教官は鶏でした‐7
「うわぁ…いろんなのがいっぱいある」
街でひと悶着あった後は、コーカスに普段通りにしていれば大丈夫なのだから、シャキッとしろ、と怒られつつ、何とかシエラに勧められた武器屋にたどり着いた。
少し寂れた感が否めない見た目のお店ではあったが、中に入ると様々な武器や防具が綺麗にディスプレイされていて、スミレは目を輝かせながら店内を見回っていた。
「いらっしゃい、と。今日はえらく可愛らしいお客さんだな」
店の奥から出てきたのは、がっしりとした大柄な男性だった。
「あ、こんにちわ!あの、私、初心者なのですが、防具と武器を買いたくて来ました!」
「武器やなのだから防具と武器を買うのは当たり前だろ?」
トーカスに突っ込まれて、顔を真っ赤にするスミレ。
「ぶわっははは!可愛いお嬢ちゃんだな!俺は店長のルドルフだ。どれ、俺が見繕ってやろうじゃないか。予算はいくらだ?」
ルドルフがにかっと笑うと、スミレは持っていた自分の財布から、お金をカウンターの上に出した。
「ど、銅貨が多くてすみません…えと、全部で中銀貨1枚分くらいあるので、それで買える、防具と武器を教えてください」
ルドルフはどれどれ、とお金を数えていく。
「お、確かに、銅貨が850枚と、銀貨が2枚あるな。そうだな、これなら…ちょっと待ってろよ?」
そう言うと、ルドルフはカウンターから出てきて、小さめの皮の胴当てと小手、丈夫そうな革靴と、短剣をいくつか持ってきた。
「初心者だしな、あんまりあれこれつけちまうと、逆に慣れてない分、動きを阻害しちまう。だから、最低限の防具で、無理せずにまずは慣れていくことだ。こいつはイビルフロッグって魔物の皮をなめして作ってあるから、軽くて丈夫で、多少の雨ならはじいてくれる。同じ皮でできてる靴も、一緒に買っておいた方がいい。今履いてる靴じゃ、森の中をウロチョロするにはちと心もとねーからな」
薄いモスグリーンの皮でできた防具と靴をカウンターに置く。スミレはふんふん、と一生懸命説明を聞く。
「それと武器だが、お嬢ちゃん、今まで何か使ったことはあるか?」
聞かれてスミレは小さく頭を振る。
「実践は今まで一度も…。一応、冒険者になりたいって思ってたので、協会に置いてあった木剣で、素振りの練習は毎日してました。でも、そのくらいです…」
消え入りそうな小さい声で、俯き答えるスミレ。
「まぁ、お嬢ちゃんくらいの年ならそんなもんだろう。ちゃんと練習してただけでもえらいぜ」
うんうん、と頷くルドルフ。
「これなら、お嬢ちゃんが持っても、ちゃんと扱えるだろう。ギルドで武器の扱い方なんかも教えてもらえたはずだから、詳しいことはそっちで聞いてみるといい。ほれ、持ってみな」
差し出された小さな短剣を手に取るスミレ。木剣よりも重く、鈍く光るその剣に、スミレはドキドキしながら両手で柄をしっかりと握り、構えてみる。
「お、いい感じじゃねーか」
にっこりと笑うルドルフに、スミレは少し照れくさそうにありがとうございます、と答える。
「これで今のところ、銀貨2枚ってとこだな。あと、他に何かいるものあるか?」
ルドルフに聞かれて、スミレは慌てて、シエラにもらったメモを取り出す。
「ええと…剥ぎ取り用のナイフを2本と、ポーションなんかを入れて置けるバッグ、は買えますか?」
「ふむ、それなら…あ、あったあった。剥ぎ取り用のナイフは1本銅貨150枚で、バッグは大人にはちょっと小さいって売れ残ってたのがあったから…そうだな、こいつは銅貨300枚にしといてやるよ。あとは俺から新人冒険者のお嬢ちゃんにお祝いで、短剣をさしておけるベルトもつけてやる。防具一式と短剣1本で銀貨2枚、しめて銀貨2枚と銅貨600枚ってとこだな」
「そ、それでお願いします!」
スミレは嬉しそうに笑って答えた。




