表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、悪役騎士団長に転生する。  作者: 酒本アズサ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

237/238

237.

なおタン視点に戻ります。

「一度藍に蘭を探す事を伝えて、手分けして探そう」



「それよりも藍にこの集落の全員を集めさせて、情報を集めた方がいいんじゃないのか。蘭が嘘を吐いて接触している可能性が高いのだろう?」



 蓮の提案に、ジュスタンが待ったをかけた。

 実際、ジュスタンの提案の方が効率はいいもんな。

 みんなで藍の家に向かい、ジュスタンの提案を話すと、藍は拳を震わせる。



「この集落に私を裏切っている者がいると言うのか!?」



「落ち着け、藍。お前を裏切っているのではなく、蘭に騙されている者がいるかもしれないというだけだ」



 藍と蓮の会話を聞いて、シモンは腕を組んで訳知り顔で頷く。



「経験値の少ねぇヤツなら騙されても仕方ねぇよな。『二人だけの秘密』とか、『頼れるのはあなただけ』とか言いながら手ぇ握ったりあの胸(・・・)押し付けられてコロッとさぁ」



「何だシモン、お前の経験則か? よくアルノーに呆れられていたからな」



「……へっ、団長。今の俺はそういう経験を経ているからこそもう騙されたりしないんだぜ?」



 鼻を指で擦りながら照れたように言うシモンだが、胸を張って言う事じゃないと思うぞ?

 見えないとわかっているが、ジトリとした目を向けてしまった。



「ここだけの話や二人だけの秘密は絶対に他のヤツらにも話してるし、オレから聞いた秘密の情報も他所でここだけの話だって話してるって事もわかってるからよ!」



 うん、シモンが相当騙されてきたという事はよくわかった。

 騎士団の極秘情報は話してない事を祈ってやろう。

 俺であっても相当な罰を与えるとは思うけど、今のジュスタンなら命すら危ういもんな。



 そんなシモンの言葉に藍は顔色を変えている。そして藍以外にも……。

 どうして彼がそんな顔をするのかと首を傾げる。



「蓮、話の途中すまない、腹の具合が悪くて……。ちょっと厠に行ってくる、長くなりそうだから外の厠に行くよ」



「ああ、何なら里に戻って休んでいてもいいからな」



「わかった」



 そう言って家から出て行った。

 な~んだ、お腹を壊していたから顔色が悪かったのか。

 ……いやいや、このタイミングでおかしいだろ!

 遠くに行けないけど、家の外くらいなら行けるからな。本当にトイレに向かうのかだけ確認しよう。



 そう思って外に出たが、彼は一目散に木の生い茂る方へと走って行った。

 え? 外の厠って、フリースタイルの事じゃないよな!?

 小さな家にはトイレや風呂がなく、共同で使う風呂とトイレがあるみたいだし!



 という事は他に目的があると考えた方がいいだろう。

 蓮達とは本当に仲がよさそうに見えたし、あれが演技とは思えない。

 となると蘭に騙されている内の一人という可能性が高いな。

 これは情報共有した方がよさそうだ。



『ジャンヌ、さっきの彼は蘭と連絡を取ろうとしているかもしれない。厠に行くと言っていたのに、山の中へ向かったからな』



『ほぅ、蘭と通じておるという事か。ならばそれを利用しないという手はなかろう』



 ジャンヌはニヤリと人の悪い笑みを浮かべた。



「先ほど出て行った者は恐らく蘭と通じておる。先に蘭に会って真意を聞こうとしておるのだろう」



「そんな馬鹿な! ()はずっと俺達の仲間だったんだ! あいつが俺達を裏切るなんて事はありえない!」



 ジャンヌの言葉に蓮が即座に反論した。

 気持ちはわかる。何年もどころか、数百年共に過ごしてきた友達だろうし。



「ならばそなたらは信じておればよかろう。ただ、妾は確信しておる。ゆえに数日妾に従ってもらおう。もしも蓮の言うように、あの者が潔白であれば、後日謝罪して笑い話になるだけの事。違うか?」



「……わかった。俺は蕉を信じる」



「私も蘭から蕉の話を聞いた事はないですね。……あ、もしかして情報をくれていたという人物が蕉という事であれば、なくはないのでしょうか」



「情報をくれていた人物?」



 藍の呟きに蓮が反応した。



「ああ、ジュスタンが精米という技術を教えてくれたとか、変わった事があると手紙で知らせてくれていたようです。けれど、どうせ後でも知るような事ばかりでしたから、裏切り者というわけではないでしょう?」



「確かにそれくらいなら……。だが、情報をやり取りしているというのは誰からも報告が上がっていない、という事は内密に情報を渡していた者がいる。しかも精米という新たな技術すら伝えているのなら、教えられた下層の者か……それを伝えに行った蕉だ」



 蓮の言葉に室内が静まり返った。



「フン、では蕉に偽の情報を渡して、それが蘭に伝わるか試してみればいいだけの話だろう。俺の身体を狙っていたのなら、萌が世界樹から記憶を戻す方法を調べて戻ったとでも言ってやれ。俺の滞在場所もな」



 俺が考えていた作戦と同じ事をジュスタンがみんなに話した。

 やっぱり俺とジュスタンは同一人物という事だろうか。

 俺も知識がなくて、ジュスタンみたいな育ち方をしたらグレていたのかもしれないな。

 グレる暇もくれなかった弟達には感謝すべきか。何だかんだ愛情を見せてくれてた可愛い奴らだったし。



 その後、蕉が戻って来るまでの約三十分の間に、偽の情報に対する作戦会議が行われた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