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友情と愛情と。友人と恋人と。  作者: 篠宮 楓


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16/21

その後、――綾

とりあえずここまでは纏まったので、投下します。

香が落ち着くまで(笑)、藪坂と香編はお待ちいただければ嬉しいですm--m

※騒動後一週間後の金曜日の綾です。その文言だけ加筆しました!すみません><

「うわー、性悪が来たよー」


教室に入った途端に囁かれるというよりは普通に言われている状況に、内心苦笑した。

騙していたのはその通り。

上手く誘導すれば自滅するかと思ったのも、その通り。

今思えばくだらない見栄で、差し出したものは大きかったなと思う。


好奇と悪意の入り混じった視線に晒されながら、大教室の一番後ろに座る。

一番前の方に、祥子の後ろ姿が見えた。

いつもと変わらず、背筋の伸びた綺麗な居住まい。

後ろから見ればわかる、その周囲だけ埋まっている席が多い。

その端の方に、ちらちらと祥子を気にしている香が座っている。

その周囲も、席は埋まっていた。

香の周囲にいるのが男ばかりっていうのが、少し呆れるけれど。

藪坂の姿は見えない。


結局は、こういうものなのかもしれない。

懸命に努力して自分を変えられたと思っていたけれど、性根を変えられなかった私はずっと地味子のままだった。

……地味子が悪いんじゃない、その中で卑屈に生きていた自分が悪かった。

変えられたのは見てくれだけ、そんな紛い物の私が上を望み過ぎた結果がこれ。


私の周囲に人がいるわけはなく、唯ひとり、教室の隅で講義を受ける。

あの騒動の翌週、月曜から繰り返されている私の日常。






あの日。

食堂に取り残された私達を待っていたのは、唯々冷たい視線だった。

罵倒された方がまだいい。

何も言われず、唯冷たい視線を向けられるだけ。

私は、何も言わずその中で頭を下げ続けた。


私に、何か言えるだろうか。

原因は藪坂と香だったにしろ、ここでの話し合いを勧め見世物にしたことを暴露された私が、一番立場が悪い。

香は泣き続け、ずっと宥め続けていたはずの藪坂は魂がどっかに行ってしまったかのように呆然と立ち尽くしている。

この中で、何を私がいえばこの場をおさめられるというの。


祥子を連れて行った男が、この三人の中で一番の悪だと決めたのは私。

だからこそ、この場の収拾に私の名前を出した。

その事に、私の中の意地が初めて揺らいだ。

祥子を裏切ったお花畑二人よりも、私が悪い。

その事実を、眼前に突き付けられた。

この二人が一番の悪だと思っていた私こそがそうだったと、そこで初めて気づかされた。










講義終了の鐘に、はっと意識が浮上する。

顔を上げれば、黒板を消す講師の姿。

私の手元には、真っ白なノート。

ため息が、思わずこぼれた。

「何のためにきてるんだか……」

――贖罪のため? そんな御大層なものじゃない。

ただ、……ただ。


祥子と香を視界に入れないように手元の教材をバッグに放り込んで、席を立つ。

私の周囲には、今、誰もいない。

あれから一週間、今までよく話していた人達も敬遠して様子を見てるのがわかる。

――それでもここに来るのは。



してしまったことの責任、……自分がやってしまったことへの責任は取るべきだと思うから。

自分勝手に羨んで、憧れて、妬んだ。

これが取るべき責任のやり方かわからないけど、それ以外にできることはないから。


大教室を後にして、廊下を歩く。

思い出すのは、あの騒動後、初めて祥子に会った時のこと。

許してもらえるとは思っていないし、何より自分が楽になりたいからだろうって思われるかもってそんなことも考えたけど。

それでも謝りたい衝動を抑えきれなくて、祥子を呼び止めて頭を下げた。


”ごめんなさい”

頭を下げた私には、祥子がどんな表情をしていたかわからないけれど。

暫くして、祥子は小さく息を吐いた。

”……頑張って”

ただそれだけ、その一言だけを残して祥子は歩き去った。


無視をすることもできたのに、怒鳴ってもよかったのに。

あんなことがあった後でも、やっぱり祥子は祥子だった。

私が妬んで、……憧れた祥子だった。




後悔しても、もう、遅い。

翔平、意外と役に立ってた……(笑

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