コミュニケーションって大事ですよね-1
「シエラ!仕事は終わったか!?」
最後の報告依頼を受け終えて、書類のチェックをしながら報告書をまとめていると、キラキラわんこの瞳の青年が、カウンターにやってきた。
「…ボルトン卿、思ってたより遅かったですね…」
時刻は21時を回ったところだった。
後で来る、と言っていたが、いつまでたっても来ない(むしろ来なくていいと思っていた)ので、忘れたか、興味がなくなったのだろうと思い、このまま帰ろうと思っていたシエラは、心の中で大きく項垂れた。
「む?もう少し早く来たほうが良かったか?仕事が終わるのを待ったほうがいいとハルに言われて、暫く様子を見ていたんだが」
そう言って、エディは後ろに控えていた、銀髪ロングヘアの護衛と思しきお兄さんを見た。
「え?あ、いえ。てっきり来な…いや、その、ちょうど仕事が終わったところでしたので、その点については、お気遣い感謝いたします」
正直に言えば、こないでくれるのが一番ありがたかったんだけどね!なんてことは、決して口にはしない。
「コーカス様とトーカス様に会いに来られたんですよね?」
「会い…な!?か、か、勘違いするな!俺は、コッカトリスが危なくないかを見極めるために来たんだ。決して、喋る魔獣が珍しいからとか、そういったことでは断じてない!」
顔を少し赤くしつつ否定するエディ。
「えぇ…?だって、ご自分で仰ってたじゃないですか。喋れる魔獣に会ってみたいって」
「確かに言ってましたよ?エディ様」
ニタニタと笑いながら、ハルが言う。
「ハル!?」
「いやいや、エディ。お前もう素直になれって。いっつも言ってたじゃねーか。動物とお話がしてみたいーって」
もう一人の短髪茶髪の、若干見た目が軽そうな護衛の男性が笑いながら言う。
シエラも、お話とかかわいいな!と思わず笑いそうになるのをぐっと堪えた。
「おい、ニューク!てめぇ!」
エディの顔が、まるで茹蛸のように真っ赤になる。
「…と、とりあえず、書類を片付けて着替えてきたいので、それまで、コーカス様とトーカス様と、お話、で、も、してくださいませ」
お話、と口にした瞬間、思わず笑いそうになるシエラ。声に出して笑わないよう、何とか踏みとどまれはしたが、変な喋り方になったせいで、ハルとニュークには、シエラが笑いかけていることに気づかれ、二人はケラケラと笑った。
「んん!コーカス様、トーカス様。もうそろそろ、片付けしますので、起きてください」
いたたまれなくなったシエラは、何とか空気を換えようと、足元に置いてある箱の中で、スピスピと気持ちよさそうに眠っていた二人を起こす。
「なんだ、やっと仕事が終わったのか?相変わらず遅いな」
「ふぁぁ…よく寝たぜ。…腹が減ったな。今日はどこで野菜盛りを食べるんだ?」
「…こいつら」
若干の苛立ちを覚え、シエラは二人をグイっとつかみ上げると、カウンターの上に移動させた。
「コーカス様、トーカス様。こちら、エディ・ボルトン卿です。お二人とお喋りしたいそうですので、私が着替えて戸締りしてくるまでの間、お話相手をしていてください」
「なに!?なぜ我がそのようなことを」
「そうだそうだ!俺らは別に話する義理は」
「…働かざる者食うべからず。野菜盛りが今日も食べたいなら、つべこべ言わずにお話してて!いい!?」
「「…はい」」
シエラの勢いに負け、二人は諦めながら、エディ達の方を見る。
エディ達も思わずシエラの勢いに飲まれ、静かになぜか、はい、と呟いていた。




