25.英雄、バイト少女たちと一緒に寝る
隣国フォティアトゥーヤァにて、SS級モンスターを撃退した、その日の夜。
俺はフォティアトゥーヤァの王都【トゥーヤァ】にて、一泊することになった。
場所は王都【トゥーヤァ】の、女王アルシェーラの暮らす王城だ。
バカ広い食堂にて、俺たちストレイキャットのメンバーたちは、夕食を取った。
豪華な食事を堪能した後、俺たちは食後の紅茶を飲んでいた。
「はぁ~……うまかっただにぃ~……」
バイト少女ハルコが、うっとりとした表情をうかべる。
「……ですね。少しスパイスがきいていて、とっても美味しかったです」
ニコニコと笑うのは、賢者キャスコだ。
「あたちねっ、あの【カキー】ってやちゅ、おいちかったのー!」
雷獣少女のタイガが、お口周りを茶色いソースで汚して言う。
ハルコはハンカチを取り出し、タイガの口元を拭った。
「タイガちゃん、あれね、【カリー】って言うらしいよ」
「かにー?」
「違うよー。カリーだにー」
「カリーダニー!」
「違うよ-、さてはタイガちゃん、おらをからかってるだに?」
「だにー!」
きゃっきゃっ♪ と笑い合うタイガとハルコ。うんうん仲良きことは良いことだ。
などと食事の余韻を楽しんでいたそのときだ。
がちゃっ……。
「や、ジュー君。お嬢さん方、食事を楽しんでもらえたかな?」
入ってきたのは身長の高い、砂漠エルフだ。
かつて【ダークエルフ】と呼ばれた砂漠エルフ。特徴的なのは浅黒い肌だ。
チョコレートのような、つやのある肌。ぷっくりと膨らんだおっぱい。そしてとがった耳。
流れるような銀髪をたなびかせながら、彼女がこちらに歩いてくる。
彼女こそ、ここフォティアトゥーヤァをおさめる女王アルシェーラだ。
「一緒に食事ができなくてすまない。少々仕事が立て込んでてな」
アルシェーラが上座に座って、にっこりと笑う。
「なぁに、気にすんな。それよりうまい食事がありがとなー。うちの子たちみんな喜んでいたよ」
俺が言うと、ハルコたちがコクコクとうなずく。それを見たアルシェーラが上品に笑う。
「それは良かった。異国の食べ物だから、口に合わなかったらどうしようと心配していたのだが」
「杞憂も杞憂だったよ。ここの飯は辛いけど美味いなー」
アルシェーラが満足そうにうなずく。
「それよりジュー君。改めて礼を言うよ。火山亀を討伐してくれて」
ぺこっと、女王が頭を下げる。俺は頭を上げるように言う。
……さてなぜ俺たちが王都にいるかというと。
火山亀という、ちょっと強いモンスターを倒した俺たち。
そのことはすぐに、女王アルシェーラのもとへ伝わった。
アルシェーラは是非お礼がしたいと言って、俺たちを王城へと呼び寄せたという次第。
「しかしジュー君。本当に、火山亀の魔力結晶をもらって良いのかい?」
「かまわねーよ。別に俺、依頼を受けて倒した訳じゃあない。俺はあくまで冒険者じゃなくて、いっかいの旅人として、この国に来たんだからさ」
魔力結晶とは、モンスターがドロップするアイテムだ。
これには芳醇な魔力が蓄えられており、それを使って街の結界を維持しているのだ。(女神の結界は魔力で動いており、街がギルドを介して、冒険者たちから買い取った魔力結晶を動力にしている)
「SS級モンスターの魔力結晶……これがあれば年単位で結界が持つよ。そのぶん国家予算を他に回せる……」
アルシェーラが真面目な顔で俺を見て、ぺこっと頭を下げる。
「ありがとうジュー君。君のおかげで国はさらに潤うよ。なんとお礼を言って良いか……」
「なぁに、お礼なんていらねーっての。金が欲しくて倒した訳じゃあないし」
「……ほんと、君はできたお方だ。あのような貴重な魔力結晶を、無償でぽんとわたし、しかも偉ぶらない……素晴らしい傑物だよ」
キラキラとした目を、アルシェーラが向けてきた。照れますな。
「はわわ……ジュードさん、女王様に褒められてるだに……!」
「……さすがジュードさんです♡ 本当にすごいお方♡」
