第24話 しつこい新人
ちょびっとシリアス(?)
そして短めです。すみませんm(__)m
「教官! 何でだ!?」
「はい邪魔です。退いてください」
「あっ、教官ー!」
俺はストーキングされている。誰に、って、ダリウスにだよ!
なんでも、ダリウスは父親に、
『人が何かするには理由がある。それが悪いことでも、だ。だから理由を聞かずに悪人扱いはするな』
と言われたことがあるらしく。
だから俺から理由を聞いて、本当に悪い奴なのか確かめたがっているらしい。
俺にとっては余計なお世話だ。
午前中に全てのテストが終わったので、気楽に食堂で食事していたら理由を聞かれ、しかも曖昧に濁しても追求してくるしつこさ。
午後の授業中も、ことあるごとに同じことを質問、質問、質問。
できればその熱意を勉強に向けてくれないかな?
授業が終わったので職員室に戻ろうとしても、今のように追いかけてくる。
───現在進行形で、追いかけられていますよ!
あの子体力ありすぎ! 逃げても逃げても追いかけてくる! ホラーだ、今日夢に出てきそう!
明日は土曜日だから王都に行きたいんだが……夢見が悪いと、起きる気力が無くなるかもしれん……。
王都に行くこと自体は楽なんだけどね……? クソ神を脅し……げふんげふん、頼み込んで、転移魔法陣が書かれている道具貰ったし。
因みにそれ、国宝級のレア物です。うーん、流石神様だね!
……とは言っても、転移魔法を使うと気持ち悪くなるから、なるべく使わないけど。
気持ち悪くならないなら、ダリウスから逃げるために使うのに……。
───ダリウスの質問嵐から逃げながら、俺は7時間目の授業(この学園では7時間授業が通常)を終えた。
あとは帰りのホームルームだけだーい、と安心していたら、またもや質問が。
「教官って3年前に罪を犯したんだよな?」
まぁね? 確認ですかい? 何の確認なの……?
今までダリウスにされた質問が色々あって、しかも異色を放つものばっかりだったから、こういう普通の質問は逆に動揺する。
動揺させるのが目的なのか?
……まぁ、今週会うのも今日が最後なんだし……いや、初めて会った日でもあるんだけど。
今週も最後だし、まともに相手でもしてやろうかね? まともな返事はしないつもりだけど。
「その通りです」
「それって、クーデターと何か関係あるのか? クーデターの時に、騒ぎに乗じて悪いことやった奴っているんだろ?」
「はぁ、そうなんですか」
初耳だ。でも、考えればすぐ分かることだったな。
騒ぎがあれば、人の意識はそちらへ向く。悪さをするには絶好の機会だ。
クーデターと関係があるか、か。あると言えばあるが……。だって俺、王子だし。一応だけど。
クーデターは起こそうとして起こしたんじゃないし、そういう風に動いたのは、俺じゃない。
俺はただ、仲間を殺した奴等を───
「教官! 俺、親父から『男女の関係の縺れでの犯罪が起きやすい』って聞いたことがあるんだ!」
「起きやすいでしょうねぇ……」
地球でもそういう事件はあったし、この世界でも多い。
俺が肯定すると、他の勇者候補達がちょこっとざわめいた。
何だよ、頷いただけじゃないか。俺は違うよ?
教室の端ではエイダ教官が目を輝かせて、こちらを見ている。
たぶん俺の寝言を思い出しているんだな。確か、『君がいなくなったら、私はまた独りになってしまう』だっけ?
思い出すと今でも恥ずかしい。何であんな寒い台詞を言えたんだか。
というかそれくらいのことで目を輝かせないでよ、エイダ教官。こっちが気まずくなるだろ!
あぁああ、やっぱ面倒だ! さっさと終わらせてくれ!
「早く終わらせてください」
ダリウスに、心底嫌がる顔を見せながら言い放つ。
しかしこの餓鬼んちょは察してもくれないらしく、嬉々として『質問』を再開させる。
「これは俺の予想だけど、もしクーデターと男女間の縺れとやらが関係してるなら。で、お前があのマレディオーネ監獄に入れられる程の罪を犯したなら、辻褄が合うと思うんだけどさ!」
「ハァ」
「革命者様と、革命者様と親しかった貴族達を殺したのは、教官じゃないのかっ?」
「…………ほう?」
革命者様と親しかった貴族達を殺したのが、俺、ねぇ……?
俺が黙ったのを、図星だと思ったのか、ダリウスは笑顔で続けた。
───内心で、俺がどれほど憤っているかも気付かずに。
「革命者様には奥さんがいたんだろ? 貴族について詳しいらしい教官なら、革命者様と知り合いだったかもしれないじゃん。
だから、俺はこう思ったわけ───」
「お、おい……」
笑顔のダリウスに声をかけたのはジルベルトだ。……まずいらしいと、分かったらしいな?
だが話は終わっていないじゃないか。ちゃんと聞いてやるよ。
もしかしたら、そんな下らないことは言わな───
「革命者様に嫉妬した教官が、革命者様と奥さんと仲間を殺したんじゃないかっ?」
───言ったな?
俺は沸々と、怒りの感情が湧いてくるのを感じた。
抑えろ、抑えろ。聞いてしまった俺にも非はあるんだから。途中で遮らずに聞こうとしたのも悪い。
餓鬼の戯言だ、気にすることはない。
いっそ肯定してしまえ。もういいよ、それで。いや、良くないか。
俺は無表情にダリウスを見る。すると彼はにかっと笑って、
「だって、革命者様の奥さん、辱しめられたらしい姿で死んでいたんだもんなっ?」
「───あ゛?」
お読みいただきありがとうございますm(__)m
ノア・アーカイヤ 主人公。黒髪黒目。作者が伏線を撒き撒きしている。回収は早くなっちゃう予感。
取得属性魔法:闇、水、雷
ダリウス・エゼルレッド 新人。14歳。暗い金髪に黒い瞳。人の事情に突っ込み過ぎちゃった阿呆の子。
その他:今回はほぼ出てないので割愛




