18.推しの近くに公式ヒロインの配置を試みる。
放課後。
「……リズ、これは一体どういう事だ」
呆れ顔でため息を吐くシリル様もカッコいいなと見惚れながら、
「どうもこうも、協力しろとおっしゃったのはシリル様ではございませんか」
なので連れて来ました! とドヤ顔で私はヒロイン、つまりクリスティーナをシリル様に紹介した。
『リズ以外いらない』
そう言われて昨日は浮かれていたけれど。
シリル様ハッピーエンド計画の進捗的にはダメダメじゃん!? という事実に気がついた。
本来なら婚約者との仲が良いって非常に良い事なんだろうけど、私と結ばれたらまたシリル様が不幸になってしまう。
クリスティーナの登校初日、調査に来たシリル様はクリスティーナをスルーするし、翌日には自分の正体を明かしてしまった。
スタート時点ですでにゲーム本家と違う事が起きている。
この現象について自分なりに考察した結果。
『はっ! 原因、わたくしでは?』
という結論に至った。
繰り返しの人生の起点はクリスティーナが公爵家に来る日だけど、私が前世の記憶を取り戻したのはそれよりさらに2年前、高等部に上がった16歳の時だった。
だからこそクリスティーナが来るまでに色々準備ができたし、いい子キャンペーン実施中だったんだけど。
繰り返しの起点がクリスティーナの来る日じゃ、準備期間2年はなかったことにできないのよね。
この2年で私の悪評が全て消えたわけではないけれど、多少なりと評価されはじめた時期でもあった。
シリル様を煩わせず、周りを振り回さず、前向きに頑張る品行方正な婚約者を評価し、私を王太子妃にと望んでくださる今があるなら、きっと下心満載で改心した私より地でいい子をいくヒロインの方がいいに決まってる。
というわけで、ストレートにヒロインをシリル様にぶつけてみることにした。
「ええっと、お姉様。私、お邪魔なんじゃ」
私の"ついてらっしゃい"になんの疑いもなくノコノコついて来たクリスティーナ。
私が言うのもなんだけど、クリスティーナはもう少し私の事を疑った方がいいと思う。
って、それ昨日私がシリル様に言われたような……。
ま、いっか! と自分のことは綺麗に棚上げし、
「邪魔なんて、そんな事ないわ。クリスをどうしてもシリル様に紹介したくて呼んだのだから」
戸惑うクリスティーナの両肩を抱く。
「まぁ、座ってちょうだい。見てもらった方が早いから」
そう言って私が勧めた椅子にクリスティーナが座ろうとした時だった。
「それは、リゼット専用だ」
止めに入ったシリル様に、
「ああ、なるほど! だからこんなに素敵な椅子なのですね。まるでお姉様のお部屋のお椅子みたいです」
パチンと両手を叩いたクリスティーナが無邪気にそう言った。
二三度蒼の瞳を瞬かせたシリル様は、
「リズ。お前が妹を保護していた理由はコレか」
淡々とした口調で私に事実確認を行う。
「察しが良くて助かります。クリスティーナには魔法が一切効かないのです。ちなみに、クリスはシリル様が来られた初日もシリル様自身が見えていたようですわ」
たったコレだけでクリスティーナの特性"魔法の無効化"を見抜くなんて、さすがシリル様。
頭の回転が桁違いと内心でシリル様を褒め称えながら、これならすぐにゲーム通りの展開に戻せるかもと期待してクリスティーナを売り込む。
「つまり、シリル様に気づいたのは私ではなく」
「いや、リズの方が早かったろ。ガッツリ目が合ったし」
が、秒っていうか食い気味にフラグがへし折られた。
シリル様、本当に容赦ない。
でもそんなところがむしろいい、とぐっと拳を握りしめ悶える私。
「で、リズ。お前はコレをいつから知ってたんだ?」
こんな私の奇行なんて全く気にしないシリル様はやや引き気味なクリスティーナをスルーしてそのまま話を進めた。
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