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14/33

14.推しからの命令はハイかYESか喜んで。

 すっかりシリル様のペースだわ、と頬を膨らませつつ私は大人しくお茶を飲む。


「美味しい」


 ふわっとした爽やかな香りが口いっぱいに広がって、さっきまでの苦い気持ちが洗い流されていく。


「当然だ。俺を誰だと思っている」


 自分の分のコーヒーを飲みながら、シリル様は当たり前にそう言い放つ。

 普通の人間が言ったら痛い奴認定されるセリフも、シリル様がいうとかっこよく聞こえるから不思議だ。

 窓から入る日の光がシリル様のプラチナブロンドの髪をさらに輝かせ、キラキラと光る。初めてシリル様にお会いした日の事を思い出す。

 私が見つけた一番星。私はあの時身の程知らずにも心の底から思ったのだ。

 この人が欲しい、と。


「……何だ、じっと見て」


「いえ。ただすごく……好……っゴホッ……なんでもありませんわ。今日はいい天気だなって思っただけで!!」


 はっ、として私は慌てて言葉を飲み込む。

 だから、やたらめったら好きって言ったらダメなの! と私はブンブン首を振る。

 これから先、シリル様の隣にはクリスティーナが座る。

 それがシリル様の幸せなら、私は……。


「……ッチ。素直に言えばいいのに」


「へっ?」


 ぼそっとシリル様が不機嫌そうに何かを言ったけれど聞き取れず、またシリル様の気分を害してしまった事だけは分かった。

 シリル様はそれ以上何も言わず、じーっと私の方を見る。

 圧が強い。

 沈黙が重い。

 いつもなら全然気にならないけど、できるなら今すぐ逃げ出したいっ。

 そう思って落とした視線の先で、私はもう時間がない事を知る。


「一限目始まっちゃう。早く、もう爆速でサインしちゃって、この話は終わりにしましょう?」

 

 前のめり気味に言った私に、


「そうだな、ではコレにサインを」


 渡されたペンは、昔一度だけ使ったことのある"縛り"の魔法がかけられている王族しか持てない特別なモノ。

 書類にはすでにシリル様の名が刻まれていた。

 私はシリル様が指差した場所に名前を綴る。


「……できました」


 ああ、コレで本当に今日から私は婚約者でなくなったんだ。

 そう思いながら私はシリル様に書類を返す。

 クリスティーナとの婚約を内々に確定させるまでは風除けとして婚約者のフリをした方がいいだろうけど、どうやってクリスティーナをシリル様に近づけよう?

 何故かゲームとは違いシリル様が正体を早々に明かしてしまったから、このままではこっそり潜入調査に入ってるシリル様にヒロインが協力するという流れが成立しない。

 うーん、でもクリスティーナにシリル様を攻略してもらわないとシリル様の幸せが……。


「……リズ、聞いてるのか?」


 これから先の展開に思いを馳せていた私の思考は、シリル様の呼びかけで止まる。


「へっ? ああ、あのクリスティーナは」


「何故ここでお前の異母妹の名が出てくる」


「何故、って」


 だって彼女はヒロインなので、とは言えず不機嫌そうに眉を寄せたシリル様を見返す。


「聞いてなかったな。早速だが、今日から始めるといったんだ」


「あのぅ、シリル様。わたくし、話が全く見えないのですけれど」


 はい? 

 始める、って何を?

 と疑問符いっぱいの私に、


「だから、調査だ。何故か学園の生徒が消えている。この現象には、おそらく禁術魔法が絡んでる。だから秘密裏に処理する必要があるんだ。俺は教師側からお前は生徒側から探れ」


 とシリル様はゲームと同じ内容を私に告げた。


「は? へっ!? はいいいーーー?? なん、え、えっ!? 一体何を言ってらっしゃるの?」


「いや、驚き過ぎだろ」


 いや。

 いやいやいやいやいや。

 動揺するな、って方が無理じゃない!?

 だってそれヒロインが言われるセリフだし。


「そもそも、コレはリズが持ち込んだ案件だろうが」


 シリル様が私の目の前に放り投げたのは、シリル様を学園に呼び出すために私が仕込んだ真っ白な封筒(情報提供書)

 差出人は書いてないし、代筆した人物だって公爵家とは無関係の人間を雇ったのに。


「何でわたくしってバレてるのですか!?」


 ガタッと立ち上がり、嘘でしょー!? と叫ぶ私に、


「逆何で気づかないと思うんだよ、お前もダリウスも」


 シリル様はさらっとトドメを刺しに来る。

 ハッタリでもなんでもなく、私の仕業だとシリル様にバレていたらしい事を知った。

 マズイ、とにかくこの流れはマズイ!!

 ドンドン原作から離れてるじゃないかと焦る私は、


「ですが、私がシリル様と一緒にいる理由はもうありませんわ! 先程サインをして婚約も解消しましたし」


 何とか軌道修正を試みる。

 だが。


「お前こそ何を言っている」


 コトッとカップを机に置いたシリル様は、


「コレは調査協力とそれについての守秘義務を科した誓約書だぞ?」


 先程私のサインした書類を見せる。

 引ったくるように取り上げた書類に目を通せば、シリル様のいう内容ですでに誓約魔法が成立した証が浮かんでいた。

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