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28.ウラジオストック会議 過去

――過去 ウラジオストック会議 日本二人の大臣

 ロシア公国と日本は今後の経済・軍事両面で新協定を締結すべくロシア公国のウラジオストックで会議を行っていた。この会議は一週間続き、翌週よりアメリカも交え対ソ連承認問題について会議が行われる予定となっている。

 日本からは外務大臣と国防大臣の二者が出席していた。 


 二人は完全に機密が確保された部屋でにこやかに談笑している。


「国防大臣。先の震災での手段見事でした」


 外務大臣は軍を迅速に動かした国防大臣を褒めるが、褒められた大臣は当然といった風を崩さないものの少しだけ口元が緩んでいる。

 

「いやいや。事前の数度に及ぶ訓練に加え、動くタイミングまで決まってましたからな」


「いえいえ、それでもですよ。国防大臣。現に放火をはじめとした混乱に付け込んだ犯罪が皆無でした」


「震災発生前に軍・消防・警察を首都圏へある程度集中させ、事に当たれましたからな。あれだけの人数が警戒していればそうそう犯罪は起こせませぬぞ」


「なるほど。配備まで事前に準備を行い、全て予定通りってわけですか? まさか巡回経路まで事前訓練を?」


「そうですぞ。内閣でそこまでするよう決定してましたからな。軍は政府の決定を正確に行いますからな」


「ひと昔前はこうして政軍一体となって当たっていたんでしょうね。今もそうなりましたが……」


「維新前はそうですなあ。そもそも政軍分離が無かったので上手くいったんでしょうなあ。もちろん、軍は軍事の専門家集団ですので軍事的見地からの所見は出しますぞ。それをどう料理するかは内閣次第ですな」


「日本はようやく再び一つにまとまることが出来ましたね。これも例のアレのお陰ですね」


 外務大臣は日露戦争後から時折政府中枢部への機密情報として通知される、「例の情報」について思いを馳せる。彼自身は現場に居合わせていなかったが、「例の情報」を当時の政府中枢に信じさせるに値する何かが起こり、当時の政府は大陸利権を売り渡すとドラスティックな方向転換を行った。

 「例の情報」は今でも最重要機密にして、最重要検討項目になっている。先の関東大震災の予言も「例の情報」からもたらされたが、荒唐無稽な震災予知、しかも日時が秒に至るまで知らされたのだ。

 普通、こんな眉唾な情報を信じる者がいたとしても極一部に限られるのだが、これが「例の情報」となると話が異なる。

 政府中枢に「例の情報」を疑う者など今となっては皆無な状況で、政府は「関東大震災予言」に備えて出来る限りの事を行ったのだ。そして9月1日11時58分32秒、予言通り「関東大震災」が起こった。

 綿密な対応策を練っていた政府は本来ならば多大なる人的犠牲を負うはずの大災害を軽微な人的被害で乗り切ったのだった。

 まさに神のごとき予言。一体予言の主は何者なのだと外務大臣が考えたことは一度や二度ではない。しかしそのたびに思うのだ。「例の情報」をもたらすのはこの世の人物ではないと。何故なら、政府中枢の誰もが「例の情報」をもたらす人物の影をとらえることもできないからだ。

 実在する人物ならば、少しはその人物の「足跡」「痕跡」が残るものだが、「例の情報」の主にはそれが全くない。だから彼はこの世の人物ではないと結論づける。

 

 何者であったとしても、信じるに値する情報を提供してくれることは有難い。我々はそれを出来る限り日本の為に活かす。外務大臣は改めてそう誓った。

 

――翌日

 本日の会議を終えた二人は、再び昨日と同様機密が確保された部屋で談笑を行っていた。本日の話題は今日大枠が決定したロシア公国との協定の話だ。

 

「ロシア公国とは上手く話がまとまりましたな」


「そうですな。軍事協定ではロシア公国は日本の駐留を認めましたし、経済協定は向こうの方が望んでたことでしょうし、問題ありませんね」


「資源開発は日本主導で?」


「はい。日本が資金投資を行い、日本とロシアの合弁企業が開発します。彼らにとってもはメリットが非常に大きいと思います。資源で企業が儲ければ利益はロシア公国の税収になりますし」


「合弁企業でわざわざやるメリットがあるのかね?」


「日本企業にやってもらうのがベストなんですが、いざ資源の輸出を始めるとロシア公国は自国の資源だからと不満が溜まる可能性があります。ですので最初から合弁企業にすることで当初利益が減るかもしれませんが、長い目で見ると大きなプラスと判断しました」


「さすが外務大臣だな。そういうバランス感覚に優れている!」


「これもロシア公国に資源があるという情報が無ければ踏み切れませんよ……」


「なるほどな……」


 国防大臣と外務大臣はお互い同じモノを想像し、お互い微笑する。外務大臣は思う。「例の情報」をもたらす人物が見る未来の日本の姿とはどのような世界なのだろう?

