教官は鶏でした-15
「スミレ!しっかりせんか!」
バシン!とコーカスに頭を叩かれ、スミレはハッと、我にかえる。
「わ、わた、し‥」
生温い何かがあたった頬を、そっと手で撫でる。ぬるりとした感触。手を見ると、そこには緑色の液体がついていた。フォレストスパイダーの血だ。
「何をぼーっとしておるのだ!そんな状態では、また、同じ事を繰り返すぞ⁉︎」
コーカスの言葉に、スミレは顔を上げた。
「索敵を常時展開できるようになれば、今のような不意打ちを防ぐことができる。常時展開ができぬのなら、行動を起こす前に、忘れずに索敵をしろ。たったの数度、不意打ちで魔物を狩ることができたからといって、簡単に気を緩めるんじゃない!」
その言葉に、スミレは思わず口をキュッとむすぶ。
(師匠の言う通りだ。初めての森なのに、最初、うまく行ったからって、私、調子にのってた)
コーカス達がいなければ、きっとフォレストスパイダーの餌になっていただろう。奇跡的になんとか逃げ出せたとしても、大怪我を負っていた可能性が高い。
「すみま、せん」
スミレが呟くと、コーカスは、謝る必要はない、とぶっきらぼうに答えた。
「ここで気を抜くということは、命がなくなってもいいと言うようなものだ。スミレは、自分の事を、いつ死んでもいいと思っているのか?」
聞かれて、ふるふると顔を横に振る。
「ならば、気を抜くな。少なくとも、ソロで森に入っている間は、油断するな」
「はい!」
目に浮かんだ涙を、必死でグッと堪え、ゴシゴシと流れる前に拭い去るスミレ。
「次がある事に感謝し、気を引き締めます!」
「うむ、そのいきだ」
コーカスはバサバサっと翼を動かした。




