第20話 学園祭
騎士学園は学園祭の真っただ中。
ただ文化系の活動が少ないので見る所はあまりない。
出し物は、剣舞や、馬術や、弓。
まあ、賭け屋がいるのでそれなりには盛り上がったが。
食い物の露店をやっているのは王都の定食屋。
プロの料理人がやっているのでハズレがない。
前世の文化祭なんかだと、メイド喫茶、お化け屋敷、バンドのコンサートなんかは盛況だった。
ネジル教会は脂肪を溶かすエステをやっている。
それと、醤油を使った、みたらし団子と、甘くない磯辺焼き団子。
他には串肉に醤油を塗って焼いたものと、モロコシに醤油をやはり塗って焼いている。
醤油の焦げた匂いは凶悪なので、人が集まる。
もろこしなんかそんなに美味くない。
でも雰囲気で美味く感じるんだよな。
問題発生、ブタキムの親が来るのだ。
別人だとばれたら悪魔付きを疑われる。
処刑一直線だ。
俺は緊張して両親のもとへ出た。
「ブタキム、お前、痩せたか。妻に似て良い男だな」
「まああなた。目元なんかあなたにそっくり」
馬鹿な人達で良かった。
「こっちは、従者のフラッチェとディータです」
「ああ、相変わらず女を侍らしているな。困ったことになったら言いなさい。結婚するまでの男女のゴタゴタは速めに処分するに限る」
赤ん坊が出来たら、殺すつもりだな。
目が語っている。
やっぱりブタキムの親だ。
「はい、その時は自分で何とかしますよ」
ちなみにネジル教徒は邪気で精子を殺せるので、避妊はばっちりだ。
他の教会に知られたら、罵詈雑言の嵐だろうな。
避妊が罪なんだよな。
「ところで、お前がやっているネジル教会は儲かっているのか」
ブタキムの記憶では、王命で討伐に行って貰ったお金を寄生虫みたいに吸い取っていたな。
ブタキムが歪んだのもこの親ありきだな。
「俺も、成人ですよ。お金の管理は別々にしましょうよ。他人とまでは言いませんが、独立した男ですから」
「くっ、今まで育ててやった恩を忘れるのか」
「ブタキム、謝りなさい」
ここで退いたらよくない。
ここは突っぱねないと。
「それは今まで渡したお金で十分だと思いますよ」
「誰の入れ知恵だ?」
「誰でもないですよ。当たり前ですよね」
「くっ、勘当してやる。悪かったと頭を下げるまで、家には一歩も入れない」
「ほらブタキム、謝りなさい。今なら取り返しがつきます」
「勘当しても構いません。困りませんから」
「貴族でなくなるのだぞ」
「そんなの今までの功績で名誉男爵ぐらいは軽く貰えます」
「ブタキムが謝るまで許さん」
両親が去って行った。
あんなのこちらから縁切りだ。
「良かったの」
フラッチェが心配そうな顔をする。
ディータはなぜか不思議そう。
「甘い顔をしたらつけあがる。借金で首が回らなくなったら泣きついてくるさ。そうしたら隠居させて爵位を頂く。ディータはどうしたんだ」
「親というものが分かりません」
ディータになんて言おうか迷った。
あんな親要らないと言ったら、ディータは持ってないのに羨ましいとか言われたら、俺が悪い事をした気分になる。
転生のことを言えば、親だけど親じゃないとなるけど、悪魔憑きとばれるのは不味い。
けったくそ悪い。
みたらし団子でも食おう。
小豆があったら餡子が作れたのに。
青い豆の餡子でも代用品にはなるけどな。
みたらし団子美味し。
太っても供与スキルがあるから気兼ねなく食える。
次に磯辺焼き団子を食う。
甘かった口の中が塩気でさっぱりする。
磯辺焼き団子は美味いんだよな。
前世で売っている所は少なかったけど。
なぜか近衛騎士の護衛を引き連れた王様がやってきた。
道の脇に頭を下げて跪いて通り過ぎるのを待つ。
王様の足音は俺の前で止まった。
「さっき、ファットピッグ侯爵に会ったぞ。ブタキムを勘当するようだな。どうだ王族になってみないか」
ファットピッグ侯爵は俺の糞親。
こいつ、ただで俺をこき使うつもりだな。
ネジル教団の財も狙っているのかもな。
「畏れ多くて、お断りいたします」
「ふん、断るか」
「ええ、ネジルの信者と生きたいと思います。彼らは手足なので」
無理難題を言ったらネジル信者が暴れるぞとの脅しだ。
「まあ良い。戯れだ」
王様の足音が去った。
どいつもこいつも油断ならない。
ネジル教団は美味しそうな果実に見えるんだろうな。
15歳の若造が、教祖だものな。
ストレスが溜まった気がする。
部屋に戻りディータとフラッチェに魔力棒を与える。
さいきん二人は流動機能付きの魔力棒に嵌っている。
部屋から嬌声が上がる。
それを聞いていたら何となくストレスが減ったような気がした。
そんな性癖は持ってなかったのに。
ブタキムの記憶を受け継いで、性格に変化が生じたか。
女の子とセックスする気にはならない。
まだ赤ん坊の世話をするつもりはないからだ。
邪気による避妊はなんか罪悪感がある。
実際にやったわけではないが、人間を殺しているような感じになると思う。
フラッチェとディータが満足した顔で部屋から出て来た。
「良かったか?」
「ええ」
「とっても良かったです」
「二人にはこれからも楽しい思いをいっぱいさせてやるよ」
「期待してるわ」
「そうですね。楽しいは良い事です」
フラッチェとディータは俺のことをどう思っているか分からないが、俺にとっては二人は家族だ。
俺から離れると決断したなら、その時は快く受け入れよう。
だが、別れても家族だ。
「ふっ」
「なんか気持ち悪い」
「ご主人様、楽しそう」
「親からは勘当されたが、二人は俺の家族だ」
「なに当たり前のことを言っているの」
「はい家族です。家族はなぜか楽しいです」
家族が減って家族ができた。
俺はこの日を忘れない。




