第52話 礼なら
三人称です
勇者候補の1人であるエレン・オスタリアは同じく勇者候補のジルベルト・ド・ワーシレリアに、少なからず信頼の情を抱いている。
初日に騒動を起こしはしたものの、それ以降はこれといった問題も起こさず、年下の面倒を見てくれている。強いて言うなら教官への態度が悪いことが挙げられるが、それは致し方ないものなのかもしれない。
何せあの教官なのだ。しかも初日に彼はジルベルトの事を軽んじるような発言をした。それと、教官とジルベルトでは根本的に馬が合わない……ようにも見えるのだ。
そんなクラスメートであるジルベルトは、貴族だ。しかも父親が宰相で――あの悪名高き『闇宰相』なのだとしても――高位の貴族である。公爵という、王族を除けばこの国で最も位が高い家の子息なのである。
エレンから見て貴族とは、我儘が許されて金持ちで社交界によく出ていて噂話の絶えない身分の人達なのだと思っていた。『思っていた』というのは、ジルベルトと接するうちに少し違うようだと思い直したからだ。
ジルベルトは闇宰相である父親が突然いなくなってしまったせいでもともと通っていた学園を辞めて家で勉強するようになった、と聞いた事がある。魔法や剣技の練習、勉強を学園よりも自分に合った方法で、密度を濃くして学ぶためにと。
そんな彼を我儘だとは思わない。学園にいたままなら自由な時間を取れたのに家で勉強できるようにしたことを我儘とは言わない。金持ちなのは事実だが、散財をしているイメージは無い。社交界にもあまり出なかったようだ。社交界にも出ないから噂話に疎い。
悪徳貴族の印象が弱まった事実がそこにあることを、否定できない。いくらエレンがお人好し――とノアによく言われる――であっても、貴族のイメージは良くないものばかりだったのだ。
そんな、エレンの貴族のイメージを変えてくれたジルベルトは、人の事をあまり気にしない人間だと思っていた。それが例え国の英雄だと謳われる革命者様のことであろうとも。
エレンはミリフィアとジルベルトと共に、朝食後にノアの友人だというレイシェイラ・ルティエンスの部屋に行くことになった。
何故そんなことになったのか。レイシェイラは見るからに人見知りをする人間だと分かったのに。
原因は、ダリウスのとある一言にある。
今朝、不思議そうな顔をしながら2階に上がってきて身支度をしていたダリウスは、既に起きていたエレン達に、ただの話題の1つとしてだろう、この一言を言った。
『そーいや仮面の姉ちゃん、革命者様の友達だったんだってー』
これがきっかけとなり、革命者様の話を聞くためにレイシェイラの部屋に行きたいということになったのだ。
最初に騒ぎだしたのはミリフィアで、何でも彼女は昔、革命者様に助けてもらったことがあるらしい。詳しくは説明していなかったが、その時から革命者様のことを尊敬しているとか。
続けて意外なことに、ジルベルトも行きたいと言い出したのだ。聞きたいことがあるから、と。
ダリウスとリマも行きたいと言うかと思ったら、ダリウスは苦笑して『俺は嫌われてるっぽいからいいよー』と断り、リマも『私、怖がられてたから……』と遠慮した。
ルツは本以外には興味を持たない様子で、行かないかと聞いても首を振るだけだった。
強気な性格のミリフィアと人によっては態度の悪いジルベルトの2人では不安なので、エレンはついていくことにした。興味がないわけでもない……むしろ革命者様のことは知りたいので、ちょうどよかったとも言える。
革命者様は凄い人だ。何が凄いって、幼い頃から暗殺者を返り討ちにするほどの実力を持つのもそうだし、国が豊かになるようにと政策をいくつも提出し、実現させたのもそうだ。
魔法の腕もよく、取得属性魔法である3つ――水と雷と治癒――は国でトップの実力を持っていたらしい。3つの取得属性魔法を扱うことと王族特有の容姿から、『雷氷の君』やら『白銀の癒し手』などと呼ばれたと聞く。
決め手は革命者様の最期となる要因の、あの革命だろう。エレンは当時王都にいなかったので詳しいことは人伝でしか聞いたことがないが、大変な騒ぎになったとか。
