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魔法学園の悪役令嬢、破局の未来を知って推し変したら捨てた王子が溺愛に目覚めたようで!?  作者: 朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます!


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4-5

 

 決闘当日。

 学園の訓練場に、大勢の学生が集まっていた。

 

「決闘だって!」

「セレスティンとコレットが戦うんだって」

  

 この学園では、生徒同士の決闘は魔法の実践訓練として日常的に行われており、教授の監督のもとで安全が確保されるのが通例だ。

 

 この日の決闘の立会人は、ペイトリオン・エドナミイル教授。

 最愛のグレイシア姫殿下が救われた後、エドナミイル教授はネクロセフ教授と喧嘩することがなくなった。

 姫殿下を救ったこと、怪しいと思っていた研究が姫殿下を救うためのものだったことで、二人の関係は改善したみたいだ。

 恋心は単純ではないので、たまに切なそうにしていたり、悔しそうにしている時もあるけど――この教授にも新しい出会いがあるといいな……。

 

 訓練場の長椅子(ベンチ)に座って応援する私の膝には、ルナル寮長が座っている。

 隣にはアトレイン様が座り、足元にはシルヴァルス寮長が寝そべっている。

 そして、レイオンが長椅子(ベンチ)の後ろで護衛するように佇んでいる。

 

「ナイトラビット寮の生徒が優秀だと証明してやろう、シルヴァルス」

「楽しみですね、ルナル」 

 

 ほとんどの生徒たちは決闘に注目してるけど、たまにチラチラと「寮長がいる……」と視線を向けてくる生徒もいる。

 そんな訓練場の空気に慣れてきた頃、セレスティンが訓練場の中央に立ち、高らかに宣言した。

 

「コレットは秘話の魔法(シークレットワーズ)を使って気に入らない生徒に暴言を吐いて回ってる! ボクが勝ったら謝罪して、二度と学園内で同じ振る舞いをしないように約束してもらうよ。あと、婚約者のレイオンをあげる」

 

 周囲がざわついた。

 

「何だって?」

秘話の魔法(シークレットワーズ)で暴言?」

「婚約者をあげるって何?」

 

 コレットは訓練場の反対側に立ち、余裕の笑みを浮かべている。

 

「はいはい、わかったわよ。でも、あたしが勝ったら、セレスティンはあたしの言うことを何でも聞くこと。それでいいわね? あと、レイオンはもらうわよ」

「いいよ。ボクが勝っても負けてもレイオンはあげる」

 

 セレスティンが頷く。

 

「それでは――」

 

 ペイトリオン教授が口を開きかけた、その時。

 

「いやいや、待ってください。オレを勝手に譲渡されて黙ってられますか」

 

 夕陽色の髪を揺らし、レイオンが長椅子(ベンチ)の後ろから歩み出た。

 

「オレも参加しますよ。オレが勝ったら、オレが誰の婚約者でいるかはオレしだいです」

「レイオン!?」

 

 私は驚いて声を上げた。

 レイオンがコレットの隣に並ぶ。

 

「2対1か……いいよ。ボクは二人まとめて倒そう」

 

 セレスティンが、少し困ったように呟く。

 ……ポジティブ! でも、待って。

 私は立ち上がって駆け出し、セレスティンの隣に立った。

 

「じゃ、じゃあ私がセレスティンの味方するわ」

「パメラ!」

 

 セレスティンが、驚いた顔で私を見た。

 

「友達でしょ?」

「ありがとうパメラ! 友情パワーで勝とう」

 

「じゃあ、こっちは愛のパワーで勝ちましょうねレイオン様!」

「自分で志願しといてアレですが、なんかおかしなことになったなあ」


 レイオンがコレットに抱き着かれて困り顔になっている。


「あはは……!」

 

 セレスティンと私が笑っていると、アトレイン様がこちらへと歩いてきた。

 大きな白銀の狼シルヴァルス寮長を連れている姿は貫禄みたいなものを感じさせて、注目を集めている。


「アトレイン様……?」

「セレスティン。ちょっと」

  

 アトレイン様はセレスティンの肩をぽんと掴み、木陰に引っ張って行った。


 何だろう? 内緒話?


 待つこと、3分。


 内緒話が終わったセレスティンはなぜか長椅子(ベンチ)に座り、私の隣にはアトレイン様が並んだ。

 ざわざわとする周囲を見渡し、彼は堂々と宣言した。

 

「セレスティンの代わりに俺が戦うことにした。なぜなら、パメラのパートナーは俺だからだ」


 きっぱりと言う声に、周囲からヒソヒソという囁き声が聞こえる。


「惚気だ」

「独占欲ね……!」

 

 なんか恥ずかしい。

 困惑していると、アトレイン様と目が合った。


「前から思ってたが、パメラはコレットが気に入っているのか?」 


 なんとなく、乙女ゲームだったらセーブしたくなるような気配がある。

 つまり、返答しだいでコレットの運命が決まりそう。


「アトレイン様。私……」

 

 誰もいない夜。自分の現実から目を逸らしたい時。

 私はずっとコレットという主人公に心を逃していた。

 読者の感覚を理解してもらうのは難しいかもしれないけど、私にとってコレットは他人ではないんだ。

 

「私……実は結構……コレットを友達だと思ってるんですよね」

  

 私が微笑んで言うと、アトレイン様は「そうか」と笑みを返してくれた。

 

「パメラ。俺と一緒に愛の力で勝利しよう」

「えっ、ええ……?」


 なんか、とっても恥ずかしい!

 ぶわっと熱を持った頬を押さえていると、アトレイン様が「可愛い」と呟いた。


 か、可愛いって……!


「決闘前にいちゃいちゃしないでくれる!?」


 コレットが吠えてくれて気が楽になる。

 心臓が爆発しそうになっていたから、助かった。

 

「なんでアトレイン殿下とパメラペアが相手になったのかよくわからないけど、まあいいわ。どうせあたしたちが勝つんだから」

 

 強気なコレットが意欲を見せると、経緯を見守っていたペイトリオン教授が「双方が合意したなら、この2対2での決闘にするか」と頷いた。

 

「では、ルールを確認する」

 

 ペイトリオン教授が声を張り上げた。

 

「2対2の団体戦だ。相手チームの両名を戦闘不能にするか、降参させたチームの勝ちとする。結界内での戦いだから、命に関わる怪我はしない。存分に戦いたまえ」

「はい!」

 

 四人が頷く。

 

「それでは――始め!」


 合図により、決闘が始まった。


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