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異世界ふとん至上主義!  作者: 一人記
第二章

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89/156

第八十七.五話『リングマッチ』

改訂予定のお話です。

全話字下げ後に書き直すのでとりあえず置換。


「ようやく来たか!」


「遅くなってすみません、アンリさん」


 アンリさんが足の筋を伸ばすような準備運動しながら、やって来た私に視線を向けてニヤリと笑った。


その目は獲物を品定めする鷹のように鋭いもので、それを受けて私は思わずたじろいでしまう。


う……怖………………くない!私は全然怖いとか思ってないぞ!


病は気から!心頭滅却すれば火もまた涼し!パッションパッション!


……よし、やれる!


 私は無理矢理心を振るいたたせて、木剣を肩に担いでいるアンリさんの目を見つめて……


───そのままゆっくりと槍を構えた。


「うん!どうやら心の準備もできたみたいだな!」


「はい、今回は負けませんよ?」


 ここ三日間負けっぱなしだからな。

アンリさん、見た目通りの馬鹿力で結構強いのだよ。


しかし……こんなことでは『灯火の剣』の冒険者仲間たちに顔向け出来ないし、そろそろ一勝ぐらいはしたいものだ。


「そうかそうか……

じゃっ、いつも通りやろうぜーーーーーーーーッ!」


「ッ……来る!」


 思考を切りかえて、身を小さく屈め回避する構えをとる。


そして、振り下ろされた攻撃を、私は"すり抜ける"ように回避した。


「チッ!またそれかよ!めんどくせぇ!」


───ッよし!上手くいった!

 回避の進化スキル『雲逃れ』の効果……


 スキル発動後、スキルレベル秒間だけ攻撃をすり抜けるっていうのも使いこなせるようになってきたな!


私は心の中でガッツポーズをしながら、次の一手を打つために行動を開始する。


「アンリさん、今度はこっちから行きますよ!」


「ははっ、こいやぁ!」


 胸をどんと叩いたアンリさんに向かって、構えていた木槍を振るう。


「ふッ!……はぁっ!」


 頭部へ横凪に振るう上段切りから、勢いを殺さずに足払いへシフト。

それは、今までの私ならば取り回しが上手くできず失敗するであろう動きだったのだが、防衛戦でのカゲロウとの戦いのお陰か、思考にしっかりと体がついてきてくれた。


「よっと!」


……しかしそれでも、上段切りは頭を後ろに下げて避けられ、そのまま足払いの方も、バク転のようにくるりと回って避けられてしまう。


やはり異世界に来てから習いだした私の槍術では、まだまだ強い相手には避けられてしまうようである。要勉強だな……!


「へっ……この程度、避けられないとでも……ッ!?」


だが、私とて冒険者である……!


既に、次の手は打ってあるのだッ!


 アンリさんがバク転回避後に地面に手をついて口を開いた瞬間、地面が突如としてせり上がる!

そして、せりあがった地面はアンリさんの足へと巻きついた!


「くっ……!何だこれ……!」


 これは、アーネさんとの模擬戦で使った、地面に擬態して敵を捕えるふとん技【陥罠(トラップラプス)】……


それに少しばかり改良を加えたものを、槍で攻撃している間に背後へと張らせてもらったのだ!


「よし!【陥罠(トラップラプス)】が発動した!今だッ!」


想像……!


大きく、重く、敵を圧する圧倒的力!


はるか上空から堕ちる、大いなる布団!


「ふとん技【天井布団テンジョウノフトン】」


 私がその言葉を呟いた後、現れた大きな布団が訓練室の天井まで昇っていく。


そして、足を絡めとられているアンリさんの頭上へと至った。


「え、ちょっお前、それヤバいって!」


 そう言って、青い顔をするアンリさん。


うむ!こんなにも顔を青くしたアンリさんは、ここ三日戦ってきて初めて見るな!


「アンリさん……

天井までの高さは十メートルも無いし、きっと大丈夫ですよ!」


「無理だって!は、早まるなお嬢!……いや、ナガミ!」


「はっはっはっ!今更名前で呼んでも遅いんですよ!」


 私はその様子を見て高笑いしながら、【天井布団テンジョウノフトン】に向けて下にさがるように指を振るった。


そして……


「これは、天罰ですよアンリさん!喰らえぇぇぇぇええッ!」


「ぐわぁあぁぁあぁあッ!?!??!」


 足に巻きついた【陥罠(トラップラプス)】から必死になって逃げ出そうとしているアンリさんの上に、どさどさっ!と重たい布団がのしかかるのだった……


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