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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第二章 帝国の剣
115/218

114 知識は大事

「昨夜はお楽しみだったようですね、旦那様」


ニヤニヤとしたスゥに声をかけられる

お前、知っているだろ?


「お前の兄のおかげで、楽しい夜だったよ」

「それはようございました。奥様も笑っておいででしたから、大丈夫かと」


……知られてるのか



あの、地獄のような店も……慣れると楽しかった

何故か女装したおっさん達と腕相撲大会になったが、いい思い出だな


結局、朝帰りになったのだが……


「息抜きは出来ましたか?たまには、よろしいですわ。ゼスト様」

(お父さんは、毛むくじゃらが好きなんですか?トトも生やしますか?)


やめてくれ……毛むくじゃらのトトとか、ホラーだよ


「おはよう、ベアトにトト。毛むくじゃらは、たまたまだよ」


男だから、タマタマって……やかましいわ!

疲れているんだな、そうに違いない


「旦那様、今日はくだらない貴族共との面会しか予定がございません。ゆっくりなさってくださいませ」

「あら、それなら大丈夫ですわね」

(わーい!お父さんとゆっくりです!)


ひどい言われようだな……かわいそうな貴族だ

まあ、適当にあしらえばいいか

皆が言うなら、ゆっくりするか!



ソファーに座り、ベアトを隣に座らせる

トトは、定位置の俺の肩だ


「だいぶお腹が大きくなったね、辛くないかい?」

「いいえ。確かに腰が痛かったり……気持ち悪かったりはしますわ。でも、辛くはありませんわ。だって、ゼスト様との子供が産まれるのですよ?」


「ベアト……」

「ゼスト様……」

(あああっっ!)


ピンクな雰囲気になりかけた俺達を、トトの強烈な念話がとめる


「どっ、どうした?トト」

「トトちゃん、どうしたの?」


(大変です!お母さんのお腹が、ピクピクって動きました!何が入ってるですか!!)


真っ青になったトトが、プルプル震えながら聞いてくる

ん?知らなかったのか?


「ベアトのお腹には赤ちゃんが入っているんだよ」

「お姉さんになるんだって、喜んでいたじゃない。どうしたの?トトちゃん」


(だって、スゥに教わりました!赤ちゃんは鳥さんが運んでくるです!お腹には魔力が詰まってるって!)


……うん、子供にはその程度でいいかも知れないな


「旦那様、私がトト様にそう言いました。まだ小さいですから、その……」

「心配いらないぞ?誰かが子作りだの何だのって、教えたからな」

「スゥの優しさなのよ?トトちゃん。きちんと教えてあげますからね?」

(優しさ?よくわからないけど、わかりました!)


トトはベアトに教わりながら、お腹を撫でていた

そんな様子を眺めていると、スゥが小声で耳打ちをする


「旦那様?いたいけなトト様に、そんな馬鹿な話をした愚物は……」

「お前の兄だな」


カッと、目を見開いたスゥは一際低い声でつぶやく


「……始末しますか?」

「反省はしているだろう。あいつには期待しているんだから、そう簡単には死なせないぞ?」


「旦那様……旦那様のお気持ち……決して忘れません。今夜、新しいハンカチをご用意いたしますね」

「それは忘れてくれ……」



そんなやり取りをしていると、貴族達との面会開始時間だ


揉み手ですりよる奴、必死にヨイショする奴、行儀見習いとして娘を押し付けようとする奴……

まったく、どいつもこいつも……


そんな貴族達の話を、のらりくらりと受け流す

『話は理解した。検討しておこう』

最後はそうまとめて、追い返す簡単な作業だ


断るより、こう返事をして様子を見る

相手の反応次第で、味方に引き入れるか……それとも消すか……

残念ながら俺も貴族らしくなってしまったよ




最後の貴族が帰った頃には、すっかり暗くなっていた

トトはベアトに保健体育の授業をしてもらい、すっかり理解したようだ


(凄いです!お母さんは、新しい命を創造するですね!)


ベアトは神にでもなったんだろうか?

チラッと見たら、真っ赤な顔でそっぽを向かれる

……具体的な説明は、出来なかったようだな


「そうだな、だからトトはベアトを守ってくれよ?」

「ふふ、よろしくね?トトちゃん」

(はい!お母さんは絶対トトが守ります!)


だいたいで良いか……細かく理解する必要も無いだろうしな



その後、久しぶりに家族で夕食を食べて風呂に入った

家族の団らん……日本では手に入らなかった幸せが、ここにはあった


異世界に来て良かった

心からそう思いながら、二人と一緒にベッドに入ったのだった




うとうとしていた俺だが、ドアの外の気配で意識が覚醒した


「スゥか、どうした?」


静かにドアを開けて、スゥが顔を出す


「旦那様、夜分に申し訳ございません。こちらのお部屋に……」


寝室には二人が居るからな……もう寝ているから、起こしたらかわいそうだ

隣の部屋にそっと向かう


「で、どうした?」

「はい、二つございます。一つは婿殿が到着した知らせ。もう一つは、皇帝陛下からでございます」


「皇帝陛下だと?」


エルフの王子は予定通りだ

だが、陛下は予想外だぞ?


慌てて手紙を受け取り、開いてみる



『ゼスト、精霊の雫がもう無い。よろしく頼む』



……夜中にこんな催促だと?

おかしい……何か裏がある筈だ、考えろ!


だが、いくら考えても他の意味が出てこない

何か見落としてるのか?

文字数に秘密が?それとも暗号か?


手紙を受け取ってから、一時間程は悩んでいる

スゥが紅茶のおかわりを用意した時、それに気がついた……


まさか……!?



「スゥ、紅茶をこの手紙にかけてみろ」

「え?は、はい」


陛下からの手紙に紅茶をかけるとか、普通なら処罰ものだ

震えながらスゥがかけてみる


すると、別の文字が浮かび上がる



『エルフの国が割れそうだ。国王は既に居ない』



紅茶を吸った手紙に浮き上がる、真っ赤なその文字

スゥも見てしまったらしい……真っ青な顔色だ


エルフの国が混乱状態になるなんて、おとぎ話のアレを思い出したんだろうな……


「魔王復活の前触れ……また大戦が……」


かつて、帝国の初代皇帝となった異世界人が戦ったお話

エルフの国を真っ先に狙い、大混乱にさせた魔王

その魔王を倒した各種族の英雄物語


「考え過ぎだ、たまたまだろうさ」


言った俺だが、声は震えていた

たまたま、異世界人の光属性使いの俺がいる

たまたま、精霊化に成功した

たまたま、エルフの国が混乱中


……偶然が三回

これは偶然じゃないかもしれないな……


ため息をつきながら、窓の外を見てみる

真っ赤な満月が、偶然じゃないと言ったような気がした



「それと、旦那様」

「……まだあるのか?」


「兄は……そろそろ、お許し願えますか?」

「…………あっ」



アルバートを城内の中庭にある木に縛っておいたのを忘れてた

……まだ……生きてるだろう、大丈夫大丈夫

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