大事なことって人によって違いますよね?-3
「というわけで、今、手が空いてる冒険者はこの3名だけですね」
5分ほどして執務室に戻ってきたシエラは、はい、とジェルマにメモを手渡した。
「ジョージ、ナナ、リックの3人か…参ったな…」
獣人のジョージはつい最近、パーティーメンバーであった2人が結婚した為、それまで活動していたパーティーを解散し、ソロになった冒険者で、主に斥候役であった。ナナは昨年、ようやくランクアップ試験に合格し、Bランクとなったシーフ。リックは、ナナと一緒にパーティーを組んでいるBランク冒険者で、主にパーティーの回復を担当している神官だ。
「…ジョージさんなら、前衛としても問題ないかとは思いますが、後衛が薄すぎるのと、火力がジョージさんだよりになっている点が心配です」
シエラの言葉に、ジェルマはガシガシと頭を掻く。
「ナナとリックのところも、王都に行くかこっちに残るかでもめて、結局別れちまったんだよな、確か。…まだ、新しいメンバーは見つかってねーのか?」
聞かれて、シエラはこくりと頷いた。
「参ったな…マインアントなら、難しくはねーと思うが…さすがに巣の調査に向かわせるとなると、この面子では心もとないし…」
そこまで言ったところで、ふと、ジェルマは、視界に入ったコーカス達に気づき、あ、と声を漏らす。
「火力に関しては、適任がいたじゃねーか」
「え?」
はは、と笑うジェルマに、シエラは首を傾げる。
「誰かいましたっけ?すぐに帰ってきそうなパーティーは他にはいなかったと思いますけど」
「いやいや、そこにいるじゃねーか。ほら」
ジェルマが指さす先を見て、シエラはえ?と声を上げる。
「教官として正式採用に必要な書類もちゃんとほれ、受け取ったわけだし。早速、明日から仕事ってことで!」
「いやいやいや!ちょ、ちょっと待ってくださいよ!冒険者たちにまだ何の周知もしてないんですよ!?ていうかそもそも、3人から断られたらどうするんですか!」
見ず知らずのテイムされたコッカトリスが、いきなり教官になるので一緒に連れて行ってくださいね、と言われて、ハイ分かりました、なんていう冒険者がどこにいるのか、と、シエラは盛大に眉間に皺を寄せて言う。
「えー?大丈夫だろ?」
「何根拠ですか!」
ギャーギャーと二人が言い合いをしている時だった。
「我等だけで行ってくるが?」
コーカスの言葉に、二人はぴたりと言い争いを止めた。
「他の冒険者がおらずともよい。そもそも、マインアントの巣を発見したのは我の配下で、トーカスの戦闘練習のためだ。それを人に渡す気はさらさらないぞ」
ギラりと光るコーカスの言葉に、ジェルマは少し思案したのち、よし、と頷く。
「わかった。なら、明日、シエラと一緒に、巣の調査に行ってきてくれるか?ついでに、そのまま殲滅もしてくれるってことだよな?」
「はぁ!?」
ジェルマの言葉に、シエラが思わず叫ぶ。
「もとよりそのつもりだ」
「ちょちょ、コーカス!?」
シエラを放置して、そのまま話が進んでいく。
「ならそれでいこう。最終雇用テストって名目でいいか。雇用テストになるから、明日は出勤扱いにしてやるよ」
「してやるってなんですか!当たり前でしょうが!ってそんなことより、嫌ですよ!?なんで私が同行しなくちゃいけないんですか、ただの受付嬢ですよ!?」
猛反対するシエラ。だが。
「良いじゃねーか。試験で冒険者共と一緒に狩りに何度も行ったことあるだろ?」
「いや、そりゃありますけど」
「なら決定。そもそも、テイムされてるとはいえ、魔獣だけで出歩かせるわけにいかねーだろうが」
「なら、今手が空いてる冒険者と一緒に」
「お前がさっき、却下しただろうが、それは」
「うっ……」
「諦めろ。これは決定事項だ」
ジェルマの言葉に、シエラはがくりと膝をつく。
「…せめて、危険手当くらいはでますよね!?」
キッと顔を上げてジェルマを睨みつける。
「お前、試験で冒険者と狩りに出た時に、危険手当が一度も出たことねーの、忘れたのか?」
「うわぁぁぁぁー!!」
泣き崩れるシエラに、ジェルマはそういうことでよろしく、とポンポンと肩を叩いた。