バイト少女たちからもなんだか熱っぽい視線を向けられた。ますます照れますな。
アルシェーラは頭を上げると、立ち上がる。
「今日は泊まっていってくれ」
「え、いいの?」
アルシェーラが笑顔でうなずく。
「もちろん。これくらいさせてくれ」
「あー……どうする、みんな?」
俺はハルコたちに尋ねる。
「おらは賛成!」「……私も。転移スキルがあれば明日の朝に、すぐに帰れますしね」
タイガはもう眠っていた。くぅくぅと寝息を立てている。
今から街の外へ行って、転移してとなると、寝てるタイガを起こすことになりそうだし。
「それじゃ……アルシェーラ、頼むよ」
「心得た……そして……」
ちらっ、とアルシェーラが少女たちを見やる。
「心得た」
ぐっ、とアルシェーラが、ハルコたちに親指を立てる。
「「?」」
ふたりが、はて? と首をかしげる。
「大丈夫、私に任せなさい。こう見えて察しは良いんだ」
「「!!」」
ハルコたちが瞠目する。
「何の話し?」
「乙女同士の秘密の話さ♡」
よくわかんないけど……。
まあこうして、俺たちは砂漠エルフの国で一泊することになったのだった。
☆
2時間後。
俺はだだっぴろい寝室にいた。
タイガは子供用のベッドで、すやすやと眠っている。
俺は部屋に設えてあった、アホみたいにでかいベッドに腰掛けていた。
「ふぁ~…………俺も寝るかなぁ……」
しかしアルシェーラから、【私が来るまで寝ちゃいけないよ♡】と言われているので、寝れないでいる。
「私が来るまでって……なんだろ。お休みの挨拶でもするのかね?」
俺はベッドに倒れ込む。お香でも焚いているのだろうか。甘酸っぱい香りが部屋に充満している。
「暇だー。アルシェーラはまだかねー」
と、そのときだった。
がちゃっ。
「待たせたね、ジュー君♡」
入ってきたのは、女王アルシェーラだ。
「おそいよー。何やってたんだ?」
「彼女たちを風呂に入れて、いろいろと準備させていたのさ」
「彼女……たち?」
がばっと起きてドアの方を見やる。そこに居たのは……。
「お、おー……。どうしたの、ハルちゃん、キャスコ?」
バイト少女たちだった。今はフォティアトゥーヤァ風の、スケスケとした肌着を身につけている。
「……あの、ジュードさん。そのぉ」
もじもじするハルコ。薄ピンク色のパジャマだ。
彼女の大きなおっぱいによって、上着の胸部が山になっている。
ともすれば下着が見えてしまうんじゃ、というほど薄い生地のパジャマ。……というか少し下着が見える。
「ハルちゃん。マズいって。アルシェーラ、ハルちゃんに何か羽織るものあげて」
するとアルシェーラは、残念そうに首を振る。
「すまないジュー君。彼女にあうサイズの上着はなく、またサイズの合うパジャマがこれだけなのだよ」
まじかい。確かにハルコのおっぱいは、比類ないくらいの大きさだ。サイズのあうものが無いのだろう。
「……あ、あのあの、その……うう、やっぱり恥ずかしいだにぃ~」
その場にしゃがみ込むハルコ。その一方で、キャスコが顔を真っ赤にしながら、ほほえんで立っている。
「……じゅ、ジュードさん。どうでしょう? 私の衣装はっ?」
キャスコもハルコ同様に、スケスケのパジャマ……じゃねえな。
なんだかスケスケのワンピース? のようなものを着ていた。
「なにそれ?」
「これはベビードールという、ま、ネグリジェみたいなものだよ」
スケスケのワンピースからは、完全にキャスコの下着が見えていた。
ハルコのは見えるか見えないかギリギリだったのだが。キャスコのは完全に、真っ赤な下着が見えている。
「アルシェーラ……さすがに別のやつあるだろ?」
「いやいやそれがねジュー君。彼女の背丈にあう服がないのだよ。ほら、砂漠エルフはみな長身だろ?」
確かにアルシェーラをはじめとした、砂漠エルフたちは発育がよく身長が高い。
キャスコは女性にしては背が低いので、確かに似合う服がない……のか?
