20.強制力が働かないのなら、力技で軌道修正してみせましょう。
注目度ランキング3位╰(*´︶`*)╯♡
みなさま、本当にありがとうございます!
驚いたような表情を浮かべ、大きなスミレ色の目が瞬いた後、
「はい、承知しました」
淑女らしくふわっと微笑みクリスティーナは快諾した。
「それが、お姉様のお望みであるなら喜んで」
私の理不尽な物言いに文句一つ言わず、ヒロインらしく素直で健気に頷くクリスティーナ。
今までの人生で過ごした彼女との時間が頭を過ぎり、ぐっと言葉に詰まりそうになったけど。
「当たり前でしょ。いいこと? あなたがこれから先わたくしにしていい返事は"YES"のみよ」
素っ気なく、理不尽を押しつけた。
いい姉キャンペーンはもう終わり。
私はゲーム通り、欲望に忠実な悪役令嬢になるのだ。
「はい、お姉様の仰せのままに」
ああ、なんて綺麗なカーテシー。
貴族らしい振る舞いを身につけて、クリスティーナはどんどんヒロインに相応しくなっていく。
そして、いつか彼女はシリル様の隣に立つのだ。
名実共に、シリル様のパートナーとして。
全部私の目論見通りだというのに、私の心はそれを嫌だと叫び出す。
そんな自分を落ち着けるように私は胸元に手をやり、ペンダントに触れる。
シリル様が16歳の誕生日に"いついかなる時も絶対手放すな"とくれた、希少な魔法石のペンダント。前世を思い出した直後の私はそれに誓ったのだ。
絶対にシリル様を幸せにする、と。
「クリス。あなたには、潜入調査を命じます。物理攻撃はともかく、魔法が介在する攻撃はあなたには効かない。これを活かさない手はないでしょう」
嫌なんて言わせない、と燃えるような紅い瞳でクリスティーナを見遣る。
ヒロインなんて、めちゃくちゃにしてやりたい。
この衝動のままに生きれば、私が"悪"に染まるのなんて、時間の問題だ。
「というわけで、シリル様。クリスはわたくしの忠実な配下に加わりましたので、今後は手足のようにお使いください」
ドヤッとふんぞり返り、私はシリル様にそう告げる。
シリル様の目の前で堂々と異母妹をいびり、横柄に接したのだ。ここ2年の吹けば飛ぶような私の猫被りなんて、あっという間に上書きされる事だろう。
「わたくしは別ルートで事件を探ります」
「……リズ」
「なので、くれぐれも! くれぐれも、クリスのことを頼みましたよ?」
ゲーム通り2人で行動しろよ! という念をを込めて"くれぐれも"を強調し、シリル様の言葉を遮ってヒロインを押し付けた私は、
「では、ご機嫌よう。さようなら!」
脱兎、という言葉がピッタリな速度で即逃げした。
だって、このままシリル様を相手にしたら負け筋しか見えないんだもの。
数々のやらかしとともに護衛を撒いてきた実績がある私は逃げることに関してだけは自信がある。
というわけで、全力で校舎を駆け抜けて、馬車に乗り込んだ。
「……これで、きっとうまくいく」
追っ手がいないことを確認し、ようやく力が抜けた私は願うようにそうつぶやく。
強引だけど、でもこれでゲームのシナリオ通りの展開だ。
今頃2人はきっとこれからについて話しつつ、運命とやらを感じているのだろう。
あとは嫉妬に狂った私が悪の手先からの勧誘を受ければいいはず。
「こんなに繰り返さなくても、クリアなんて簡単な事だったのよ。最初から」
私が欲を出したりせず、初めから悪役令嬢として素直に生きていれば良かっただけ。
私は所詮このゲームのキャラクターを輝かせる脇役でしかないのだから。
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