第32話 伝えよう
パソコンだと1時間で楽々4000文字書ける件についてッ! ちなみにスマホだとのろいので、2000文字書ければ良い方です。
後半シリアス……?
「お前に────娘はやらんッ!!」
なん……だと……!? 生まれて初めてそんなこと言われた……! エルの時は政略結婚だったからな!
えー、レイシェイラのために応接室に来た俺は、エイダママの『婿にしたい!』という叫びによって迎えられ、それを聞いたエイダパパが先程の『娘はやらん』発言。
エイダママ、勘違いされそうなことは言わないでください。あとエイダパパ、あんた声でかすぎ。
別にエイダ教官を嫁にしたいと思っていない俺は、エイダパパの勘違いを丁重に直すことにする。
「申し訳ございませんが、私には心に決めた女性がおります。なのでエイダさんを貰いたいとは思っていません」
「エイダでは不満だと言うのか!」
うわ、面倒くさっ! 親バカだこの人!
エイダパパの外見は青い髪と群青色の瞳……エイダ教官と同じだ。色素は丸っきり父親から継いだと分かる。ただ、ぽちゃっと出た腹がエイダパパの悪いところ……。
さて、話を変えないとな。
「今はそれどころでもないはずですが? レイシェイラの代わりに私が話をしますので、先程までの続きをどうぞ」
レイシェイラの代わりに、の辺りでエイダ両親が目をぱちぱちさせ、クリフを見た。いいのか、という問いかけの意味だな。
クリフは俺をきつく睨み付け、低い声で聞いてきた。
「どういうことだ? お嬢様から、そんなことは聞いていない」
「俺だって乗り気じゃありませんよ。でも泣きつかれたので、仕方なく。あいつが開発した道具のこと教えたのは俺なので、問題はないだろうと」
「教えたのがお前……? そんな、まさか……」
「いえ、そのまさかでして。でも驚くのは後でにしてください。ちゃんと説明するので。今は商談が先です」
今のでクリフは、俺が『アディニス』だと気付いた。レイシェイラに地球の道具を教えたのは『アディニス』だと、知っているのは俺とエルとクリフとレイシェイラしかいないから。
クリフとレイシェイラここにいるし、エルはもう死んでいる。しかも俺は男なのだから、残りのアディニスでしかない。
気付いたからには、ちゃんと協力してもらうからな? レイシェイラが協力するって言ってるだからお前もするよな?
俺はにこーっとクリフに笑いかけ、次にエイダ両親に聖母の如く優しい笑顔を向ける。
「さぁ、商談を再開させましょう」
終わった。ちなみに普通に成功です。
商談が終わった途端に話しかけてくるエイダママに断りを入れ、クリフを引っ張ってレイシェイラが引き籠っていた部屋に上がっていった。
部屋に入ると、再びカーテンのかかった薄暗い空間で、レイシェイラはベッドに寝転がってすやすやと眠っていた。
「レイシェイラ?」
まだ俺を『アディニス』だと信じてくれないクリフが睨みを効かせてくる中で、俺はレイシェイラに寄って軽く体を揺すった。
「ん……」
「起きたか?」
薄目を開けたので肩から手を離すと、逆にその手を掴まれた。そのまま俺の手を自分の頬に当てるように持っていく。すり、と仮面を手に擦られた。
ぎょっとして硬直した。キャラじゃない。レイシェイラのキャラじゃない。ここまであからさまにデレられるのは初めてだ。
「アディニス……生きてる、んだよな。うん、生きてる……。温かいよ……死んだかと思ったのに……。エレノアが死んじゃって、シエラちゃんも死んだって聞いて、君も、死んだんだって……。良かったよ、生きてたんだよな……」
寝惚けてデレてるのか、これは? それともこれやれば俺がドッキリさせられると思ってやってるのか?
