教官は鶏でした-13
「いいか、森の中は平原と違って視界が悪い。もちろん、360度、前後左右を同時にすべて見ることもできん。だから、まずは、索敵スキルのレベルを上げることが大事だ」
コーカスに指導を受けながら、スミレは森の中を歩いていた。
幸い、ラビット族であるスミレは、索敵のコツをコーカスに教えてもらうと、索敵スキルをすんなりと取得することができたので、今はそのレベルを上げるためのトレーニングの仕方と、常時展開のコツを教わっていた。
「常時展開って、すごく難しいし、疲れるんですね…」
索敵を行うということは、その分、様々な情報を自分の中に取り込むということで、それを常時展開するには、相応の集中力が必要だった。スキルを取得したばかりのスミレには、目の前の情報以外のものを取り込み、それらの情報を整理・認識するというのはなかなか難しく、集中力を持続させることは、かなりの気力を使った。
「だが、このスキルは冒険者として上を目指すなら必ず必要になる。しばらく、ソロで活動するならなおのことだ。…む」
「あ」
コーカスが立ち止まる。スミレも立ち止まり、目を凝らすと、少し先に、ウッドアントと呼ばれる、森の木を根城としているアリ型の魔物を見つけた。
「ちょうどいい。向こうはこちらにまだ気づいておらん。気配を絶ち、後ろから奴を仕留めてみろ」
「はい」
スミレは短剣を構えると、音をさせないよう細心の注意を払いながら近づく。
(…あと少し)
射程距離内まで近づけたスミレは、一気に距離を詰め、短剣をシュッと横に薙ぐ。すると、ウッドアントは声を上げることなく、そのまま頭と胴体が切り離され、ぼとり、と音を立てて地面に落ちた。
「や、やった!やりました!!」
初めての討伐に、スミレは少し興奮気味にコーカスを見る。
「うむ。なかなか良かったぞ?」
コーカスが言うと、スミレは嬉しそうに、ありがとうございます!と答えた。
「そやつの魔石は、確か腹のあたりだったか。解体して、魔石を取り出すといい」
「はい!」
解体用に購入したナイフを取り出すと、スミレはロイに教わった手順を思い出しながら丁寧に解体を行っていく。
(ウッドアントは、確か、魔石の他にも、手の鎌の部分が素材として売れたはず)
解体の感触に、若干の気持ち悪さと苦手意識を覚えつつも、これも、一人前の冒険者になるためだ、と自分自身に言い聞かせながら必死に進めていく。
「で、できた!」
小さな親指ほどの魔石と、両手の鎌を、付いた血を拭ってバッグにしまう。
(やった、やった…!)
初めての討伐に、小さく震える。
「よくやった。初めてにしては上出来だ。剥ぎ取りも、丁寧に行えている。これなら回数を重ねれば問題ないだろう」
コーカスに褒められ、スミレは満面の笑みを浮かべながら、はい!と返事をした。