夜も更けた時間帯、貴族の私兵がさる商人の家に押し入ったことから始まり、どこかから燃え上がる炎、広がる赤に招かれる混乱、そして立ち上がった――アディニス・レイリッジ・レヴェリッジ第1王子殿下。
殿下はその混乱を機に、私腹を肥やす傲慢な貴族連中を、自ら兵を率いて一掃した。魔法を、剣を用いて、傷をつけ傷をつけられながら走り続け、民に重税を強いていた当時の国王の――自分の父の首を取り、そしてこと切れた。走り続けた際に受けた傷が重なり合い重傷となって身体を蝕んだそうだ。
それからは第2王子であったレイモンドが国王となり、荒れた王都を復興させた。生き残った、革命者様派であった貴族を側近にし、毎日を治世のために働いている。
レイモンド陛下が即位された当初は貴族からも平民からも様々な不満が上がった。
貴族からは、革命者様派以外の勢力――中立派と宰相派だ。宰相派と言えど生き残りはいた上、後から裁くには証拠がない貴族達だった。彼らは陛下が革命者様派しか側近にしなかったことを不満に思ったらしいが、そこは権力で黙らせたとか何とか。
平民からは、それまでの生活のままでよかったと言う不満――これは比較的裕福な層からだ。それと、革命の最中に家族を失ったという者達。これは陛下というより革命者様への不満だ。だが死者の家族へ国庫からこれからを補償できる金を出し黙ってもらったとか。
それでも、そんな不満が上がっても、数年もして生活が穏やかになれば――以前より暮らしやすくなれば不満など薄れていき、やがて国王陛下と革命者様を称えるようになる。
革命者様は素敵だ、ありがたいことをしてくださった、国王陛下は賢王であらせられる。それは、以前まで言っていた悪口など記憶から失われたかのように。
――――と、エレンは知り合いから聞いた。知り合いとは近くに住むおっさん――アルドヘルムである。
ちなみにエレンは彼がマレディオーネ監獄の長官であると知らない。当然のことだが。
そしてアルドヘルムから聞いた革命についての情報に嘘も混じってことも、知らない。
朝食後、エレンは2人より先に廊下に出た。理由は何でもない、用を足そうとしたのだ。
すると玄関の扉が開く音がしたのでそちらを振り向くと、朝ダリウスを拾いに行っていつの間にかいなくなってしまったノアがいた。
「あ、教官! どこ行ってたんですか? 朝飯もう食べちゃいました、よ……」
近寄りながら声をかけたエレンに反応することなく横を通りすぎて行ってしまう。
「教官……?」
眉を寄せもう一度呼んでも、彼は反応しない。ゆっくりとした歩みを止めない。
ノアの隣で同じくらいの速さで歩き、その顔色を覗き見る。するとノアの瞳はぼんやりと空をさ迷っているがどこも見ていないと気づき、試しに顔の前でパンッと手を叩いてみる。
しかしやはり何の反応を示すことなく、ノアは前進している。
流石におかしいと判断し、エレンはノアの肩を叩いて何度かその名を呼んだ。
やがて何かを思い出したようにノアの瞳がエレンの顔へ向いた。まるで操られた人形のように、ぎこちない動きだった。
「……あぁ、エレン君。俺は、体調が悪い、ので、少し部屋で、休みます」
妙に途切れ途切れな台詞にエレンの不信感は募る。魔法とは万能に近い。だから、まるで操られた人形のような動きをしていると思ったが、魔法で本当に操られているのでは、と疑ったのだ。
しかし実力だけはあるのであろうノアが、誰かに操られることなど……ないとも言えないが、あるのだろうか、とも思う。
エレンが考えているうちにノアは自身に宛がわれた部屋に戻ってしまったのか、もうそこにはいなかった。
(勇者候補になってこんなすぐに面倒なことなんか起きない……よな? でも一応、エイダ教官には言っておこうか)
ノア教官の様子が変ですと言おうと回れ右するが、勢いよくぶつかってきた人影に小さく呻いた。
「エレン! 早く行くわよ!」
瞳を輝かせ頬を紅潮させる少女……ミリフィアである。彼女の後ろには呆れた顔のジルベルトが立っている。
「ミリフィア……ぶつかる意味なかったよね?」
「し、仕方ないでしょ、楽しみなんだから」