「というわけで彼女たちはこの服を着てここで寝ることになったから。あとは任せたよジュー君」
にっこり♡ とアルシェーラが笑う。
「え? なになに今お前おかしなこといわなかった?」
俺は慌てて、アルシェーラに尋ねる。
「何か言ったかい?」
「いやハルちゃんたちがこの部屋に泊まるとかなんとか……」
「ああ。誠に残念ながら、他の部屋はすべて埋まってしまっているのだ」
「いやいやあり得ないだろ?」
「いやいやあり得るんだなこれが」
うんうん、とうなずくアルシェーラ。
「あいにくこの寝室しか使える部屋がないのだ。ということでお休み、ジュー君♡」
アルシェーラは部屋の外に出る。
「あ、ちなみにこの部屋防音の魔法がかかっているから、いくら大きな音を立てても大丈夫だからね♡」
「はぁ。なんのこっちゃ……?」
アルシェーラは含み笑いを浮かべると、「頑張るんだよ♡」とハルコたちに謎のエールを送り、部屋の外へ出ていたのだった。
後には俺と、ハルコ、キャスコ、そして眠るタイガのみが残される。
「あー……。うん、ふたりがこの部屋使って。俺は外で寝るから」
俺はベッドから立ち上がる。そして部屋の出入り口まで歩いて行く。
すると……。
がしっ……!
と、キャスコに手を捕まれた。
「……だ、大丈夫ですっ! 大丈夫ですので!」
耳の先まで真っ赤にした、キャスコがそういった。
「大丈夫って、え、なにが?」
「……で、ですからっ。その……い、一緒に寝ても平気ですと! ね、ハルちゃん!?」
「え、ええー!?」
ハルコが湯気がでそうなほど顔を真っ赤にして、目をむく。
「お、おら……やっぱり心の準備が……」
もにょもにょ……と口を動かすハルコ。キャスコは俺から手を離し、その場から離れる。
「……ハルちゃん。せっかくアルシェーラさんがチャンスをくれたんですっ。利用しましょう、しちゃいましょう!」
「きゃ、キャスちゃん……でもおら……自信なくて。キャスちゃんみたいに体ひきしまってなくって、無駄肉ばっかだし……」
「……大丈夫です! ハルちゃんにはおっきなおっぱいがあります! 立派な武器がふたつもあるんです! いけます!」
と小声で謎の会話を繰り広げる二人。取り残され感はんぱないなぁ。
「い、いけるかなぁ……?」
「……いけますいけます!」
「い、ける……よね!」
「……いけるいける!」
何やら話がまとまったようだ。二人が決然とした表情で、俺のそばまでやってくる。
「……私たちは気にしませんので!」
「お、おらたちと一緒に……寝ましょう!」
がしっ、と二人が俺の腕をつかんでくる。すぐ近くに、若い子たちの体がある。
ただでさえスケスケとした肌着を着ているのだ。下着が見えてしまいそうになり、俺は目を背ける。
「いやぁ……。ふたりとも嫌でしょ? こんなおっさんと一緒の部屋で寝るなんて?」
「おらは嫌じゃないです!」
「……私もむしろ大歓迎です!」
二人とも強く首を振る。
「え、えー……? なんでそんなアクティブなの? 嫌でしょ普通に考えて、こんなのと一緒じゃ」
「「嫌じゃないって言ってるでしょ!」」
なんだか知らないけど、怒られてしまった。
「ジュードさんならおら、大丈夫ですから!」
「……私も、ジュードさんになら抱かれても平気です!」「え?」「一緒に寝ても大丈夫です!」
一瞬キャスコがなんだか可笑しなことを言ったが……ま、気のせいか。
「えっと……本当にいいの?」
俺が聞くと、ふたりとも大きくうなずいた。
「う、うーん……わかったよ。じゃあ一緒寝ようか」
「「はいっ!」」
二人が笑顔を浮かべる。何が嬉しいんだろうか……? わ、わからん。
普通ってこんなおっさんと寝るのなんて、嫌なんじゃないの? 若い子はお父さんと一緒の風呂に入るのはおろか、一緒に寝るのも嫌なんじゃないのか……?
