蟻の駆除も、お仕事です-1
「よし、ではここからはトーカス、お前が指揮をとれ」
「はい、父上」
鉱山の麓を少し走ったところでとまると、コーカスがトーカスに指示を出した。
「…おい、大丈夫か?」
地面に死体のように横たわるシエラの頭を、コーカスがコツコツとつついてくる。
「こ、この状況、で…う…だいじょ、うぶ、とか…おぇ…なわけ…うっ!」
思わず口を押えるシエラ。
「もうそろそろ慣れるころかと思ったが…まだだったか」
コーカスがため息交じりに言う。
シエラは持っていたマジックバックからポーションを取り出し、一気にそれを飲み干すと、キッとコーカスを睨みつけた。
「あたりまえじゃない!コーカス達のスピードで、普通は人は移動なんてできないんです!なのにあんなに、飛んだり跳ねたりしながら高速移動して…しかも、今回はトーカスに首根っこつかまれた状態でぶらんぶらんしながらの移動だったのよ!?酔うにきまってるでしょう!」
キィ!っと怒るシエラに、コーカスは首を傾げた。
「シエラが早く、と言ったのではないか。おかげで、そう時間をかけずにここまでこれたぞ?」
「えぇ、そうね、そうですね!?どうせ(迂闊なことを言った)私が悪いのよ!」
シエラは両手で顔を覆い、泣き真似をする。
確かにコーカスの言う通り、歩いてこの場所まで行こうとすれば、1・2時間はかかっていただろう場所だが、コーカス達の爆走のおかげで、ほんの数分で到着したことは間違いない。
「帰りはもうちょっとゆっくり帰って。あと、背中に乗せて…」
捕まる場所もなく、ぶらぶらと揺れながらの移動は、背中に乗って移動していた時以上にくるものがあった。
「うむ、わかった」
「シエラ」
コーカスに了承をもらったところで、トーカスがシエラに声をかけてきた。
「調査、というのはどうするんだ?もうこのまま、巣穴を潰しに行こうかと思うんだが」
トーカスに言われて、シエラは慌ててちょっと待ってね、と鉱山の方に向きスキルを発動させた。
「…えーと、あー…ふむふむ…んー……」
索敵のスキルで敵の位置を確認していき、それをマッピングのスキルで記憶しながら、立体地図のように中の巣穴の形状を確認していく。
「うそー…えー……」
思っていた以上に枝分かれして作られている巣に、さらに大量の卵と思しき反応を、数か所に渡って確認する。
(思ってた以上に多いなー…ていうか、産卵真っただ中っぽいじゃない)
一か所、かなり大きな反応がある場所があり、そこでは卵っぽい反応がどんどんと増えているところだったのだ。
「…とりあえず、ある程度の確認はできたので大丈夫かな。クッティ・サーク山脈の方に巣が伸びてはいたけど、幸い、そっちの領域まではまだ達してなかったみたいだし。向こうから来た魔物かもしれないけど、こっちに巣を作ってるわけだし、このまま殲滅しても大丈夫」
シエラが言うと、トーカスはふむ、と頷いた。
「では、行ってくる」
そういうとトーカスは他のコッカトリス達を連れて、鉱山の中腹あたりに見える穴が開いた場所へと駆けて行った。




