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118.勇者グスカス




 ジュードから授かった知識をフル活用して、グスカスはなんとか、ティミスを救い出すことに成功した。



「ティミスさん! よかった無事で!」



 怪我人がティミスの無事を喜ぶ。

 彼女は心配かけたことを謝り、そして二人して、グスカスの前で土下座した。



「ちっ……んだよそれ」

「ごめんなさいグスカス。あたし、あんたに酷いことしたのに……」

「もういいって」

「でも……」

「まじで、もういいんだって」



 今のグスカスにとって当然のことをしたまでだ。

 だから、謝罪も感謝もいらないのである。



「んなことより、先に進むぞ」

「戻らないの……?」

「来た道はとっくに使えなくなってるしな」



 高位ダンジョンは常に道が変動してる。


 ここまでの道のりも、まったく別のものになっており、戻るのは不可能。



 前に進むことが唯一の活路なのだ。



「ティミス。動けるか? 怪我は」

「え、ええ……大丈夫。怪我はない」

「そうか。じゃあ悪いが、そこの怪我人を背負ってやってくれ」

「わかった。あなたはどうするの?」

「おれは前に立って索敵をする」



 ダンジョンのより深い場所へ向かおうとしている。

 下へ行くほど、強敵が待ち構えているのだ。



 グスカスはそれらと戦う気はまったくない。

 敵をいち早く探し出し、それを回避する。そのためには小回りがきいた方が良い。



「わかったわ。あなたに従う」

「……やけに従順だな」

「命の恩人の言葉ですもの」



 ……命の恩人。

 勇者時代、一度たりとも言われたことはなく……。



 しかし一度くらいは、言われてみたい言葉だった。

 勇者を失ってようやく、その言葉を言ってもらえた。



「はっ、悪くねえもんだな」



 人から頼られ、好意をむけられるのは心地よいことだった。

 もっと早く気づいていればよかったが……悔いてる暇はない。



「いくぞ」

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