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第27話 転移8人分は気持ち悪い

 図書館のパソコンを使ったら、一気に1500文字も書けました……。そのお陰で間に合いました。

 最初ノア、途中からエレン目線です!


 目が覚める。昨日のことを思い出す。そして悶える。

 だぁああああああ、何やってんの俺ぇえええええっ!?


 ダリウスにキレたのはいいよ、あれはしょうがないし、最終的に怒りは抑えたからいいよ!

 でもその後のエレンに絡んじゃったのがぁああああっ!! なんか知らんけど後悔でいっぱいだぁああああっ!


 記憶は曖昧だけど、要らんことまで言ったような気がしてならない。何言ったっけ!?

 そこまで変なことは言ってない……よな? でも何だろうこの悔しさ。

 偶にあるんだよなぁ、こういうこと。主に酔っぱらった次の日とか。そっか、昨日飲んだから悪いのか。


 ……え、エレンは優しいし、いやむしろお人好しだし、俺が何か変なことを言ったのだとしても許してくれるだろう。そういう良い奴だ、うん。

 だから俺は心置きなく王都に行こうじゃないか。折角の土日を無為に過ごすのはよろしくない。


 王都で、商会に預けておいた金を返してもらって、あと必要な物を買って、しばらくぶりの都会を満喫して、あと───墓にでも、行くか……。

 エルの墓はどこにあるだろう。

 俺の嫁、エレノア・ジェレマイア。略してエル。武家の生まれで、俺との婚約が決まった時には家出したというお転婆娘。馬鹿なことばっかりやっていて、短気で、どうしようもなく可愛い奴だった。

 色々あったけど、最後には相思相愛になれた……と、俺は思っている。

 エルとは子供もできたし。クーデターの時に死んでしまったが。


 クーデターと言っても、不本意にそうなってしまったことだ。本当は、俺がもっと注意深くなっていなかったから───





============





「よし、使うか」


 朝の準備を終えた俺が手に持つのは、淡く金色の光を放つ球体。それは使用する者を転移させる力を持つ。

 この世界に存在しているものとは断定できない。だってこれはクソ神から奪っ――――げふんげふん、拝借したものだからな!

 頻繁に使うことはお勧めできない。拝借した直後に、宿舎の部屋まで転移してみたら猛烈な吐き気に襲われてしまった。車酔いなんて比じゃない。あれなら二日酔いの方がましと思えるほどに、気持ち悪くなった。

 よっぽどの時か、こうやって自力で行くのが難しい場所に行くときに使うのだ。


「えーっと、確か場所を言いながら魔力を流せばいいだけだよな……。王都の近くの平原でいいか……」


 確か城壁の近くにあったはずだ、稀に魔物が襲いかかってくる平原。

 いくら転移直後で気持ち悪くても、あれくらいの魔物だったらちょろいもんだろう。

 よし、そこにしよう。それであの商会を探そう。動くのは金が手に戻ってからだ。



 襲いかかってくるはずの気持ち悪さに耐える準備をしていた俺はその時、ドアの向こうの複数の人の気配に気付けなかった。

 だからそいつらが、どんな方法を使ったのか分からないが、部屋に飛び込んできた瞬間には、球体に魔力を流し込んでしまっていた。


 ───バタンッ! バタバタバタッ!

