呼び出しっていくつになっても嫌ですよね-2
モルトの領主を務められている、エルグラッド侯爵邸の前に到着した馬車は、ゆっくりと玄関先で停まった。
「どうぞ、足元にお気をつけください」
「…ありがとうございます」
馬車から降りると、見覚えのある顔が、シエラを出迎えた。
「ようこそおいでくださいました。モルト第1ギルド受付嬢、シエラ様ですね?私、侯爵家の執事を務めさせていただいております、スティーブと申します」
丁寧なお辞儀とあいさつに、シエラも慌てて頭を下げる。
「それでは、客室へご案内させていただきます。こちらへ」
にこりと笑って、スティーブが歩き出す。シエラはそのあとに続いた。
(…た、高そうなものが大量にある…。トーカスを置いてきて正解だったわ…)
シエラの騎士としてついて行くのだ、と、言ってきかないトーカスに、必殺技で何とかギルドに留守番させることに成功したのを思い出す。
(あいつらが来て、もしここの装飾品を壊したり、傷つけたりなんかしたら…)
想像しただけで恐ろしい、と、ブルっと体を震わせた。
「こちらで少々、お待ちください」
通された部屋に入り、シエラはわかりました、と小さく答えて頭を下げた。
パタン、と扉が閉まるのを確認すると、はぁ、と特大のため息をつき、そのままソファへと座り込んだ。
「ちょ、うっそ。なにこれ!?こんなにふっかふかのソファが存在するの!?」
ソファの座り心地に、驚くシエラ。ふっかふかで若干沈み込むものの、適度な硬さがあり、立ち上がる時の負担が全くない。これがギルドの椅子に導入されれば、一日中座って仕事をしても辛くないのでは!?と思わず両手をソファに押し当てて、その弾力を楽しんだ。
「あぁぁ…絶対に高い、これ。下手したら、一生こんないいソファに座ることなんてないわ。あぁ、ギルドの椅子にも是非、導入してほしい…」
シエラがうっとりしていると、コンコン、とドアをノックする音がした。
「は、はい!」
「シエラ様、お待たせいたしました」
慌てて立ち上がるシエラ。扉が開き、先ほど案内してくれたスティーブと、2人の男性の姿がそこにあった。
「やぁ、初めまして、シエラ嬢。私はクロード・エルグラッド。ジェルマの友人だ。そしてこちらは」
金髪に少し青い瞳の、ジェルマより明らかに年若い青年が名乗る。
「私はエディ・ボルトンだ。ところで…君が例の申請書を上げたシエラなのか?」
クロードの隣にいた、赤毛に金色の瞳をした、シエラと同い年くらいの青年が続いて自己紹介をする。
二人に向かって、シエラはとりあえず、頭を下げ、シエラと申します、と、自己紹介をした。
「例の報告書、というのは、寮でペットを飼いたい、という申請書類のことでよろしいですか?」
聞くと、そうそう、とクロードは笑顔で頷いた。
「あぁ、すまない、どうぞ座ってくれ。エディ様もどうぞこちらへ」
全員が立ったままなことに気づき、ソファへ促す。
シエラは二人が据わるのを確認して、自分も向かい合って座った。
「そうだね、まず、今回の申請の内容なんだが、コッカトリスを2羽飼いたい、ということだったが。間違いなく、コッカトリスなのかい?」
言われてシエラは、はい、と頷いた。
「2羽とも、言葉を喋りますので、意思の疎通も可能です。もちろん、テイム契約も完了しております」
「そう、それもだ。書類にマイスでテイムした、とあったが、どういうことだ?そんな話、聞いたことないぞ?」
デスヨネー、と心の中で呟きながら、シエラは乾いた笑みを漏らした。




