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第36話 お墓参り

 場面が飛び飛びに……。申し訳ありませんm(__)m


 リビングにて、俺はエイダ教官に上目遣いでお願い事をされていた。潤んだ瞳が何となくエロさを醸し出している。

 いやいや、決していかがわしいことをお願いされているのではなく。


「……なので、王都の観光をさせてあげたいのです。でも少しの間、付き添ってもらいたくて……」


「はぁ。別にいいですけど」


 生徒達の中には王都に来るのが初めての子もいるので観光をさせてあげたいと。でも初めてだと迷子になりそうだから、少しの間でいいので付き添ってあげてもらいたいと。

 明日もあるし、少しくらい良いんだけどね……? でも、エイダ教官。


「そんなに怖がられると、逆に嗜虐心が煽られます」


「ひぃうっ!?」


「いえ、やっぱり傷つきます」


 生徒達がいる前でこれって。何のプレイですか? 闇魔法の加減を間違えたかな……。こんなこと、さっきも思った気がするな。


「だったらクリフも連れていっていいよ、ぐしゅっ。ボクは部屋に籠ってるから、ずびっ」


「レイシェイラ……お前……」



 何でまだ泣いているんだ?



 レイシェイラは仮面で顔を隠しながら、ギレンラ家のティッシュを大量に消費している。トイレットペーパーでも使えよ。人様の家のティッシュを使うなんて。

 しかもクリフに隠れながら話すとは。クリフもクリフで、当たり前のような顔しているなよ。


「ティッシュ勿体ねぇ……」


「しょうがないだろ、ぐじゅっ。思い出し泣きだよ!」


「そ、そうか」


 そんなに泣けたのか。やっぱ記憶は見せなければ良かったかな……。


「だから、見せなければ良かったなんて思う゛だよぉおおおおおおおおっ!?」


「分かったから泣くなってば!!」


 泣き虫だ! 今日に限って凄い泣き虫だ! やめてくれ……泣かれ過ぎて居たたまれない……。


 泣き続けるレイシェイラをエイダ教官は気まずそうに見るが、「あ」と呟くと俺に話しかけてきた。


「ノア教官。私、お墓参りに行きたいのです。すぐ行くつもりなのですが、お墓、苦手ではありませんよね?」


「えっと、墓が苦手な人っているんですか……? 墓に行くくらい、大丈夫ですけど」


「良かったです! では早速行きましょう!」


 え、この流れで? 随分早いね? 準備は? あ、俺、貯金卸さないと……。








 現在、12時過ぎ。王城より少し離れた墓場に俺達はいる。エイダ教官の先輩の墓がここにあるそうだ。

 ここに来るまでに、俺は金を預けておいた商会に寄っていって、


『3年も来ないから死んだのかと思ったぞ~』

『いえいえ、生きていますってぇ~』


 などと会話をして、金を半分ほど返してもらった。利子が凄いことになっていた。王子として金を預けていたら、この額は恐らく王家に渡されていたのだろう……。良かった、ノアとして預けておいて。俺まだ生きてる。



 生徒達は学園からそのまま来たのでそれぞれ私服────学園には指定の制服があるが、何故か勇者候補は自由になっている────で、エイダ教官も実家にあった私服に着替えていた。

 俺だけスーツ姿なのが、浮いているみたいで嫌だな……。

 でも私服は全部、王都の外れにあるあの家にあるんだよなぁ……。今どうなっているだろう。あの家は。



 ルツとジルベルトは黙ってついてきていて、エレンとミリフィアとリマはお喋りをしている。何故生徒達も来ているのかと聞かれれば、流れで、としか言いようがない。


 墓場に入って少しして、エイダ教官はダリウスの肩を叩いた。


「ダリウス君、私は貴方の発言は気にしていませんからね?」


「え、うん。……何が?」


「ほら、金曜日の」


「気にすることだったのか? 確かに気分良くはならないもんだったよな。ごめんなさい」


 エイダ教官とダリウスの会話を聞いていて、驚いた。ダリウスが、素直に、普通に謝っている……だと……!?

 そういえば俺を見ても怖がらなくなったし、あの後レイシェイラに何かいいことでも言われたのか?

