27.待つのは性に合わないので、自ら売り込みに行ってみた。
今回短くてすみません。
「"銀の花びら"ここ、ね」
なかなか小綺麗な外観じゃない? と私は観光気分で建物を見上げる。
ゲームで存在を知ってはいたけれど、実際ここに来たのは初めてだ。
シリル様ルートに行かせないために私が一番避けていたもの。
それは、私が"悪の道"に落ちること。
強引に二人を引き合わせたし、物語はとりあえずシナリオ通り進み始めたはずだけど。
なんだか二人の様子がおかしいし、物語を進めるためにもう一押し欲しい。
シナリオ通りなら待っていれば向こうから来てくれるはず、なんだけど。
「そんなモノ、待ってられませんわ!!」
私は気が短いのだ。
シリル様とクリスティーナのイチャイチャだって本当は見たくない。
というわけで、サクッとくっついてもらって、サクッと断罪されて、サクッとハッピーエンドを迎えてもらうために、サクサク物語を進めるべく黒幕のアジトまで出向くことにした。
「なんか、サクサクいってたら、ミルフィーユが食べたくなって来ちゃったわね」
よし、今日のおやつはミルフィーユに決定!
おやつまでには帰りましょう、というわけでいざ、出陣!
カランっと涼しげな音とともに私はドアを潜る。
外観も小綺麗だったけど、中も意外と普通。
まぁ、表向きは紅茶輸入店って設定だもんね。裏では違法ドラックとか人身売買とかアウトなことやってるけど。
それにしても。
「……悪党のアジトっていうよりも、なんか」
すっごく既視感のある配置。
それに鼻腔をくすぐる香ばしい匂いは明らかに紅茶とは異なる。
そう、あれは確か前世で大変お世話になった……。
「いらっしゃいませー。コーヒーショップ銀の花びらへようこそ」
そう! コーヒー……って、紅茶輸入店なのに!? と一人ツッコミが忙しい私の思考が止まる。
出迎えてくれた店員らしき女の子が纏っていたのはミニスカ+黒ブーツのゴスロリ調メイド服。
天才かっ! ってくらい絶対領域が素晴らしい衣装だし、超わかってる感しかないドストライクで好みの可愛さだけど。
淑女、足出さない。が、絶対正義のこの世界の美的センスとはあまり合わないソレに私は目を瞬かせる。
これは一体どういうこと? とマジマジと彼女の衣装を観察し、下から上に視線を上げていったら黒色の瞳と目が合った。
瞬間、彼女の顔が凍りつく。
「は? えっ!? ええーー? 悪役令嬢リゼット・クランベリーじゃん!! なんで、うちに来るのーー!?」
悪役令嬢。
それもこの世界には存在しない単語。
それを知っている、ということは。
「失礼な、ヒトを指差すんじゃありませんって小さい頃習わなかった?」
シリル様にクリスティーナの特性を明かした時に思っていた"もしも"。
今までの繰り返しの人生でそれっぽい人を見かけたことはなかったけれど。
「はぁ、フラグ回収早すぎでしょ」
"私以外に転生者がいたなら話は別だけど"
「はい? なんの話よ?」
「こっちの話よ、転生者さん」
その"もしも"が現実として私の目の前に存在していた。
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