24.推しの推し事は容赦ない②
「リズ。最近、どうして我儘を言わなくなった?」
ニヤニヤしながらシリル様を愛でていると、シリル様が不服そうにそう言った。
「いや、めちゃくちゃ言ってますよ!?」
私のツッコミに全力で頷くダリウス様。
ちょっと、酷くない!? っと頬を膨らませダリウス様の方を睨みかけたけど、シリル様に顎クイされ強制的に視界からダリウス様を排除される。
「今話してるのは誰だ、リズ」
「シリル様です////」
不機嫌そうなお顔も素敵だわと見惚れる私に、
「気になるならダリウスは外に出す」
とシリル様が静かに告げる。
「いえ、別に。ダリウス様はいいのです」
「鑑賞用という奴か?」
どこで覚えてきた、鑑賞用なんて用語。
と苦笑して、ああ私の影響かと嬉しくなる。
確かに私とシリル様が過ごした時間も、共にいた証もシリル様の中にあって、きっとそれは私がシリル様の側を離れてもなくならない。
「ダリウス様は同志だからですわ。シリル様強火担の」
シリル様大好き同盟だもの、と心の中で付け足す。
「また新しい用語が出てきた」
「ふふ、強火担の意味は」
「いい。自分で考える」
ふっ、と口元に優しげな笑みを浮かべ、ポンポンと私の頭を軽く撫でたシリル様は、
「リズといると"知らないこと"に事欠かないな」
と、どこか上機嫌にそう言う。
「シリル……様?」
「湖の底のあるかないかも分からない貴石が欲しいと強請られた時も、真冬に夏のようなドレスでも寒くないようにしろと言われた時も随分頭を悩ませた」
過去の暴挙を改めて列挙されるとやっちまった感しかない。
「えっと……その節は本当にごめんなさ」
よし、ここは素直に詫びよう! そう思っていた私の言葉は遮られ、
「お前だけだろ。俺を悩ませられるのは。そして、これから先もそうであればと思っている。多分、俺には必要なことだから」
シリル様は優しい口調で願いを口にした。
「……シリル様は振り回されるのがお好き?」
ドMですか!? と真顔で聞き返した私をじっと見たシリル様は、わしゃわしゃと乱暴に撫で私の髪をぐしゃぐしゃにすると、
「リズ。お前も大概失礼だからな」
盛大なため息をついた。
そのタイミングで軽くノックされダリウス様が外に出る。
何かしら、と思っていると。
「シリル様。急遽シリル様に対応していただきたい案件が」
深刻そうな顔をしたダリウス様が戻ってきた。
「ッチ」
盛大な舌打ちをしたシリル様は私を腕から解放する。
「シリル様?」
「今日はここまで、だな。リズはいい子で待ってろ」
「わたくしに"いい子"を求められても」
難しい相談ですわと私は肩を竦める。
なにせ、いい子もいい姉も辞めてしまったし。
なんて思っていると、シリル様の手が伸びてきて私の両頬を包む。
「俺が戻るまで無事でいろ、という意味だ」
何を焼き払っても構わないからと、コツっとおでこを合わせそう囁くシリル様。
「ひゃ、ひゃいっ!」
近い近い近い近い近いっ!
バグったように心臓が跳ねるのを感じながら、まともな返事もできない私。
「あと、絶対コレ外すなよ。何があってもだ」
コレ、と言ってシリル様は私の首にあるペンダントの鎖に触れ、音を鳴らす。
言われなくても、一度も外したことなんてないけれど。
コクコクコクコクと何度も頷く私にふっと笑ったシリル様は、
「いい子だ」
唇のすぐ側の頬に軽いリップ音を立ててキスをした。
「ぴやぁーーーーっ/////」
完全にノックアウトした私を満足気に見下ろして、
「まぁ、仮に"悪い子"だったとしても結果は同じだけどな」
いつもの調子を取り戻したらしいシリル様はそう言って部屋から出て行った。
「シリルさまかっごいぃいい過ぎるぅーーーーっ/////」
一人残された部屋でそう叫んだ私が、シリル様のカッコ良さの前に、はっ! 今日の分の嫌われ行動するの忘れてたと気づき、シリル様バッドエンド回避計画の進捗ダメダメじゃん!? と猛省したのはベッドで眠りにつく直前だった。
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