電子書籍2巻発売記念SS
書籍化記念SSに引き続き、フィリップの執務室での会話
ローズ学園2年生になったアレン視点です
フィリップとアレンしかでてきません
2巻に関する内容もちょこっと含まれています
「アレンはリリベル嬢と不仲説の噂が立っているのは知っているの?」
書庫の整理をしているところに、机で事務作業をしていたフィリップがそんなことを言ってきた。
場所はフィリップの執務室。
手を止めて視線をそちらに向けると、フィリップは手元の書類から顔を上げてこちらを見ていた。
さてはその作業に飽きてきたな……。
まあそれも仕方のない話だ、とも思う。
かれこれ休憩なしに三時間は同じ作業を繰り返しているのだ。
俺は早くに帰りたかったから、それでも気にせず仕事に没頭していたがフィリップの気分転換に付き合うことにした。
「知っている」
フィリップから視線を外して書庫に向き直りつつそう答える。
この件に関して不本意ではあるが、どうしようもない。
というよりも、噂の原因の大部分を占める本人がそれを言うのか。
俺がリリベルとの時間を作れないのはそもそもフィリップの側近になったからだ。
学園でもフィリップに付き従わないといけないし、夜会でもフィリップの傍にいるのだから。
そのうえ、今はギルバートが留学中とあって書類関係の仕事が減らず休みもままならないのだ。
それでも、誰が何を思おうとも俺がリリベルを大事に想っていることはリリベル本人に伝わっていればいい。
ただ、そう勘違いした奴らのアプローチには辟易しているが……。
「当のリリベル嬢は気づいていなさそうだけれどね」
「ああ。リリベルはそんな噂知らなくていいんだ」
リリベルはいい意味でそういったことには疎いところがある。
ほかに色々な興味があるからだろうな……。
この前も領地でできた新たな果物をうちに持ってきてくれて、それでデザートを作った料理人に可愛い笑顔を向けて。
リリベルが楽しそうに嬉しそうにしてくれるのはいいのだが、そんな可愛い笑顔まで向けなくてよくないか?
いや、感情を素直に表すところはリリベルのいいところだ。
そしてつい最近もアナスタシア嬢といったカフェで食べたケーキが美味しかったと頬を染めて笑って……。
あの笑顔は可愛かった。
だが、できるなら俺がそこに連れて行って好きなだけケーキを食べさせたかった……。
美味しそうに食べる姿も可愛いのだ。
なんならその店ごと買い取るか……?
「お前は本当にリリベル嬢のことになると表情が豊かになるな」
「常々思っているのだが……。リリベルはその存在自体が奇跡なのではないだろうか………」
「…………は?」
「初めて会った時から可愛いと思っていたが、時が経つにつれその気持ちが増していく。常に言葉でも伝えているのだが、それだけでは足りないんだ。可愛すぎて誰にも見せたくない。本音を言えばどこかに閉じ込めて誰にも見られないようにしたいとも思うが、さすがそれではリリベルの笑顔を奪ってしまうだろう」
「あ、ああ……。お前にまだ理性が残っていて良かった……」
フィリップの声が若干上擦っているようにも聞こえるが、気にせず俺は本を片付けながらフィリップにリリベルという奇跡の存在を存分に語った。
そしてそれから数日後、なぜかフィリップから俺に休暇が与えられた。




