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二番目な僕と一番の彼女 後日譚 ~とある青春群像劇 - クインテット~  作者: 和尚@二番目な僕と一番の彼女 1,2巻好評発売中
第2楽章 約束は夏の日々と共に巡る 後編

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第2楽章 63節目 


 和樹が真司のお兄さんとハジメと、更にその知り合いで実は画家だった雄二さんと会話している。

 雄二さんは、画家だったというのみではなく、結構有名らしく名前で調べたら色々と賞などが出てきて早紀は驚いていた。

 全くそんな風に見えないと言ったら失礼だとはわかっているのだが、二度ほどプレーしているところも見たけれど、恵まれた体格に、経験を重ねた上手さもあって、イッチーがいなされていたのを知っているから余計にだ。


 だが、それよりも早紀の中で少しだけそわそわしている事があって。


(さっきの、この場所に行ってみるかい? って本気かな? だとしたら二人でってことではないけど、結構皆で行けたり? 確かにすごい綺麗だし行ってみたいと思ってたんだけど……でももうそんな話じゃなくなったかぁ、残念――――)


 そして、そんな事を考えていたものだから、美咲さんに名前を呼ばれたことには少しびくりとしてしまった。


「あら、ごめんね。何か考えてる間に驚かせちゃったかしら?」


 少しだけいたずらっぽく美咲さんが言うのに、早紀は慌てて首を振って言う。


「いえいえとんでもないです! ちょっとあの絵の場所のこととか、後、雄二さんも画家さんだったのか、とか考えてぼーっとしちゃってました」


「わかるわかる! 雄二さん、全然それっぽくないよね。ハジメも知らなかったみたいでビックリしてたし? だからあの時に大きな車だったのかって改めて納得って感じ!」


 早紀の言葉に千夏がそう言って。


「あの時、ですか?」


「あぁ、あの時ねぇ。ふふ、まぁ二人共それどころじゃなかったから画材とかには気づかなかったでしょうね」


 玲奈が首を傾げるように、そして美咲さんが思い出して笑うようにして言った。


「千夏は雄二さん達の車に乗ったことがあるんだね、玲奈も言ってたけどあの時って?」


 早紀も気になって聞くと、千夏が少しはにかむようにする。


「初めてハジメの家で住むってなった時に、荷物運んでもらったんだよねぇ」


「…………あぁ、なるほど」


「時々千夏さんは、何だか輝きますよね。早紀さんもこうなるのでしょうか?」


 話だけは聞いていた。早紀がやらかしたファミレスの場面の少し前の話か。そういえばこの二人は同棲経験済だったなと少し千夏から出ているキラキラしたものと共に遠い目になりながら思い出す。

 玲奈のセリフにもツッコみたいところだったが。


「いやー、あの時も思ったけど仲が良いわよね。ふふ、良かったわ、本当に」


 美咲さんがそう言って微笑んだ。とても美人な人だが、その笑い方がハッとするほど柔らかくて。


「あの時の千夏ちゃんとハジメくんは、事情もあって何だか二人だけでも完成しちゃいそうだったから……それでも二人で閉じずに、私達だったり、今こうして友達なんだなって子といるのを見ると、おばさんとしてはもう感無量になってしまうわね」


 そう続けた言葉も声も優しくて。

 あぁ、こういう大人になりたいなと、早紀は思った。


(って、全然ちゃんと知らない人なのに、何を思ってるんだか。でも、こうしてちょっとしたことで素敵だって思ってもらえるような女性になりたいな。すぐカッとなっちゃったり、視野が狭くなっちゃう今の私じゃまだまだだけど)


