表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、悪役騎士団長に転生する。  作者: 酒本アズサ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

232/238

232.

なおタン視点に戻ります

 萌が世界樹に融合した日、シモンに色々聞いたジュスタンの態度は明らかに苛立っていた。

 これまでの自分と全然違う行動をしていた事を聞かされたんだから、その気持ちはわからなくはない。

 しかも一年以上という長い期間だもんな。



 実は俺の方も過去のジュスタンの記憶を思い出せないでいる。

 ジュスタンの身体にいた時に思い返した事は覚えているが、それ以外の過去の事は全くだ。

 俺のジュスタンとしての記憶はこの約一年の事と、小説に書かれていた知識(・・)だけ。

 早く萌が答えを見つけてくれるといいんだけど、昨日の今日じゃまだ無理か。



「チッ、まだ萌は出て来ないのか」



 朝食を済ませたジュスタンが世界樹の前にやって来た。

 昨日と変わらず時々風になびく髪が見えるだけで、何の動きもない。

 ジュスタンが屋敷にいると、この場所まで来れないから、気にしてくれてよかった。



「主殿。萌は数日から、ヘタすれば数週間かかると言っておったであろう。一晩では無理というもの。それより主殿に術を使った蘭を探さぬか?」



「蘭……、あのダークエルフか。だが、この山の中を闇雲に探しても見つからないだろう」



 ジャンヌの意見に難色を示すジュスタン。

 昨日の内にシモンから色々聞いたおかげか、ジュスタンも現在の状況は把握しているようだ。



「昨日結界に反応があったゆえ、気配を探ったら黒狼の集落に戻っているようだったが」



「何だと!? まさか昨日の出来事は、あの藍とかいうエルフも共謀していたんじゃないだろうな!」



「あの落胆を見る限り、それは違うはず。だが、あの者らを丸め込んで再び主殿の身体を狙う可能性はある」



 再び狙われる可能性があると聞いて、ジュスタンは眉間に深いシワを刻んだ。



「ただでさえ妙な状態になっているというのに、これ以上好きにされてたまるか! 捕まえて全て吐かせてやろう」



 そう言ってニヤリと笑ったその顔は、どこからどう見ても悪だくみをしている悪役にしか見えなかった。

 俺ってこんな顔で笑ってたのか、そりゃあ周りの人間がビビるのも納得だ。

 昨夜見た寝顔が一番平和な顔をしていた気がする。



「あ~、こっちにいたのか。団長、茅が出かけるなら昼飯に弁当持たせてくれるって言ってたけど、どうする?」



 シモンがジュスタンとジャンヌを見つけて小走りにやって来た。

 ジェスを肩車した状態で。

 朝食の時に食べて早々ジュスタンが席を外したから、食後に二人で遊んでいたけど飽きたからジュスタンを探しに外に出たってところだろう。



「これから黒狼の集落に戻って蘭を探す。昼食は持って行った方が無難だろうな」



「了解~! じゃあ茅に頼んでくるぜ! 行くぞジェス! しっかり掴まってろよ!」



「うん!」



「おりゃ~!!」



 シモンが走り出すと、ジェスが笑い声を響かせながら屋敷の中へと消えて行った。

 最初は大丈夫か心配だったけど、シモンを同行させて正解だったな。

 もしもいなかったら、この一年の記憶がないジュスタンは今みたいに平静を保てなかっただろう。

 ジュスタンが剣の手入れをしながらシモンを待っていると、蓮が姿を見せた。



「ジュスタン、さっきシモンが言っていたんだが、黒狼の集落へ向かうとか。私も同行しよう」



「必要ない」



「だが、ジュスタンの魔力量では転移魔法陣を使えないだろう?」



「ジャンヌがいる」



 見た感じ、蓮がジュスタンを警戒しているのと同じくらい、ジュスタンも蓮達を警戒しているようだ。

 ジュスタンは元々あまり他人を信用しないキャラクターだったもんな。

 嫌われている事を自覚しているからこそなんだが。

 けど、従魔契約をしているからなのか、ジャンヌとジェスに対する警戒心は感じない。



「主殿、確かに妾でも転移魔法陣を使えるが、蘭が黒狼の集落の誰かの家に隠れていた場合、同じエルフである蓮がいた方が色々と面倒がないと思うが?」



「チッ、仕方ない。同行しても構わん」



 ジャンヌの説得で蓮の同行を許可したが、態度が悪いな。

 俺が戻ってから気まずい思いをするのは勘弁してほしいんだけど。



『ジュスタンはエルフ達が自分の何倍もの年齢だってわかってないんじゃないの!? 見た目のままだと思ってないよな!?』



『ふふ、わかっていても同じ態度を取ると思うがのぅ。下に見られるは我慢ならぬと、全身で主張しておるように見えるが?』



『確かに……、ジュスタンならそう考えるな。これ以上印象を悪くする前に、萌が戻ってくれるといいんだけど』



『それこそ世界樹に聞いてみなければわからぬ事よの、ほほほ』



 幸い、蓮はジュスタンが記憶が消えて苛立っていると思っているせいか、初対面の時より随分ジュスタンに対して寛容になっている。

 初対面で矢を射かけてきた奴と、同一人物とは思えないくらいだ。



『けど、蓮が同行するなら蓮の分のお弁当も茅に頼まなくていいのかな。ジャンヌ、こっちはお弁当を持って行く事を伝えてくれないか』



『あいわかった』



 ジャンヌは自分が食べなくても平気なせいか、食に対して関心が薄い。



「蓮よ、主殿は茅に弁当を用意してもらっておるが、そなたはどうするのだ?」



「それなら私の分も一緒に頼んでこよう。ついでであれば作ってくれるはず。ちょっと待っていてくれ」



 そう言って蓮は屋敷へと向かった。

 数分後、戻って来たシモンから、蓮が茅にもっと早く言えと叱られていた事がリークされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