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第2章「はきだめ」 8-4 レベル1から2へ移行

 ストラが一瞬、遅れて超高速行動ハイ・マニューバに突入したが、その一瞬でもうエーンベルークンがストラの間合いにいる。普通、この近距離で超高速行動ハイ・マニューバには突入しない。衝撃波が土埃を強制的に巻き上げ、トンネルを造った。


 「……!!」


 シンバルベリルから異様な勢いで高濃度魔力が供給され、それをエーンベルークンが火力に転換。ストラが防御行動に入る前に、最至近で爆炎が弾けた。


 直下型地震が起き、ギュムンデの街が揺れた。地震など数百年に一回起きるかどうかという土地だ。人々は仰天し、昼間に寝ていたが飛び起きた。


 さらに揺れは続く。


 エーンベルークンは間髪入れず、爆炎弾の魔法を三連発で放ち、連続して地下工事の発破をかけたようになって、ドシャドシャと地盤が崩れる。ターリーンが三等分していた地下施設のうち、最も手前にあったレーハーが使用していた部分が崩落。保管していた金銀財宝が、完全に埋まってしまった。


 エーンベルークンの手は緩まぬ。


 腰の後ろに回している特殊小剣を再び抜きはらうと、逆手のままストラへ切りかかった。その刃が、魔力を吸収してビームサーベルのように青白く光っている。


 (未知の合金……解析不能……!)


 ゲーデル山岳エルフ特製の、グレーン鋼だ。魔力を吸収し、破壊力が数十倍増する。


 エーンベルークンが右逆手持ちのまま一足跳びにストラへ迫ったが、その速度も高速化魔法により異様な速さだった。ストラが超高速行動ハイ・マニューバ状態のまま腰の光子剣アンセルムを抜きはらい、小剣を持つエーンベルークンの右手首に合わせる。が、瞬時にエーンベルークンが手の角度を変え、刃に刃を合わせた。光子と魔力が真正面からぶつかり合い、火花と凄まじい空間振動音を発して、両者が衝撃で弾け飛んだ。


 すぐさま体勢を建て直し、再び互いに吶喊とっかん!!

 「ウウウァ!!」

 「イェヤ!」


 立ちこめる爆炎と崩れる土砂の中、唸り声と気合発声が幾重にも響き渡る。互いに高速行動をするたびに、光子と魔力が土埃を含む黒煙に反応して、薄明かりの中で独特の火花を散らし、光の軌跡を描いた。


 そして、耳をつんざく振動音が地下に轟く。ストラが放つ斬撃に、エーンベルークンが瞬時に逆手を順手に持ち替え、的確に片手持ちの小剣を合わせた。逆に、ストラは長刀の長い間合いを生かして遠間からエーンベルークンの腕や胴を狙う。また剣で剣を受けずに、相手の攻撃を避け、または受けても受け止めたり払ったりはせず、瞬時に受け流す。


 戦い方が違った。


 ストラは原則、武器で武器を狙わないが、エーンベルークンは原則、まず武器で相手の武器を打ち払って隙を作る。


 また、小剣の間合いが近いが手足の長い長身のエーンベルークンと、刀は長いがエーンベルークンよりは小さく手足の短いストラでは、まず間合いの取り合いで接近したり離れたりを延々と繰り返す。


 従って、やはり互いにどうもやりづらい。きりがない。

 このような超絶的高速戦闘となっても、戦いの原則は変わらない。


 「ヌオオっ!!」

 「っつぇい!」


 業を煮やし、エーンベルークンが大きく下がって間合いを取ると同時に腰の後ろに剣を納めた。そして自身も埋まってしまいそうな状況ながら、両手を合わせると、高周波と共に純粋なエネルギーの塊として強大な熱線を前方に押し出した。


 まさに、ストラのプラズマ熱エネルギーと同等だった。


 頑丈なレンガと天然石を使用した分厚い壁をぶち抜き、フィッシャーデアーデや人間の戦争用に魔物を調整培養・調教していたフィッシャルデアの使用部分を直撃。魔物達を押しつぶして高熱で焼き殺しつつ、岩盤も融解しながら貫いて、地下迷宮深部まで爆轟効果が到達した。


 電磁バリアを展開して防御しつつ、押し飛ばされたストラが、土砂に埋没して動けなくなる。


 (この攻撃力……もはや通常生物のものではない……! 高出力生体兵器と認定……自律防衛戦闘レベルを、1から2へ移行……自己判断システム……許可!)


 爆轟により地震と共に地面が陥没し、地上では密集した建物が次々と基礎から崩れて崩壊、地面へ呑みこまれた。もちろん、中にいる人間ごと。


 そこへ、ストラの反撃。

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