表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1268/1287

第18章「あんやく」 2-18 黒竜排除

 1発で出城を木端微塵にした貫通型魔力ミサイルが立て続けに5発、黒竜ゴーダゲドルを襲った。


 対魔法防御も貫いて全て着弾し、黒竜ゴーダゲドルの身体を破壊する。


 黒竜ゴーダゲドルの右腕が肩から吹き飛んで、宙を舞った。岩石や土砂、金属骨、木材、真っ黒い油のようなものをまき散らして、腕が大地に転がった。巨大な竜翼が破けて、勢いよく燃えあがった。


 「さっすがオネランノタル! 攻撃力が段違い!」

 フローゼの表情も明るい。

 「だけど、私だけじゃ倒しきれないよ! 2人とも協力を!」

 フローゼの近くの空中でオネランノタルが叫び、魔力通話でリースヴィル、

 「畏まりました!」

 フローゼも炎刀を構え直して、

 「なんでも指示して!」


 「リースヴィル、あの傷口にありったけの攻撃魔法だ! フローゼは肉薄して魔力の集中する場所へ阻害攻撃を! 魔像シャルプも、魔竜パガンゲドルと同じだよ!」


 魔力と共に全身を流れて油圧ポンプめいて身体を動かしていた重油のような油が不完全燃焼を起こし、猛烈な黒煙が天まで噴きあがっていた。黒竜ゴーダゲドルはガクガクと痙攣しながらも、敵を探してドス黄色い目を動かしていた。


 オネランノタルの額の緋色のシンバルベリルが光ったが、立て続けの大型魔力ミサイルでかなり魔力を消費した。このまま一気に倒すべく、飽和攻撃をやってやれなくはないが、魔力の急激な消費が激しすぎて、オネランノタルの身体にどんな影響があるか分からない。


 ここはやはり、フローゼとリースヴィルの協力が不可欠だ。


 リースヴィルがありったけの魔力を振り絞って、質より量と数十発の火の玉ファイア・ボール黒竜ゴーダゲドルの右半身にできた大きな傷口めがけて放った。いっせいにそれが弾けて連続発破し、失敗して地上で次々に発火した打ち上げ花火のように、巨大な火花が噴きあがった。


 さすがの巨大魔像シャルプが、悲鳴を発した。遮二無二青白い炎を吐きつけたが、見当違いの方向に照射され、立木や地面を燃やすだけに留まった。


 そこにオネランノタルが過重力をかけ、黒竜ゴーダゲドルを荒れ地に押しつける。


 フローゼが回りこんで、猛煙と猛火を発する胴体に近づいた。凄まじい熱と各種の有毒ガスで、我々の特別厳重な消防装備でも近づくのは命懸けという状況だったが、躯体に永久耐火魔術が施され、かつ呼吸を必要としないフローゼは問題ない。


 巨大な胴体の奥に、生物であれば心臓、魔力依存生物(魔物)であれば魔力中枢器官に相当する魔力循環機構があった。似たような機構は、フローゼにも実は存在する。半機械式の魔導機構だが、この巨大黒竜ゴーダゲドル魔像シャルプとフローゼでは、全く異なる装置である。


 製油施設の重油タンク火災めいた猛悪的な黒煙と火炎、そして吹き出し続ける砂まじりの油で真っ黒になりながら、むしろそれらを神刀の炎で清めるように払い、フローゼが突き進んだ。


 「早くしろ、フローゼ!」


 最後の馬鹿力で過重から逃れようとする黒竜ゴーダゲドルを、オネランノタルが必死に抑えつける。


 (魔力を感じる……!)


 轟々たる火炎の燃え盛る音のほかに、低い駆動音が通奏低音のように鳴り響いている。


 やがて、真っ青な光の漏れる、油にまみれた長さが2メートルほどの筒状の装置が、体内からのぞいているのが見えた。


 間違いないだろう。


 フローゼが大上段に刀を振りかぶり、最大出力の魔力阻害効果を刃に乗せて、素振りをするように空を切った。


 数メートルも阻害効果の刃が飛んで、装置に突き刺さった。

 物理的な破壊は起こらなかったが、内部で重要な魔術的機構が破壊された。

 たちまち魔力が寸断され、青白い光が消失。


 全身を流れる魔力が止まり、魔像シャルプもその眼の光が消え失せ、まさに機械がそのまま止まるように固まって動かなくなった。


 「やったか……?」


 燃え盛る轟音だけが荒野に響き、その煙をかき分けて真っ黒のフローゼが転がり出る。


 「フローゼ様!」


 リースヴィルが駆け寄り、清浄魔術でフローゼを洗浄。煤だらけの油まみれだったフローゼ、一瞬で元に戻った。


 「なんとか、やったようだね!」

 オネランノタルも過重を解除し、2人と合流した。フローゼが、

 「ほかの中継地点は?」

 「おそらく、ストラ氏がうまくやってくれたはずだよ」

 「なんとかなったみたいね」


 ところが……。

 また小さな銀円盤が出現し、ストラの声。

 「3人とも、いますぐ王都へ戻ってください」

 「どうしたんだ、ストラ氏! 失敗したのかい!?」

 俄かに緊迫感が高まり、オネランノタルが訪ねた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