金色の稲穂
「う~ん。真面目に痛い」「リア充爆発してしまえ」
俺とアルダス君は星明かりと『輪』に照らされ、あぜ道を歩く。
ほのかに花の香りがする。良い季節になってきたな。
「なにそのりあじゅうばくはつって。新しい必殺技? 」「まぁ。永遠に幸せになってくださいという嫉妬マジりな呪いだ」「そっか」
俺はアルダス君を背負って新しく作った『田』の様子を見ている。
「これ、普通の麦の一〇倍育つって言うよね」「知ってるのか。雷電」「雷電って誰? 」いや、真面目に答えられると困る。
星明かりを受け、鏡のように輝くそれはとても美しい。
「あのね。むかーしの知り合いが作ろうとしてたことあるの。この毒草。モミを綺麗に取って炊きこむと凄く美味しいんだけど」「うん」
「手間暇かかりすぎで、あと気候が当時合わなくて失敗して廃れてたね」「ふうん」
今回ウェル様が持ち込んだ種もみはこの村の気候に合っている代物だというが。
「村長が変な花の種を持ち込んだりすると畑に悪影響が出たりするからって反対してたな」「だね。あの人は偉いよ。ちょっとヨパクリだけどね」
俺の背中に捕まったままアルダス君。ちなみにヨパクリとは欲張りを意味する隠語らしい。
「処でさ。アルダス君。キミは本当は何歳なんだい? ユーナの記憶は見ないのがルールなので詳しく俺は知らなんだが」「そういう約束もしたっけ」こら。忘れるな。
「綺麗に育つとな。稲穂が頭を垂れてすっげー綺麗なんだぜ。金色に見えてな」「楽しみだね」
「ユーナって村を出るの? ボクは辞めておいてほしいと思うんだけど」「悩んでいるんだよ。解るだろ」
成績優秀な一五歳の子女は国費を用いて王都の学校で学ぶ。
この時、姓を与えられて村の代表として中央で働くこととなるのだが。
「ユーナを街の連中が受け入れてくれると思わないんだけど」「本人に言えないのが辛いな」「だよねぇ」
俺たちは田を整備しながら帰路についた。




