承認をお願いします-9
「ジェルマさん来てくれて、助かりました」
あの後、シエラを説得しようとジェシカが必死になっている隙に、ジェルマが彼女の印鑑を勝手に取り出し、承認印を書類に押したことにより、正式にコーカスとトーカスの第1ギルドでの講師採用が承認された。
「あいつはなー、昔っから自分が気に入ったものは是が非でも手に入れようとする癖があってなぁ」
冒険者時代にも、古い魔導書が残されているという遺跡の噂を聞けば、依頼そっちのけで遺跡探索に出かけたり、珍しい魔道具が売りに出されていると聞けば、自身の身に着けている最高ランクの防具を売り払って購入しようとしたりしていた、という話をしてくれた。
「あー…でもなんか、ちょっと想像できます…」
「だろ?結構苦労したんだぞ?」
そんなジェシカに付き合いきれない、とパーティを離脱する仲間もいたりでAランクに上がるのにずいぶん苦労した、と苦笑いしながら教えてくれた。
「まぁ、悪い奴ではないんだ」
「わかってますよ」
本当に、自分本位の自己中心的な人間であれば、そもそもギルドマスターを任されたりしない。
なんだかんだでフォローするジェルマに、シエラはくすくすと笑った。
「でもよかったです。とりあえず。これでコーカス達も講師としてジャンジャン働いてもらえますしね!」
うんうん、と嬉しそうに頷きながらシエラが言うと、ジェルマがそうだ、と思い出したように声を上げて、シエラの肩をポンと叩いた。
「承認はこれでおりたんだがな?登録のための、能力査定が必要だから。お前、明日休みだろ?ちゃちゃっと森にでも行って、査定してきてくれ」
「は!?」
思わず立ち止まり、眉間に深い縦皺を刻むシエラに、ニカっと笑って白い歯を無駄にきらりと輝かせて見せるジェルマ。肩に置かれたのと反対側の手は、グッとサムズアップされている。
「ちょ、ちょっと待ってください。それってせめて休日出勤扱いになりますよね!?」
ジェルマの言い方が引っ掛かり、思いきり眉をひそめながら聞くシエラに、ジェルマは首を傾げた。
「いやいや、ならねーよ?だって、査定結果がいるのはコーカス達の都合だ。うちとしては、査定結果が提出されなかったら、働いてもらえないよってだけだろ?」
嘘だ、と小さく呟くシエラ。
「まぁ、本来は採用承認申請の前段階で必要になる書類なんだがな?今回はほれ、特殊例ってことで、先に承認だけ済ませた形になっちまってるからちょっとおかしなことになってるわけで。まぁ、お前が、コーカス達が働くのがまだ先になるのでもいいって言うのなら、先延ばしでもいいぜ?仕事調整して、時間作って行ってきてもいい」
ジェルマの言葉に絶句する。
「あぁ、お前そういえば、有休溜まってるもんなー。ここらで消化するのもいいんじゃねぇか?あ、でも、来月の有休申請の期間は過ぎてるから、再来月になるから、まだまだ先の話になるなー」
あはははは、と笑うジェルマに、シエラは目をギラりと光らせると、ドス!と思いきり腰をひねって重たいパンチを、ジェルマのお腹に打ち込んだ。
「ぐふ!」
無防備に笑っていたところを殴られ、思わずその場に崩れ落ちるジェルマ。シエラはフルフルと握っていたこぶしを震わせながら、ふざけんなー!!と大声で叫んだ。