 どんな世界を見ているのか、何故日本へ情報をもたらすのか、この先植民地や赤の侵食は続くのかなど聞きたいことはいくらでもある。一度でいいから会って話をしてみたいものだ。

 敵わぬ夢だろうがね……

 


――ワクテカ新聞改め磯銀新聞

 どうも! 日本、いや世界で一番軽いノリのワクテカ新聞改め磯銀新聞だぜ! 今回も執筆は編集の叶健太郎。まずは新聞名について俺から解説しちゃうぜ!

 磯銀新聞は土佐出身の士族、磯谷銀次郎が帝国議会設立時の1890年に創刊した新聞だった。当初は同じ土佐出身の政治家を支援するために立ち上がったが、かの政治家が引退すると中立的な新聞へと転身する。

 その際新聞の特色として世界一ノリが軽く、分かりやすい新聞を目指そうとなった。そのまま磯銀新聞としても良かったんだが、元は土佐出身の政治家寄りの記事を書いていた名称の新聞だったから、その色を完全に消そうとみんなで考えた。

 その結果ワクテカ新聞という名前になったわけだが、名称変更してからはや二十年。本来の名称より長い時間をワクテカ新聞という名で発刊してきたわけだ。ワクテカ新聞で充分現在の中立・ノリが軽い・分かりやすいと世間へ浸透したと判断したから、創刊者のつけた思い入れのある名称に戻したってわけだ。

 

 そんなわけで、磯銀新聞を今後ともよろしく! 俺へのファンレターはいつでも受け付けてるからな!

 じゃあ、前置きはこんなところで本題と行こうか!

 

 関東大震災の復興が進む中、ロシア公国首都ウラジオストックで政府間会議が開催されているぜ。入って来た情報によると、日本とロシア公国はロシア公国成立から良好な関係を築いていたんだが、このたび更なる緊密な関係となることが決定した。

 日本・ロシア公国間に軍事同盟と経済協力条約が結ばれたからだ。軍事同盟については、ロシア公国の防衛が日本の防衛に適うことからロシア公国内で日本の軍隊が活動できるように日本はロシア公国内への軍隊の駐留権を得た。

 これで非常時にはお互いの軍が協力して外敵に当たることができるわけだ。今後共同軍事訓練なんかも行われていくことだろう。銃器の企画統一の為、日本から武器の輸出も行っていくらしいから、儲かりそうな話だな。

 もう一つの経済協定の目玉はロシア公国内の資源開発だ。ロシア公国内には石油や天然ガスが眠っている可能性があると日本の専門家から話が出ていて、日本から資金の投資を行って開発にあたるらしい。

 ほんとにあればいいんだが、もし何もなければ無駄金になるぞ。思い切ったことをするよな日本政府も。

 ウラジオストック会議はまだまだ続いている。前半部分が終了し、現地から先ほど説明した条約について発表があったが、これからアメリカを交えての後半戦だ。

 そう、問題のソ連承認についてだな。

元ネタをくださった結城さんありがとうございました。以下結城さんからいただいたものです。


・磯銀新聞

土佐出身の士族、磯谷銀次郎が帝国議会設立時の1890年に板垣退助を助けるために創刊。紙名は社主である磯谷銀次郎の姓名から一字ずつ取ったもの。板垣の政界引退までは板垣擁護の論陣を張っていたが、板垣引退以降は庶民を啓蒙するために分かりやすい形で世情を伝え、時に風刺するという編集方針に変更し、人気を博す。特に日露戦争後には叶健太郎の軽妙洒脱な社説が大いに人気を博し、大正デモクラシー期には多くの固定読者を抱える中堅新聞となった。また、昭和初期の文豪、池田憤猛(本名、池田壱)が若い頃に記者をしていたことでも有名であり、その代表作である私小説『憤猛』においては、磯銀新聞社内の自由闊達な気風が活描されている。

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