表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/101

84・レオンとデート

 翌日。

 私はレオンと、街まで出かけていた。


「急にすみません。レオンもお忙しいでしょうに……。ですが、どうしてもあなたと街を歩きたくって」


 隣を歩くレオンに、そう謝る。


 しかし彼は、


「なにを言うんだ。君が遠慮する必要はない。しかも俺自身、気晴らしが必要だと思っていたし、いい機会になったよ」


 と優しい表情で気遣ってくれた。


 忙しい合間に時間を見つけ、彼がこうして私の要望を聞き入れてくれて、とても嬉しかった。



 ──レオンとデートに出かける。



 これが、エマさんと相談して決めた作戦だ。


『二人の思い出といえば、ずばりあの初めてのデートでしょう! 思い出の場所を巡り思いを馳せることによって、レオン様の記憶も元に戻るかもしれません。そしてそのついでに……直接、レオン様からご自身の過去を語ってもらいましょう!』


 少し興奮気味に話すエマさんの姿は、はっきりと目に焼きついている。


 私がレオンと結婚して、まだ日が浅い頃──彼がデートに誘ってくれたのだ。


 あの時の私はまだ、この結婚に愛はないと思い込んでいた。

 しかし、あのデートの一件を通して私はレオンのことを知った。

 もっとも戦争を知らせる鐘の音によって、デートは途中で終わったけど……今でも良い思い出として、色濃く私の記憶に根付いている。


 レオンをデートに誘う時はドキドキしたけど、こうしてレオンと歩いていると心が安らいでいった。


 そんなことを考えながら街中を歩いていると、スイーツショップの前まで辿り着く。


「ここに入りませんか?」

「ああ」


 店内に入る。


 店内には色とりどりのスイーツが並べられていた。

 どれも美味しそうで、つい目移りしてしまう。


「あ──」


 そこで私は、マカロンを見つける。


「レオン、覚えていますか? 私が結婚の申し出を受け、レオンにお会いした時──このマカロンを出してくれたんです」

「これを……か?」


 マカロンをマジマジと眺め、レオンは戸惑いの表情を作る。


「はい。レオン自身の手でお選びになったと聞いています」


 甘くて舌がとろけそうなこのマカロンは、私にとって思い出の味だ。

 あれ以来、マカロンの味が忘れられず、定期的にここまで買いにきていた。


 だから、レオンの記憶修復の『鍵』は、このマカロンかもしれないと思ったんだけど……。


「すまない、覚えていない。俺が一人の女性のために、わざわざスイーツを選ぶとはな。本来の俺ならアレクに任せて、買いに行かせていただろうからな」

「そうですか……」


 うーん、残念。

 だけど、この程度でへこたれるわけにはいかない。


 残念な気持ちを胸に押し込めながら、私たちはマカロンを購入する。

 思い出の味を口にすれば、なにかきっかけが生まれると思ったからだ。

 もっとも、この様子だと可能性は低そうだけど。


「次はどこに行こうか。なにか希望はあるか?」


 店を出て再び街を歩きながら、レオンが問いかけてくる。


「そうですね……せっかくマカロンも買いましたし、これをどこかで召し上がりたいです」

「だったら、喫茶店に行こう。喫茶店のマスターとは、親交も深い。俺が言えば、場所くらい貸してくれるだろう」

「いいですね。ですが……」


 と私が言葉を続けようとすると──。



「すみません。迷子になってしまって……道をお聞きしてもよろしいでしょうか?」



 不意に後ろから声をかけられる。


 振り返ると、そこにはキレイな女性が立っていた。

 ふんわりとした柔らかい髪質。その髪がそよ風に乗って優雅に揺れるたびに、花のような香りが鼻先まで届いた。


 貴族だろうか? 繊細な刺繍が施されたドレスに身を包んでいる。

 だけど貴族にありがちな高慢さは一切感じられなかった。


「あなたは……」


 名前を尋ねようとすると、


「あ」


 女性は隣にいるレオンに気付き、声を上げる。


「レオン……ランセル様……」


 レオンのことを知っているらしい。


 とはいえ、この街に住んでいたら、公爵であるレオンを知っていることはさほど珍しくないけど──意外だったのはレオンの反応だ。

 レオンも女性の姿を見て、目を見開いた。


「君は……フェリシテ・シビリルか──」


 そう名前を呼び、レオンと彼女──フェリシテさんは見つめ合った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆新作はじめました☆
「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです

☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

Palcy(web連載)→https://palcy.jp/comics/2056
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000384881

書籍二巻がKラノベブックス様より、発売中です!
よろしくお願いいたします!
a55uz8bbem19mg3m0cp3j9czu4fn9_o5j_1cz_1xp_stga.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