そうか、それならもうやめてほしい。
こんな考えが頭の中で回ってるけど、口に出してモノを言うのが今すごい困難なんだ。驚きすぎて。
俺の反応に見かねたクリフが間に入ってくれなかったら、あのまましばらく固まっていただろう。
「お嬢様、起きてください」
「むぅ、アディニス……」
クリフが俺の手を離させてしまったからか、少し不機嫌そうだ。
なぁ、こいつって賑やかなだけで、こんなに子供っぽくなかったよな? 寝惚けって怖い。恐ろしい。
「子供みたいで恐ろしい……」
「だだだだ誰が!? 子供!? どこに!?」
「あ、起きたか」
『子供』って言っただけでここまでビビるか、普通? 過去にどんなことされたんだよ。
文字通り飛び上がって警戒し始めるレイシェイラは、俺とクリフに気付いてきょとんと目を瞬いた。
「クリフにアディニスじゃないか。どうしたんだい? あ、商談は終わったのか?」
「滞りなくな。あと当主だが、怒鳴ってるんじゃなくてあの声の大きさが普通らしい。ビビんなくて大丈夫だぞ」
エイダパパの声は大きくて、大変煩かった。耳が痛くて困った。レイシェイラが怖がるのも無理がない。それほど大きかった。よく商人として生きてるな。相手を怖がらせてどうするんだ。
レイシェイラはエイダパパを思い出しているのか、耳を擦りながら視線をいずこへ迷わせる。
「だ、だって、怖いんだよ。いや、それはもういいから! 違う話をしよう! な!」
話の逸らし方がダイレクトだ。
「ほら、アディニスが生きてるって方が大事だろ!? クリフは聞いたのか? こいつがアディニスで、顔に火傷なんて本当は無かったってこと!」
「まだです」
「よし、じゃあアディニス、話せ! 何でもいいから話せ!」
「何でもいいって、お前なぁ……」
「じゃあ何で教官になったか、とか!!」
最早やけくそになったとしか思えないテンションのレイシェイラに、俺は皮肉っぽく笑った。
本当に気になっていることがあるはずだ。そう、それは例えば────
「それより、クーデターの真実を聞いてみては?」
「よく言ってくれたな、クリフ。まぁ、大方の予想はついているだろうが」
冷静にも、レイシェイラも知りたいであろう質問を、クリフがしてくれた。
クリフはもう、レイシェイラの反応と自身で判断して、俺がアディニスだと信じたようだ。
クーデターの真実。それは俺を含めてほんの数人しか知らない。知っている人物は、クソ神は神なので勿論、監獄のじじいとじじいの信頼が置ける者くらいだろう。
あと────あの宰相は、どうなのだろう。俺が生きていると知っているだろうか。知っていたとしても問題は無いが。俺を殺そうとしてきても返り討ちにすればいいだけのことだ。
他の奴等に俺の生存を知らせようと問題ない。だって、やがて奴等は全員殺すつもりなのだから。
手加減? 情けをかける? そんなことはしない。奴等は俺の大切な人達を殺したんだから、俺が手加減するなんておかしいだろう。思わず笑ってしまうほどに可笑しい。全力で潰されかかったんだ、俺も全力で相手してやろう。
それが礼儀ってものだ。
それだけでなく、奴等はレイシェイラを殺そうとしたことがある。俺とはまだ関わっていなかった過去の話だが、今では友人なのだ。ついでになるが、そちらの復讐もしてやろう。
「なぁ、お前達はあの日、何があったと聞かされている? 世間一般では俺がクーデターを起こして国王が死に、弟が即位したとしか認識されていないんじゃないか?」
「そうだね、そんな感じだよ。ボクらも、あいつ等があの場所へ攻め込み、君側の貴族たちがそれに対抗して、王都全体に被害が出たということしか知らない。実質、本当のことは何も知らないよ」
レイシェイラの言葉にクリフも頷いた。
そうか、何も分かっていなかったか。対抗なんてしていなかった。いや、出来なかったのだ、本当は。
あれが貴族の、権力を持つ者の戦い方だとは分かっていた。それ以外に存在しないことなんて、俺も十分に理解していた……と、思い込んでいた。
本当は、俺は何も分かっていなかった。あんな汚いやり方しか無いのだと……!
俺はソファの肘掛けの部分に浅く腰掛け、手のひらを上に向けて黒い光を灯した。黒いのは、使おうとしているのが闇魔法だからだ。
「2人にあのときの真実を伝える。よく知ってもらいたいから闇魔法で俺の記憶を丸ごと───つまり感情も伝えるが、辛くなったら部屋から出て行け。部屋に出れば魔法は解ける」
2人が頷いたのを確認し、俺は光を部屋に撒いた。光はそのままレイシェイラとクリフの中に入っていく。
2人の目が閉じられた。頭の中のことに集中しているのだろう。外側の感覚もあるはずだから、動こうと思えば動けるだろう。レイシェイラにとっては、この記憶は耐えられない程酷いものだから、動けないと困る。
さぁ、俺のこの醜い感情を受け止められるかな……?
クリフって影薄いですね……。活躍させたいです。
お読みいただきありがとうございますm(__)m
この1話の登場人物
ノア・アーカイヤ 主人公。黒髪黒目。王兄。基本ふざけてる。復讐しようとしている。
レイシェイラ・ルティエンス 商人の娘で、本人も一応商人。極度の人見知り。子供は苦手。弱っていれば平気。クリフのことが好きだが、態度に出ないので本人に気付かれていない。仮面は常時装着。
クリフ レイシェイラの付き人。従者っぽいもの。元々は世間の裏の場所にいたが、幼少児にまだ顔が無事のレイシェイラに表の世界に引っ張られ、今に至る。情報通で、レイシェイラの代わりに何かとやることが多い(主に対人関係
エイダ両親 エイダの両親。ままんはノアを婿に欲しがった。ぱぱんは親バカ。商人夫妻。
次話の投稿はそこまでかからない予定……です! あと2000文字くらいなので!