しかしこの二人、とっても嬉しそうにしてるし、わからん……乙女の心の中は、おっさんにはわからないよ。
二人がウキウキしながら、ベッドへ向かう。
俺は部屋の隅においてあった、ソファに座る。
「……どこいくんですかっ?」
キャスコが肩を怒らせながら、俺の元へ来る。
「え、ソファで寝るんだけど」
「……駄目です!」
「だ、駄目ってどゆこと?」
キャスコが柳眉を逆立てて言う。
「……ソファでなんて寝たら体を痛めてしまいます。ベッドがあるのです。ベッドで寝ましょう!」
「い、いやいや二人がベッド使ってよ。俺はここで」
「……駄目ですっ」
キャスコはぐいっ、と俺を立ち上がらせる。
「……寝ましょう! ベッドで!」
「え、ええー……。いやさすがに同じベッドは……」
「……寝ましょう!」
謎の強引さを発揮して、キャスコが俺の手を引っ張り、ベッドに「……せいっ!」と放り投げる。
キャスコは素早く、俺のとなりに横になった。
「……ハルちゃん! 早く!」
「え、ええー……。キャスちゃん、おらやっぱり……」
「……へたってたらおばあちゃんになっても進展しませんよ!」
一喝するキャスコ。何の話なのー? ねーさっきから俺、話しについていけないんだけどー。
「わ、わかった! おらずくだす!」
ふんすっ、とハルコが気合いを入れると、逆サイドに寝っ転がる。
俺はふたりの美少女に挟まれて、ベッドに仰向けに寝ている状態だ。
「ふ、二人ともこれはちょっとまずいって……」
「……まずくありません! なぜなら私たち、嫌がってませんのでっ! ね、ハルちゃん!」
キャスコが俺を挟んで向こう側に居る、ハルコに言う。
「お、おらちょっと恥ずかしくて……」
「……ハルちゃん!」
「はいっ! 嫌がってないだに!」
顔を真っ赤にして、ハルコが叫ぶ。ふんすっ、と鼻息荒くしてキャスコが言う。
「……合意のもとなのでっ、大丈夫ですジュードさんっ。さっ、一緒に寝ましょう!」
キャスコが首まで肌を真っ赤にしながら、興奮気味に言う。
「大丈夫? 熱でも出て無い?」
「……大丈夫です! さっ、寝ましょう!」
キャスコが呪文を唱える。すると照明がふっ……と消えた。
魔法でランプのオンオフを管理しているらしい。
「……し、失礼しますっ」
キャスコはそう言うと、俺の腕に、きゅっ、と抱きつく。
「どったの?」
「……すみません。あの、わ、私抱き枕がないと、寝れないんですっ!」
「え、じゃあ枕かすよ?」
「……堅くないと駄目なのでっ、申し訳ないのですが、腕をお借りしたいです!」
硬い枕ってなんだろう……? まあ、別にいいけど。
キャスコがきゅーっと俺の腕を抱く。むにゅっ、と弾力のあるおっぱいが、俺の腕に当たる。
キャスコの顔がすぐ近くにある。はぁふぅ、と荒い呼吸を繰り返している。
「本当に大丈夫なの? 熱とか」
「……大丈夫、です。ちょっと興奮しすぎて、くらくらして……」
大丈夫なんだろうかそれ……と心配していたそのときだ。
むにゅ~~~~~…………♡
と逆サイドの腕に、なにか恐ろしく柔らかな物体が、押しつけられた。
「は、ハルちゃん?」
見やるとハルコが、俺の腕を、キャスコ同様に抱っこしていた。
その巨大すぎるおっぱいで、俺の腕を挟んでいる。腕が、なんかゼリーの中に沈んでいるようだ。
「お、おらも抱き枕がないと寝れないので!」
「は、はぁ……そう……」
ふたりの美少女が、俺の腕を抱いて眠っている。途方もなく甘いにおいと、柔らかなおっぱいの感触に、俺はクラクラする。
「あの……二人とも。もうちょっと離れません?」
「「ぐー」」
「あ、うん。もう寝てるのね……」
寝てる割に、ふたりは決して、俺の腕を放そうとしない。
「ふぅむ……どうしたもんかね……」
結局この日は、ふたりとも俺の腕を放してくれなかった。夜が明けるまで、こうして三人で川の字になって、眠るのだった。
次回グスカス側の話となります。
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