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俺、悪役騎士団長に転生する。  作者: 酒本アズサ


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233/238

233.

「団長、はい」



 シモンはお弁当が縦長に包まれた風呂敷をジュスタンに差し出す。



「? 何だ。どうして俺に渡す」



「あ、そっか。俺の分の魔法鞄はマリウスが香辛料をできるだけ買おうって言って、あいつらに預けたんだよ。団長が俺の分の荷物を預かってくれるって言うから」



 ラフィオス王国に出る時に、第三騎士団の備品である魔法鞄をジュスタン隊全員に貸与してあったもんな。

 荷物が増える長期遠征の場合は魔法鞄を貸与されるから、ジュスタンは今回もそうだと思っていたのだろう。

 本来なら日用品や着替えを何日分も背嚢に詰めるのはかさばるからと渡された物なのに、国内で手に入りにくい香辛料や調味料をエルドラシアで安く買えるだけ買っていこうという提案に頷いてしまった。



 実際、五人分だったら多いが、シモン一人の荷物が増えたところで、ジュスタンの持つ魔法鞄の容量的に余裕だからな。

 ジュスタンは自分が言った記憶がないものの、シモンが嘘を吐いていないと確信しているせいか、眉間にシワを寄せながらもお弁当を収納した。



 でもシモン、恐らくジュスタンは魔法鞄あるなしに関係なく、シモンに持って行けというつもりだったと思うぞ。

 自分の分もあるし、持たせておいたら機動力が落ちるから仕方なく、ってところか。



「ジュスタン、蘭を見つけたらどうするの? またすぐ逃げちゃうかもしれないよ」



 シモンに肩車されたままのジェスが聞いた。

 


「足の一本でも斬り落として捕まえればいいだろう。口が利ければ問題ないからな」



「うぉぉ、完全に元の団長に戻ってんな……」



 確かにジュスタンはそういう容赦のないキャラだったもんなぁ。

 そういえば、今のジュスタンに両親や騎士団総長、それに先代の団長や神殿長まで気にかけてくれてたって知ったらどんな反応をするんだろう。



 俺の存在をジュスタンに話したら、余計に混乱するよな……。

 もう少し様子を見て、それとなくジャンヌやジェスから話してもらえたらいいんだけど。

 一番いいのは俺とジュスタンが話せる事なんだよな。

 もしかしたら全力で拒否されるかもしれないけど、今後の事を考えると一番話が早い。相談もできるし。



「すまない、待たせた」



 そう言って現れたのは、蓮、荘、蕉の武装した三人だった。

 懐剣に使われそうな短刀を腰の後ろに、手には最初に俺達を襲撃した、和弓よりひと周り小さい弓と矢筒を装備している。

 それを見て、ジュスタンも魔法鞄の中から自分達の剣を出した。



「シモン、お前も帯剣しておけ。ダークエルフも魔法を使えるのだろう? この剣なら人族より強力な攻撃魔法であろうとも斬れるはずだ」



「そんな芸当できるのは団長くらいのものだと思うぜ? けどまぁ、手ぶらで行くわけにもいかないからな」



 そんな事を言いながら受け取っているが、俺も今のシモンの腕ならできると思う。

 きっとジュスタンも手合わせして、シモンにそれだけの実力があると思ったんだろうな。

 小説を読んでいた時は、ただの嫌なキャラだと思っていたけど、不遇で可哀想なキャラだと認識が変わった。

 アリアといい、やっぱり神託の同族って、闇落ちする不遇キャラの事だと思う。



 現状で闇落ちしそうな奴って誰だろう。

 立ち位置的に萌というのもありそうだし、蘭はすでに闇落ちしているとも言える。

 蘭に裏切られた藍もありそうだけど、蓮も仲間が死んだりしたら闇落ちしそうだしなぁ。

 意表をついて萌が死んだ場合、茅が闇堕ちというのもあるかも。

 ……ダメだ、選択肢が多くて予想できない。



「しかし、こんなに頻繁に黒狼の集落に行くなんて、少し前までは考えられなかったな」



「へぇ、どれくらい通ってるんだ?」



 蓮のぼやきのような独り言に、シモンが反応する。



「二日連続で行くなんて初めてだ。これまでは黒狼の連中がこちらに月に一度来るだけで、転移魔法陣設置の時以外は我々が行く事などなかったからな」



「へ? たった二回で頻繁って言ってんのか?」



「ふふっ、シモンよ。こやつらの言うておるのは、回数の問題ではなく連日という意味であろう。シモンが一日と感じる時間が、エルフであれば一時間のようなもの。感覚の違いというやつよ」



「へぇ~、そんなに時間の感覚が違うのかぁ」



 ジャンヌの説明に、シモンだけじゃなく俺も同じ感想を持った。

 顔に出していないけど、ジュスタンも同じだと思う。

 何となく性格は違うけど、基本的な考え方は結構似ている気がするんだ。



「それじゃあ転移するから魔法陣に入ってくれ」



 黒狼への魔法陣に到着すると、蓮は俺達を促した。

 七人もいると、結構お互いの距離が近いな。

 俺は幽体状態で浮いているので関係ないが。

 戻れないのは困るけど、空を飛ぶ感覚が面白いから、もうしばらくはこのままでもいいかなぁ。



 転移の瞬間、ジェスがジュスタンの手を握った。

 ジュスタンは一瞬驚いたようにジェスを見下ろしたが、笑顔のジェスに、仕方ないと言わんばかりの表情で手を繋いだままだ。

 ジェスからしたら見慣れた俺の姿だし、一応同一人物でもあるから当然の反応だし、それは俺もわかってる。



 けど……弟が他の奴に懐いてるみたいな気持ちになって、モヤモヤしてる自分がいる!

 蘭を捕まえて元に戻す方法を聞き出すのと、萌が世界樹から聞いてくるのが早いかわからないけど、どっちでもいいから早くこの状態を打破しないと!

 この時の俺は、さっきのもうしばらくこのままでもいいという考えなんてどこにも残っていなかった。

ジュスタンタペストリーの締め切りまであと二日!

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https://x.com/kadokawabooks/status/1997229534207213637?s=20


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