――を与えられたそれは、腕に当たる部分を振り上げてバルトたちの方へ振り下ろした。繋がっている岩は小さい物でもバルトの頭よりは大きく、立ち上がったゴーレムの身長は頭部分も細長いとはいえ、トルステンの倍以上ある。そんなものの一撃を喰らえばただでは済まない。


 最初の攻撃を避けた一行は、結局このゴーレムと戦う事を選んだ。逃げてしまってもいけなくはないのだが、それでは探検者(エクスプローラー)としての務めを果たし切ることにならない。最低限、「勝てる相手かどうか」くらいは見極めねば後々困ることになるだろう。幸い移動速度はそれほど速くないようなので、いざとなれば逃げる選択肢も選べそうだった。


 ◇


 もう何度か氷棺(アイスコフィン)を喰らっているゴーレムはさすがに学習したのか、まずは自分の足を止める氷を殴り始めた。しかし、それを待っていたバルトが大剣(グレートソード)を振りかぶって突撃する。とは言え、マリコに託されたこの大剣(グレートソード)にも、さすがに岩をスパスパ切るのは荷が重い。狙いは岩と岩との繋ぎ目である。


 このゴーレムの岩同士は魔法的な何かで繋がっているらしい。この継ぎ目を断ち切ると、そこから先がバラけてただの岩に戻るようなのだ。これはこちらがこの戦いの中で学んだ事である。たまたま継ぎ目に入ったバルトの斬撃がゴーレムの足を断ち切ったのだった。もっともこの時は、足を断たれたゴーレムは「別の触手を使って立つようになる」ということも分かったのだが。


「うらあっ!」


 渾身の一撃が、見事ゴーレムの腕を付け根近くから切り落とす。普通、こうした魔法的な相手を斬るためには、武器の方にも何らかの付与(エンチャント)によって魔力をまとわせる必要があるのだが、元々魔力を帯びたレア素材で作られたマリコの大剣(グレートソード)には不要である。これで残る触手は二本。足になっているものだけだ。


 その後、さらに十数分を掛けてゴーレムは全ての触手を刈り取られた。最後に残った中央の岩を苦労して割ると、中から大量の魔晶の入った核が出てくる。


「相変わらず、洞窟に居る魔物って意味が分からないわね」


 魔晶を回収するミカエラが軽口を叩くのを聞きながら、バルトは顔をしかめてグローブを脱いだ。


「くっ、やっぱりか」


「あっ、その手!」


 左手の中指が途中から千切れていた。二本目の触手を切り落とした際、分解して降り注ぐ岩を受けたのである。傷自体はグローブ越しに治癒(ヒール)で治したものの、これは治癒(ヒール)では治らない。


「それ、大丈夫なのか?」


「帰り道だけなら、多分な。治癒(ヒール)のおかげで痛みはない。万全とは言い難いが一応剣は振れる。こないだの小指と薬指よりはマシだ。それより、早いとこここを出よう。また動き出されても敵わん」


 スライムの例と同様、洞窟内の魔物は時間を置くと復活あるいは増殖している場合がある。神格研究会には「魔物は魔力の溜まるところで自然発生する」という説まであるのだ。さすがにこんな大物が即座に復活するとは思えなかったが、今もう一度戦えと言われると苦戦は避けられまい。


「今回はここまでかな」


 全部とまでは行かなかったが、ここも含めていくつかの道は奥まで確認できた。バルトの言葉に反対意見は出なかった。

「第四章の登場人物等」を作ろうかとも思ったのですが、第四章で登場して名前が出てるのって、エイブラムとブランデイーヌだけなので……(汗)。


誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。

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