 成長したんだね。うむ、先生嬉しいよ。



 それからまた少し歩いて、エイダ教官が立ち止まった。左側の墓を腕で示し、「この方です」と一言。俺もその墓を見る。


「な……」


 そこには、エレノア・ジェレマイアと。そう書かれていた。




 直系の王族は、王城のすぐ裏の墓に埋葬される。王妃などは別の場所に埋葬されるのだ。

 だから、王子の妃なだけであったエレノアの墓がどこだか分からなかった。

 でも、こんなところにあったのだ。それは、エイダ教官の先輩だというその人の、墓だった。


 あぁ、良かった。埋葬されていたのか。もしかしたらとは思ったが、良かった。本当に────。







 俺が呆然としている間に、エイダ教官は挨拶を終えていたらしく、いつの間にか俺を訝しげに見ていた。


「ノア教官? 行かないのですか?」


「っ……。すみません。俺も挨拶したいので、少し離れていてもらっていいですか?」


 前にエレンに『王子の友人だった』と言ったことがあるので、今回もそれでいこう。その設定で挨拶するんだ。


「勿論。エレノア先輩も喜ぶと思います」


「え、えぇ」


 理由を聞かれるかと思ったのに、聞かれなかった。楽だからいいけどさ……。



 エイダ教官や生徒達が離れていくのを確認してから、エルの墓の前で座り込む。

 こういう時、元日本人だからか墓に話しかけたくなるな……。いや、そんなのは日本人でも少ないのかな。


「エル……ごめんな、守れなくて……」


 エルが、いつまでも成仏してない訳ないのに。でもこうして話しかけずにいられない。


「たぶん、シエラもここにいるんだろうな……。お前のことは、仲間内だけの秘密だったから……狭苦しい思いをさせただろう。エルと、一緒にいるよね、シエラ……」


 あ、ヤベ。涙出そう。1回泣いた日は駄目だな。しばらく涙腺が弛んでら。

 今泣いたら駄目だ。近くに皆がいるから、見られてしまう。

 よし、今日はもう行こう。後日また改めて1人で来よう。


「じゃあ、また来るからな!」


 せめて笑っておこう。生きている、今のうちに。








 その後、俺達はそこらの飲食店に入って昼食を済ませた。エイダ教官と生徒達の朝食はギレンラ邸で済ませてあったとのこと。え、俺は? 

 あと、食べている途中にクリフがどこからか湧いて出てきた。ついてきていないなと思ったら、途中から合流するつもりだったのか?


 昼食後は、それぞれ王都の地形に詳しい者を1人ずつ交えながら別れて行動することになった。王都に詳しいのは俺、エイダ教官、ジルベルト、ミリフィアだった。

 俺は当然1人として、エイダ教官も意外なことに1人で行動すると。ジルベルトにはルツ。ミリフィアにはエレンとリマ、ダリウスがついていくそうだ。

 クリフはミリフィア班に護衛として着く。男2人よりも子供4人の方が危なっかしいからだろうな。


 生徒達に1人ずつ、多すぎず少なすぎずの小遣いを渡したら驚かれた。自腹を切ったのだが、元王子を舐めるなよ、小さい城が建つぞ。今持ってる金だけで。

 小遣いくらいどうってことないわー! と笑ったら呆れられた。何故だ。

 エレンやダリウス、リマには素直に感謝されながら、俺は目的地に急いだ。


 目的地とは所謂(いわゆる)、スラム街だ。しかし俺が目指しているのはスラム街の奥にある、犯罪に手を染めた者ばかりが訪れる場所だ。

 知る人ぞ知るその場所は、闇街(やみまち)と呼ばれることが多い。闇市に似ているが、少し違う。らしい。

 俺にはどちらも同じに思えるんだが。



 闇街への行き方は簡単だが、人拐いには注意しなくてはいけない。

 たったさっき購入しておいたローブのフードを深く被って顔を隠しながら、俺は闇街へ続く路地裏に入り、身を進ませていった。


 お読みいただきありがとうございますm(__)m


 この1話の登場人物

 ノア・アーカイヤ 主人公。黒髪黒目。復讐しようとしてる。

 取得属性魔法:闇、水、雷


 エイダ・ギレンラ 美女。水色の髪と群青色の瞳。商家の娘。

 取得属性魔法:治癒、火


 リマ・ニフェン 12歳。ピンクゴールドの髪に琥珀色の瞳。気弱な性格。


 ミリフィア・メイデン 16歳。オレンジ色の髪と瞳。正義感が強い。


 ルツ・ディルス 18歳。髪は新緑、瞳は深緑。読書してばかり。普段は無言。


 エレン・オスタリア 17歳。明るい茶髪に蒼い瞳。お人好し。


 ジルベルト・ド・ワーシレリア 17歳。濃い灰色の髪とくすんだ緑の瞳。公爵家嫡男。ノアと対立していた宰相の一人息子。父親の悪事は知らなかったり。


 ダリウス・エゼルレッド 14歳。暗い金髪に黒い瞳。少し成長したかも。


 レイシェイラ・ルティエンス 商人の娘で、本人も一応商人。極度の人見知り。クリフのことが好き。仮面は常時装着。騒がしい。引き籠り。


 クリフ レイシェイラの付き人。相変わらず影が薄い。



 後書きが長くてすみませんm(__)m

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