口を尖らせそっぽを向いたミリフィアを宥めているうちに、エレンはノアのことなど忘れてしまったのだった。
「来るな」
部屋のドアを開けた瞬間襲いかかってきた炎の塊に真っ先に気づいたのはジルベルトだった。
彼はドアの前にいたエレンとミリフィアを突き飛ばし床に伏せさせた。
炎の塊は向こう側にぶつかる前に消失したが、部屋の中から放たれる敵意――否、ただただ人を拒否する感情は消えていない。
ジルベルトは舌打ちをし、攻撃を放った本人に向かっていこうとしたが、エレンに「ちょ、待ってジルベルト!」と止められる。
エレンはレイシェイラという人物に1度会っただけ、しかも会ったとも言えないような、少し見ただけなのであるが、彼女が人見知りする人間なのだということはぼんやりと分かっていた。
中腰で、先程よりも警戒しながらエレンは部屋の入り口に立って中に呼び掛ける。
「……ダリウスが、あなたが革命者様のご友人だったって聞いて、それでその、お話を――」
「何だ、英雄譚でも聞きたいのか? あいつがやってきたことを話せと? ……あいつのことを世間がどう言っているかなんて知っている。まことしやかに語られている活躍も、何もかも。でもな、そんなものは殆んどが虚偽だ。世間はこの世界の後ろめたい部分を何も知らずに生きている。知っていたなら、あいつのことを簡単に語れたりなんかしない」
エレンの話を遮って話されたそれらは、苦々しさに満ちていた。
踏み込んではいけない。そう思わされたエレンとミリフィアは黙り込む。特にミリフィアは軽い気持ちで憧れの人について聞こうとしていただけあって、叱られた子供のような顔になった。
3人のうちのただ1人、ジルベルトは決意したように大きく息を吸って、吐いた。
「レイシェイラ・ルティエンス殿。あなたは、あの時の真実を知っているのか」
数秒間、沈黙が返ってきた。やがて疲れたような声が響いた。
「あのさ、ぶっちゃけ君達って何を聞きに来たんだ? あいつって実際はそんなかっこよくないぞ? あぁ、ワーシレリアの子息くんは自分の父親の罪について聞きに来たんだろうね。それしか分かんないや」
かっこよくないと言われミリフィアは目をぱちくりさせ、ジルベルトは神妙な顔になり頷いたのだった。
「入っていいよ。少しでも面倒になったら放り出すけど、それでもいいならな」
3人はそれぞれの顔に様々な表情を浮かべ、部屋に入ったのだった。
部屋はカーテンが閉まっていて薄暗い。そんな場所に白い仮面を着けた女が佇んでいる。
結構……怖いのだ。
小さく声を上げたミリフィアをレイシェイラは仮面の奥の瞳で鬱陶しそうに見つめた。
「言っとくけど、この仮面を外したら絶対に君のためにならないから、外さないよ。どうせ他の奴みたいに……はぁ。ごめん、八つ当たりだったな。何を聞きたいんだっけ?」
自分の発言で部屋が更に暗くなってしまうのが分かったのか、用件を急かした。
その前に、とエレンは口を開く。
「カーテン開けてもいいですか? 俺、暗いの苦手なんで」
「…………………いいよ」
シャッ、と勢いよくカーテンを引くと太陽の明るい光が飛び込んできて、エレンは目を細めた。
レイシェイラは3人に適当に座るよう言い、自身は紅茶を入れ始めた。何だかんだでもてなしているので、こういうところがノアに『分かりにくいツンデレ』と言われる由縁なのである。
紅茶を3人分入れてようやく息をつき、レイシェイラは部屋の端にある椅子に腰かけた。
「さっき、あの小僧から『友達だった』って聞いたと言っていたよな。言ってないんだが。そんなこと」
「「「えっ?」」」
声を綺麗にハモらせたエレン、ミリフィア、ジルベルトに仲いいな君達、と呟いた。
「ボクはあいつに魔法を教えてもらったと漏らしただけだ」
「革命者様から魔法を……! う、羨ましい……!」
「鬼畜だったぞ」
「それでも、革命者様なら……!」
「あれだな、君は典型的な奴だ。あんな英雄譚なんか聞いて憧れちゃったタイプだ」
レイシェイラの冷めた目線にミリフィアは大きく頭を振った。そんなのじゃないと言うように。
「私は、革命者様が革命者様になる5年前に助けてもらったことがあるの! あの時からずっと、あの人は私の憧れだわ」