「あはは、そんな風に言ってもらえるとうちとしても嬉しいです! 美咲さんこそいつも雄二さんと仲良いですよね。ところで美咲さんも絵を描かれたりもするんですか?」


 千夏が照れたように美咲さんに言うと、美咲さんは首を振って否定する。


「いいえ、私はそっちは全然よ。あの人の絵の一番のファンでありたいとは、いつも思っているけれどね」


「……素敵ですね」


 玲奈がぽつりと呟いた。

 早紀も同じことを思っていたのだけど、何だかその響きが早紀のそれとは違う気がして、そして意外で玲奈の方を見る。


 すると、玲奈も気づいたのかほほえみ返して、そして先程の和樹が見入っていた絵の方を向いた。


「慎一郎くんの絵の一番のファンは、昔から玲奈ちゃんよね」


 それを見て、美咲さんが優しく玲奈にも声をかける。


「あ、そっか。玲奈の事は昔から知ってるんですね。そうよね、婚約者さんだもんね」


「ふふ、今は色々あって違うのですけれどね」


 千夏が言った言葉に玲奈がそう答えて、少しだけ聞いて良いのかを早紀が、そして恐らく千夏も迷っていた間に、別の声がかかった。


「ねぇ、千夏、他の皆も少し良いかな?」



 ◇◆



 慎一郎は今しがた男の子二人にした提案を、真司の同級生達が相談するのを微笑ましく見ていた。

 高校生の時にあんな風に女の子と仲良く出来ていて、なおかつ提案したような小旅行を相談できるというのだから少しだけ羨ましくも感じる。


 でも羨ましさよりも、真司と玲奈にこうして仲間が出来たことが嬉しいと思っていた。


「またお前は変に引いた考え方をしているだろう」


「雄二さん……はは、お見通しですね」


 そして、そんな風に考えていた事を見透かされるような雄二の言葉に、慎一郎は苦笑する。


「わからいでか。俺からすればお前も彼らも同じようなものだ…………それに、最近は体調もいいんだろう? 楽しんで来るといい」


「ええ、そのつもりですよ。同じようなもの、とはいかないでしょうが。この頃の数歳差は大きいですからね」


 そう慎一郎が言うと、雄二は肩をすくめた。


「慎一郎さん、何でも和樹さんやハジメさんにあの絵の場所へ誘われたとか?」


「うん、勿論君もね。真司に珍しい友人だし、和樹くんがさっき絵を見て行ってみたいって言ってくれていてね…………それに覚えているかい? あの場所、昔君も真司も一緒に行ったことがあるんだよ」


「……ええ、勿論です。忘れるはずがないです」


「ふふ、なので今回のことが無くても、真司や玲奈を誘おうかなとは思っていたんだよ。元々他にも構想があったし、あの辺りの別荘も風通しをしてやらないとね」


 そう微笑むと、玲奈は少し何かを問いたげにしたが、慎一郎は気づかないふりをして、別の言葉を続ける。

 

「まぁ、真司にはまだ言っていないから、あの子にも話をしないといけないし、ハジメくんと同じ名前の子にその彼女という子もいるんだろう? 良かったら是非皆で来てほしいね」


 その言葉に、玲奈はそっと言葉を呑み込むようにして、そうですねと呟いた。


 少しだけ無言の時間が流れ、ギャラリーの外からは、蝉の鳴き声が聞こえてきている。

 ゆっくりと本格的な夏がまた、訪れようとしていた。




こんにちは。いつもお読みいただきありがとうございます。和尚です。


この度、2023年10月に発売されたライトノベルの中で選ばれるラノオンアワードというもので、『二番目な僕と一番の彼女』が新作部門・新作総合部門・萌えた部門で選出して頂き三冠となりました。とても嬉しく思います。



https://ln-news.com/articles/118339


爆発的にヒットしている駄犬さんの『誰が勇者を殺したか』の四冠に次いでということで、投票頂いた方もお読み頂けた方も嬉しく思っています!

そして、Amazonレビューや読書メーターなど、感想も暖かいものばかりでありがたい限りです!



ただ、そんな本作なのですが、出版不況の中でかなり健闘していると仰っていただけながらも、発売一ヶ月の、初版部数に対しての売上部数の観点から二巻の目処は立っておりません。


打ち切り確定というわけでも無いようなのですが、出来たら本編は二作構成であることもありますし、ミュシャさんの描くイッチーや優子達も見たいなぁという欲もあったりもして、応援頂けたら嬉しいなと改めてあとがきに書かせて頂きました。


いやー、宣伝というものは難しいものですね!


とはいえ結果に関わらず後日譚については、日々更新していきますので、引き続きお付き合い頂けましたら幸いです(*´ω`*)


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― 新着の感想 ―
[一言] そうですねえ。やはり完結はさせてほしい、と出版社には期待します。できれば、その続きも… なんとか希望は持っていたいですね。 飲み込んだ言葉は何だったのかな。信一郎は前話で「妹のよう」と言っ…
[一言] 3冠おめでとうございます! 私も2巻が出てほしいです
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