「『ライン平原』へ!」


 気持ち悪さと共に球体の発する光に飲み込まれた俺が最後に見たのは、7人の阿呆共だった。









「とんっでもない阿呆共だな……」


 生徒諸君とエイダ教官がビクッと震えて怯えるのを、霞む視界の中で確認する。泣きたい。

 凄い怖がられていて、昨日キレたのが悪いってわかっているけど、悲しい。


 部屋に飛び込んできた阿呆7人を視認した瞬間には、俺は場所の名前を叫んでいた。当然、7人も俺と一緒に転移された。

 どうやら転移の負担は球体に魔力を流した本人に全て行くらしく、初めての時より気持ち悪い。

 全身が痛いし、それも頭は金槌にでもぶっ叩かれているのかと思うほどガンガンする。胃の物がいつ外に出てもおかしくない。目は霞む。

 転移されて直後の今、俺は体育座りを崩したような座り方で、膝に肘を乗せて、その手で頭を押さえている。


 ああ、外に誰もいないか確認してから転移すればよかった……。朝の7時なんていう非常識な時間に訪ねてくるあいつらもあいつらだけど、確認しない俺も悪かった。

 でも普通は朝の7時なんて時間に人の部屋には来ない。これ常識。

 考え事するだけで頭の痛みが増す。


「いだい……ぎぼびわるい……。疲れた……。もうやだ、引き籠りたい……」


 引き籠り万歳。


「ここじゃ開放的過ぎて引き篭るのに向かないよな……。引き篭りたい……」


 ブツブツと小声で呟く俺を不気味に思ったのだろう、エレン以外は遠ざかっていった。

 俺は襲い来る気持ち悪さを無視しつつ、エイダ教官をじろりと睨んだ。


「……この中で唯一、成人に達している筈のエイダ教官に訊きましょう、何故俺の部屋に特攻してきたのかをォ……」


「ひゃあっ」


「教官……目付きが悪いから、余計に怖いですよ……」


「エレン君よ、俺は今、最高に体調が悪いんです。何せ8人分も転移させたんですから……」


 1人の時の8倍だぞ、8倍! 気持ち悪さは8倍どころか100倍に感じるんだけど!?

 動けない……動いたら最後、吐いてしまう。


「くっそ……あれ?」


 あははは、世界が回り始めたー。天変地異かー?

 ……もう駄目だ。こんな状態で目を開けてたら、精神がイカれる。


 そう思ったので、俺は意識を手放した。








 ~~~~エレン目線~~~~



 苦しそうに喘いでいた教官は、最後にへらっと笑ったかと思うと、横に倒れた。

 エイダ教官が慌てて近寄り、治癒魔法をかける。が、歪む表情は穏やかにならない。

 治癒魔法をかけても無駄だと判断したエイダ教官は立ち上がり、俺達を見渡した。


「全員、いますね?」


 勇者候補7人はこの場にいる。それぞれ戸惑った表情を浮かべているが、それもエイダ教官が次々に出す指示によって薄れていく。


「ここはライン平原で間違いないと私は思っています。ライン平原は王都の隣に位置する平原です。なので、あの城壁の向こうには王都があるのでしょう。

 いきなりこんなところに来てしまって戸惑うのは分かりますが、今は行動を優先します。

 まず、王都に入って宿を探します。宿を見つけ次第部屋を取り、一時待機。ここから学園まで、馬車では1週間以上かかるので、一瞬で移動させたノア教官に話を聞くしかありません。

 ノア教官が起きたら、その指示を仰ぎましょう。ノア教官を運んでくれる人はいませんか?」


「あ、俺、運びます」


「ありがとうございます。では、門までは歩いて20分ほどかかりますので、疲れたら交代しましょう」


 エイダ教官の指示で俺達は動き出す。いきなりこんなところに転移してしまったせいか、あのジルベルトも素直になっている。

 俺はノア教官を背負う。


「って、軽っ……」


 あまりにも軽すぎて、声が零れた。

 身長はあるのにな……。実はけっこう痩せているのか? あ、監獄に入っていたなら、痩せてて当然か。





 その後、エイダ教官がノア教官を背負ってたけど、


「……本当に生きているのでしょうか。実は中身が全部くり貫いてあるのでは……」


 って呟いていた。

 やっぱり軽すぎるんだな。

 お読みいただきありがとうございますm(__)m

 何気にエレンを気に入っている作者……。他の登場人物も、頑張って目立たせます!


 この1話の登場人物

 ノア・アーカイヤ 主人公。ワイン好き。王兄。嫁と娘がいた。クーデターの時に失って……?

 取得属性魔法:闇、水、雷


 エレン・オスタリア お人好し。素直。良い子。


 エイダ・ギレンラ 教官。生徒第一。基本優しい。現在、ノアのことを怖がり中。

 取得属性魔法:治癒、火


 その他 この1話ではモブってたので割愛。。

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