(その『憧れ』は君の教官をやっていると言ったら、面白い反応をしそうだな)
言わないけど、と心の中で残念がり、舌で唇を湿らせた。普段は接しない子供が3人もいるので心臓がバクバクしているのだ。
「で? その憧れの人について何を聞きたいって? さっきも言ったけど、あいつは実際はそんなにかっこよくない」
「革命者様の好きな食べ物は!?」
「……エレノアの料理」
「革命者様の趣味は!?」
「エレノアといちゃいちゃすること。あとシエラちゃんを甘やかすこと」
「革命者様の休日の過ごされ方は!?」
「さっきのと同じ」
「革命者様はいつもどんなお話を!?」
「嫁の惚け話とシエラちゃん自慢」
「どれくらい愛妻家だったのよ!?」
「国一番じゃないカナー」
興奮して思わず叫んだミリフィアに回答者は遠い目をして片言で答える。
そこで興奮していないジルベルトとエレンが疑問を口にする。
「シエラって誰だ?」
「シエラちゃんって?」
その問いを受け、ミリフィアはハッとしてレイシェイラを見た。誰なのだろう、革命者様が甘やかしていたという、自慢していたというその人物は。
レイシェイラはわざとらしく「えー、どうしよっかなー。言っちゃおうかなー。でもこれ言うとノアに怒られそうだなー」と楽しげに言う。
何故ここで自分達の教官の名が出てくるのか、と生徒3人は首を傾げたが、エレンが思い出したように手を叩いた。
「そういえば、教官は革命者様の友人だったって言ってた!」
「えっ、何よそれ!? あいつって何者なの!?」
「し、知らないから揺さぶらないで……!」
胸ぐらを掴んで前後に揺さぶるミリフィアと揺さぶられるエレンを傍目で見て、レイシェイラは仮面の下で薄い笑みを浮かべた。それは世界に対する嘲笑であり、自嘲でもあった。
だがそんな笑みはすぐに消え、舌に不機嫌な色を乗せ声を発した。
「もういいだろ。詳しいことはノアから聞いてくれ。あいつの方がボクより色んなことを知っている。……ワーシレリアの子息くんはまだ話したいことがあるから、残って」
未だ興奮冷めぬ様子のミリフィアに引っ張られるようにして部屋から出ていくエレンはジルベルトを不安そうに見るが、既に彼はレイシェイラしか意識にない。
結局シエラって誰なんだろうと、疑問は残ったのだった。
「さて、ワーシレリアの子息くん」
「ジルベルトだ。レイシェイラ・ルティエンス殿」
「知っているよ。大嫌いな奴の一人息子だから。
ボクは君の名前を、君が生まれたときから知っている。でも何故それを呼ばないか? それは君がワーシレリアの……あの宰相の子だからさ」
姿勢を正し、真っ直ぐレイシェイラを見つめるジルベルトに、彼女は無感情に言葉を渡していく。
「自覚せねばならないよ、自分があの男の息子なのだと。その血が流れているのだと」
「……ああ」
「……君は、ノアからどこまで聞いたんだ? 何を聞いて、ボクから話を聞きたいと思った?」
「父の犯した罪を。本来なら、してはいけないことを……低俗な、ことを」
「3年前のことについては?」
「殿下は、父が仕向けた兵に妻と仲間を殺され、復讐に父側だった貴族を殺したと」
「君はそれを信じるのか? あいつ、自分が死刑囚だって暴露したみたいじゃないか。そんな犯罪者の言うことを、信じているのか?」
言おうか言わまいか、それとも真実を言おうか偽りを吐こうか……ジルベルトは悩んだ。聞けば、大きな商会の重要人物であるこの女性はあの死刑囚の友人だという。その友人について、下手なことを言わない方がいいのではないか……。
だがレイシェイラにはジルベルトが悩んだ数秒が答えとなった。
「そうだろうね。あいつのことを信じろとは言えない。ボクも最初は……いや、今も疑っているところがある」
驚いたように目を見開くジルベルトに、どうせ見られないが笑みを浮かべる。
「でもあいつは嘘を吐くところを弁えている。安心していいよ、君の父親はアディニスの妻とその娘を殺したと、ボクからも保証する」
さらりと嫌味を込められ身を強張らせるが、『その娘』と言われた時、怪訝に眉を寄せた。
「殿下には、御子がいらっしゃったのか」
