表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/101

58・コリンナは暗いところが苦手

「ここよ」


 とコリンナは階段の前で立ち止まる。

 階段の先は薄暗く、他のものとは異質な雰囲気を醸し出していた。


「この下に……アネットちゃんが……」

「いるかどうかは分かんないでしょ。行きましょ。こうしている間にも、帝国兵に見つかるかもしれないから」


 とコリンナが先頭を歩き、階段を降りた。


 階段を降り切った先は、仄暗い薄闇に覆われていた。

 灯りもない。

 転ばないように気をつけないと……。


「…………」

「コリンナ?」


 先ほどまではあんなにも饒舌だったコリンナが、ここに来てから妙に口数が少ない。

 なにかに怯え、踏み出す一歩一歩も震えていた。


「もしかして、暗いところが怖いんですか?」

「……っ!」


 図星だったのか、彼女の肩が微かに上下する。


 それを見て確信する。


「大人になってからは治ったと思いましたが、まだ暗闇は克服出来ていなかったんですね」

「……そうよ。文句ある?」


 と口から出る声も、コリンナにしては弱々しい。


 彼女が暗闇を怖がる理由は、はっきりしている。


 昔──元々、コリンナは出来の悪い子どもだった。

 治癒魔法の勉強をいくらしても、全然伸びない。私は「気にしなくていいよ」と言ったけど、お父様はそうじゃなかった。

 そしてとうとうお父様の堪忍袋の緒が切れ、コリンナを暗い馬車小屋に閉じ込めた。

 それ以来、コリンナは暗いところが大の苦手だった。


 まあ成長にするにつれて、治ったと思ってたけどね。

 確かめようにも、大人になってから立場が逆転して、彼女に気軽に話しかけられなくなったし。


「大丈夫ですよ」


 そう言って、私はコリンナに手を差し出す。


「手を繋ぎましょうか。こうすればコリンナ、震えが治りましたよね」

「……お姉ちゃん風吹かせてんじゃないわよ。でも……」


 差し出された私の手を、コリンナは震えた手で握る。


「まあ……暗いとこが怖いっていうのは否定出来ないけどね。恥ずかしいけど……あんたの言葉に乗らせてもらうわ」


 徐々にコリンナの震えが治まっていく。

 言葉は少々捻くれているものの、女の子らしい彼女の仕草に頬が綻んだ。


 こうして手を繋いでいると、昔のことを思い出す。


 いつも「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と言って、私の後を付いてきたコリンナ。

 些細なことでも成功すると、「お姉ちゃん、褒めて!」と笑顔で寄ってきてくれた。

 そんな彼女が闇魔法に目覚めるとは、なんと皮肉なことだろうか。


 ……いや、闇を怖がっていた彼女だからこそ、闇魔法を上手く扱えなかった。

 だからこそ、前回の戦争で暴走してしまったんじゃ──そう思えた。


「あっ、ここで行き止まりのようですね」


 壁のようなところに突き当たり、私たちは足を止める。


「扉になってるみたいだわ。鍵は……かかっていないみたい」

「こんな暗いところに部屋があるのは、ますます怪しいですね。やはりこの先に──」


 アネットちゃんがいる──。


 私はコリンナと視線を合わせて、お互いに頷く。


「行きましょ。さっきから、外がさらに騒がしくなってきた。あまり時間は残されていないかもしれない」

「ええ」


 私はドアノブに手をかける。


 扉を開けると、周囲の薄暗さを一掃するような眩さが目を覆った。

 反射的に腕で目を隠してしまう。


「ここは──」


 ようやく明るさに慣れてきて、目をどかすと──部屋の奥、アネットちゃんを発見した。


「アネットちゃん!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆新作はじめました☆
「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです

☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

Palcy(web連載)→https://palcy.jp/comics/2056
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000384881

書籍二巻がKラノベブックス様より、発売中です!
よろしくお願いいたします!
a55uz8bbem19mg3m0cp3j9czu4fn9_o5j_1cz_1xp_stga.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