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転生したけど受精卵に負けてしまいました  作者: 鴉野 兄貴
彼女は普通の乙女で村娘で俺はチート勇者で。でもちょっと違うところは。『生えている』

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村に居ればいいなんて言えない

目が覚めるとお酒がすっかり抜けていました。

素敵な朝です。処でどうして彼方此方おうちの中が荒れているのでしょう。

「ユカ。どうしたの? 」ぶるぶるぶるぶる。どうしてそんなに脅えた瞳で私を見るのですか?! お姉ちゃん泣きますよ?!

おはようございます。ユーナです。汚い話ですが顔中涙や涎でべたべたですね。汗もかいたようで後で水を浴びなくちゃ。

「おはよう。ユーナ。寝坊助さんだね」

洗濯ものを担いでアルダス君とお母さんが帰ってきました。って?

「ちょ?! ちょっとアルダス君?! 見ないでよ!! レディの寝起きを?!」「酔って暴れて妹に脅えられるキミがレディ? 」誰も酔っていませんし暴れても居ません。失礼ですよね。

「昨日は本当に大変だったのよ。アルダス君。『街に行きたいけど村を離れたくない』って」「ふぅん。その日ボクは寝てたからなぁ」

この幼馴染は村一番の古い家にひっそりと一人で暮らしています。

彼は山羊を飼っていて彼の山羊のミルクって本当に美味しいんです。


 そう言えばアルダス君って『ミスリル』と言う姓があるんです。

という事は昔はアルダス君は旅人って事になりますよね。この村の人じゃないのかな。

例えば私が村を出ることになったら『此渓村の』ユーナとか『谷川村の』ユーナとか名乗ることになるはずで『真銀』や『流白銀』とは名乗りません。この村、昔から名前もないし。

「アルダスは私がこーんなちっこいころから面倒を見てくれたよ」ニコニコと笑うのはトゥリお婆ちゃん。ジャックさんも一緒です。おはようございます。って。

私の顔って酷い事になっていますよね。髪もぼさぼさですし。


「ちょっと、私顔も洗っていないんだけど」「お姉ちゃん。桶持ってきた」


「まぁまぁ」「娘の時分を思い出すね」


 お母さんとトゥリお婆ちゃんがあきれ顔をしているのが解ります。

ジャックさんはジャックさんで何か木を彫って食器等を作っている模様。

「アレだな。恋する乙女の自覚がユーナ嬢にも出てきたってことか。アルダスの前だし」「お姉ちゃんがそんなシュショウなこころかげするわけないでしょ」失礼ですよ。妹よ。

「だいたい、村を出るならアルダス君と別れるって事でしょ」


 妹は皆が触れないようにしている処に触れるところがあります。

凍り付く私に妹が追撃をかけます。「お姉ちゃん。アルダス君に好きとか言ったことあったっけ? 」ありません。幼馴染ですし結婚するなんて想像もできません。ある意味妹や母より近い人ですし。

でも、私アルダス君の事何も知らないんだよね。

何処から来たのか。どうして私たち家族を守ってくれるのか。どうして私に良くしてくれるのか……ってコレは幼馴染ですから置いておいて。

「アルダス君と結婚するって考えるからアレなんだよ。村に居ればいいじゃない。だいたいアルダス君以外にもお姉ちゃんが良いなって言うヒト多いんだよ? ひぃみぃ……よん? 」妹よ。貴女はいまだに数も数えられないのですか。


 お母さんがいつの間にか焼きたてのパンを用意して、

ジャックさんとトゥリお婆ちゃんがテーブルにつきます。

美味しそうなトーストの香りとトゥリお婆ちゃんの持ってきたヨーグルトと蜜がおいしそうです。

「ボクは村に居れば良いなんていえないな。ユーナの人生だろ。人の命は短いもん」アルダス君とトゥリお婆ちゃんたちを隣の家に送って行く帰りに彼は言います。

「アルダス君は私がいなくなってもいいの」「正直に言うと僕は人間じゃないし」

「なによそれ。街ってニンゲンだらけって言うけど大したことないわよ」

「人間って怖いんだよ。強いとか弱いとかじゃなくて」「どうってことないし。お母さんだってユカだってニンゲンだもん」「解ってないなぁ。この村は特殊なんだよ? 普通って思っているのはキミと他所のセカイ……何でもない」「??? 」

たまにアルダス君ってよくわからないこと言うんだよね。でも胸に引っかかるのです。何故か。

「外の世界を見ること自体は悪い事じゃないんだ。でも君が心配」そっか。心配してくれているんだ。

私たちは歩幅をそろえて歩きます。こういうのって普段していないな。


 ただ歩くだけなら彼の歩幅は短すぎますし、『走れば』彼に敵う者は村にはいませんし。

私はお父さんのポンチョを握りしめて微笑みます。

「お父さんが護ってくれるから、仮に村を出ても大丈夫だよ」「それは手放さないほうがいい」村のヒトはなにも言わないのです。煩いのは彼だけ。

私はおぼろげな記憶に残る父を想い空を見上げます。

人々の魂を天へと導く橋と伝えられる『輪』は昼間でも良く見えます。

あの『輪』を通って人は星になり、遺された人々を見守っているのだと神官さんたちは仰ります。真偽は定かではありませんが。

でも、信じたって罰は当たらないよね。お父さん。

「手、握ろうか」「うん? 」「普通男の子から先に言わない? 」「キミに淑女を求めていないんだけど」「叩くわよ。ちびすけ」「あらあら。この間までオムツを替えられていた小娘が」「言ったな?! 」


「あなた達何しているの」


 お母さんがあきれ顔。

「こいつが悪い」「アルダス君が悪い」

御互いを指さし、泥だらけの顔で悪態をつく私たち。

「今から夫婦喧嘩? お盛んね」お母さんは相手にしてくれませんでした。

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