「そう。窮屈な思いをさせていると、いつも申し訳なさそうにしていたよ。表に出せば敵に狙われただろうから。公表すればあの子はアディニスの弱味となること確定だったからな」
遠回しに自分の父のことを糾弾され、居心地の悪さに身じろぎした。
「今時の貴族の子は自分の親が何をしていたか知らないんだから笑っちゃうね……君に限らず、だよ。聡明な子がたまに貴族の争いに気づくけど、ほんの数人だ。大部分は温室育ち。親も親で、よくも自分の罪を隠すのにそうも力を使うのかね。もっと違うことに使えばいいのに。
知っているか? 王子派と呼ばれていた貴族は、世界の汚い部分を子供に教えるのを躊躇って何も言わなかった。宰相派と呼ばれていた貴族は自分だけが私腹を肥やそうと1人で悪事に取り組んでいた。
なんて自分勝手なんだろうな。皆、臆病で、狡くて、醜い……」
最後は消えるような声だった。
仮面の女性は俯き、こめかみを指で押さえ、低く囁いた。
「君の父親が犯した罪は大きすぎる。だけど、そいつについていった貴族達にも、罪はあるよ。もっと言ってしまえば、罪がない人なんていない。アディニスだって罪は犯した。それがどうしても、仕方のないものなのだとしても。
罪は誰にでもあるけど、問われるか問われないかはその人の心の在り方による。アディニスは……あの優しすぎる人は、問われない。でもああいうのは自分が自分を責め続ける。
……結局何が言いたいかっていうと、父親みたいなクズにならず、アディニスみたいな優しすぎて弱い人にもならずに、ちゃんと人を思いやれるような大人になれってこと。この世界の綺麗な部分も、汚い部分も見て、それでも全てを受け入れるような大人に。君は他の人にないモノを生まれながら持っているんだから。その力で不幸な人を増やすか幸せな人を増やすかは、君次第だよ」
ひどく陰鬱そうな声音での囁きだったが、ジルベルトは真剣な顔で深く頷いた。
根は素直ないい子なのがジルベルトなのである。
学園が始まった初日、あの二者面談の時に話された数々の真実。何故あの人物が知っているのか、本当に真実なのか、分からないことだらけだった。
しかしレイシェイラ・ルティエンスという人物から話を聞けたことで、信じたくないと思っていた真実を受け入れようと思えた。
ノア・アーカイヤは謎が多い。アディニス殿下と友人だったというのも、謎を深める要因になったに過ぎない。
いつかその謎を暴いてやろうかと思いつつ、ジルベルトはレイシェイラに深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
ただ一言。お礼だけだ。
それだけで感謝の気持ちを伝えるには充分だと思った。
レイシェイラも、ふぅと息を吐き、疲れたように、しかし先程よりよほど明るく、
「礼ならさっきボクが言ったことを実践することで返してくれ」
と、仮面の下で満足げに微笑んだ。
※飛ばしても大丈夫です
えー、今回長かったですね。しかもあまり進んでいないという……進みが遅いのどうにかしたいんですけどね!
ノア「今回俺の出番皆無じゃないですか。しかもレイシェイラに真面目なこと語らせるとか……馬鹿なんですか?」
馬鹿だよ。今更? まぁ私が馬鹿なのはいいとして、ちょっくら説明入れまっす! どこに説明入れればいいか、分からないもので!
ノ「ズバリ、俺が妙な動きをして外から戻ってきたことです」
そう、それ。それやった張本人がしばらく出演予定がないので、私が説明しちゃいます!
簡単に言ってしまえば、
『ニンゲンって道端で固まってる同族を見つけるとちょっかい出すからさー。変なちょっかい出されると夢から覚めちゃうでしょー? だから記憶を探って、固まってても大丈夫な場所に移動させたってわけー! 操るのは得意じゃないけど、上手くいったしいーよねー?』
というわけですよ! ちなみにノアを操った張本人の正体は次回更新で明らかになります! テンプレってるけど発想力がない私は既に自分に絶望してるので責めないでくださいっ!
ノ「こんなアホらしい後書きで申し訳ありません」
申し訳ありませんm(__)m!




