111.勇者グスカス
《グスカスSide》
ジュードたちがダンジョン攻略に挑んでいる、一方その頃。
勇者グスカスもまた、彼らと同じダンジョンにいた。
グスカスも、そしてジュードも、同じ場所にいることを互いに知らない……。
「はあ……はあ……はあ……」
グスカスは怪我人を背負った状態でダンジョン内を進んでいく。
職業を失ってるグスカスにとって、モンスターとの邂逅はすなわち死を意味する。
今までの、傲慢な勇者なら、何も考えずにダンジョンを潜っていただろう。
だが、今はちがう。
力が無いからこそ、彼は考える。
どうすればいいかを、思考する。
少し進んで、グスカスは立ち止まる。
目に魔力を貯め、通路をジッと見つめる。
するとボンヤリとだが、薄紫色の靄が見えてきた。
左右に分かれる通路。
そのうち、右からは靄が、左からはそれがない。
グスカスは左の道を選んで進む……。
「どうして、左、なんだ……?」
「あ?」
グスカスに背負われてる怪我人が尋ねてくる。
グスカスは別に応える義理なんて無かった。
が、まあしゃべってないと気が滅入りそうだったので、気晴らしにしゃべってやることにした。
「右からは、モンスターの魔力を感知できたからだよ」
「魔力を……感知? あんた、そんなスキルをもってたのか?」
「スキルじゃあねえ。技術だよ……大昔、教えてもらったな」
それはまだ、ジュードが同じパーティに居た頃。
彼から、手ほどきを受けていたのだ。
魔力を目に込めることで、外界に存在する魔力を見れるようになると。
「魔物はたいてい魔力を保有してるからな。魔力感知にひっかかったほうの道は、危険ってこったよ」
……事実、右の道を選んでいたら、グスカスたちは一撃で、魔物のえじきになっていただろう。
左の安全な道を進みながら……グスカスは反省してた。
……ジュードから教えてもらったことは、全部、役に立っていたのだ。
教えてもらったときは、職業があればそんなの不要だと思っていた。
でもちがった。
ジュードは、職業が使えない状況すらも想定して、弟子であるグスカスに物を教えてくれていたのだ。
彼に何かあったとき、対応できるように……。
「くそ……おれは……なんて……馬鹿だったんだ……」
今更ながら後悔の念が襲ってきた。
もっと真面目に、色々聞いていればよかった。
そうすれば、もっといいやり方を思いついたかもしれない。
だが……後悔しても、もう遅いのだ。
「すまねえ……ジューダス……」
それは、自然と口についた言葉だった。
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タイトルは――
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